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 (プラス思考?攻め×マイナス思考受け 純愛/--)
±0


誰にでもやってくる日常
二人の人間に
同時に同じ災難が降りかかっても
感じ方は人それぞれ

ま、考え方の違いだな。


「いやぁ、参ったな。」

「参ったね。」

「ほんと、急に雨降るなんて思わなかったよな。」

これだから近頃の天気予報ってやつは駄目なんだよ~。と、俺は隣を歩いている道哉に笑いかけた。
ほんとにね。と言いながらも奴の顔は、今にも世界が終わるんじゃないかってぐらい陰気な顔をしてる。
いつものことだ。
今日はさっきの夕立で少々髪が濡れているせいか、いつもより更に暗い雰囲気が纏わりついている。
ま、よく言えば神秘的?みたいな。
周りのやつにそれを言うと思いっきり否定されるんだけどな。
なんで分からないかねぇ、道哉の魅力が。

「ねぇ・・、陽介。」

「何・・?」

俺、思うんだけど・・・。と道哉が続ける。
お決まりの台詞。
たいていの奴は、これを聞いたらすぐに俺を呼びに来る。
この続きを止めるのは、俺の役目だという暗黙の了解がうちの学年にはあるらしい。
ま、俺みたいなプラス思考のやつも珍しいからな~と妙に納得しちゃってるんだけど。
実は他にも理由があるからなんだよ。暗黙の了解。

「どうして、俺は今日傘を持ってこなかったんだろう・・・。」

「そりゃお前、あれだよ。天気予報では今日は晴れだったからだろ?」

俺だって持ってきてないし、とフォローする。

「でもさ、雨が降る確率は0%じゃなかったんだよ。どうして、もしものために持ってこなかったんだろう。この間持って帰ってきてた置き傘を持ってくるべきだったんだ。そうすれば、濡れずに済んだし・・・・。だいたい天気予報を過信しすぎた俺がいけなかったんだよ・・・・。これは何かの暗示かもしれない・・・。今日雨に降られたのは、もしかして何かの前兆なのかも。もしかして、水難・・・・?それとも、何かもっとすごい障害がこれから先に・・・?どうしよう。もしかしたら、俺は陽介まで巻き込んだんじゃ・・・・」

相変わらずすごい発想力だよなぁ。と感心しながら、俺は道哉のいつものマイナス思考から生まれる妄想を楽しんでいた。
これをうまく言いくるめるのが俺の仕事。

「大丈夫だ、道哉!」

初めはこれ。この一言でとりあえず相手を落ち着かせるのがコツね。
道哉の考えを遮るように言うのも実はポイント。

「大丈夫・・・?」

不安そうな視線を投げかけられた。
これは、俺の話を聞く余裕があるって合図。
さっきのマイナス思考が続いて、興奮状態にある時こいつは人の言葉なんて聞く耳持たないからな。
ってか、むしろ周りの人間無視して自分の世界に逝っちゃってる。

「あぁ、大丈夫だ。いいか、よく聞けよ?」

「うん。」

「お前が今日置き傘を持ってこなかったのはさ、もし雨が降っても俺が持ってるかもしれないっていう思いが心のどこかであったからなんだよ。」

それって俺を信用してくれてるってことだろ?と話し掛ける。
かなり無理な説明かもしれないけど、なかなかのプラス思考じゃねぇ?俺。

「そうなのかな・・・。」

「そうなんだよ!で、お前は天気予報を過信しすぎたとか言ってるけどさ、それって人を疑うよりずっと良いことだと思うぜ?その人のこと信じたんだからさ!俺、お前のそういうとこ良いと思う!」

だから、もっと自信持てよ!と、また訳の分からない説得を俺はしている。
道哉のほうは、まだ複雑そうな顔を残したままだ。
この世の地獄に居ます、みたいなさっきの表情はすこし崩れたんだから
なかなか順調に説得は進行している、と判断しよう。

「で、肝心の雨についてだけど。これは実はすごく良いことなんだよ!」

えっ、そうなの?と驚いたように道哉が顔を上げて俺の顔をまじまじと眺めた。
こういう反応がすっごい面白い。

「雨が降ったから、俺たちは雨宿りしなきゃいけなかっただろ?」

「うん。」

「で、雨宿りしたは良いけど、お互い少しは濡れちまったよな?」

「うん。」

「ってことで、俺はこれからお前の家に寄るチャンスが出来た訳。」

「そうなの?」

「そうだよ、お前の家の方がここから近いし。お前は、俺を濡れたまま帰したりしないだろ?」

こうやって先回りして言っちゃうと、道哉は言い返せない。
勿論だ、と言うように何度も大きく頷いている。

「で、結論な。雨が降ったおかげで、いつもより一緒に居られる時間が増えたってこと!納得したろ?」

さ、早く帰ろうぜ。と言って強引に道哉の手を握って歩き出した。
触れた手は初めは冷たかったけど、だんだんと温かさを取り戻してくる。

今振り返ったら、絶対世にも珍しい道哉を見られるに違いない。
ま、俺はしょっちゅう見てるんだけどさ。
いつもの暗い顔した道哉と違って、顔を真っ赤にして恥かしがってる顔。

「よ・・よ、陽介!」

歩いている俺の後ろをついてくる道哉が興奮したように俺を呼んだ。

「なにー?」

「お、俺、感動した!お前ってやっぱりすごいよ!」

これも定番になりつつある台詞。
やばいくらい上手く道哉説得が終わると、こいつは必ずこう言うんだ。

俺は立ち止まり、振り返ってにこにこしながら言った。

「道哉には及ばないよ。俺には道哉みたいに慎重に物事考えてくれるやつがやっぱり必要だと思う。」
ほら、俺ってお気楽だから。と言うと、道哉はとんでもない、という風に首を大きく振った。

「俺は、陽介のそういう前向きなところが羨ましいよ。」

その台詞を聞いて、俺はおそらくこれも定番になりつつあるだろう台詞を吐いた。

「やっぱ、俺たち二人一緒にいないと駄目なんだよ。俺たちって二人で±0だからさ。」
理想の関係だな!と道哉に言ったら、先程の真っ赤な顔のまま恥かしそうに頷いている。
この台詞を俺の友達が聞いたら激しく否定するんだろうけど、そんなのお構いなしだ。

例え、俺がプラス思考なんかじゃなくて、ただの屁理屈野朗であったとしても。
もともと打算があって道哉に近づいたとしても、だ。
やっぱ、これは理想の関係だと思うわけ。
マイナス思考な道哉には、俺が居ないとね。

ほら、早く帰って乾かそうぜ、と俺は未だに赤くなっている道哉の手をしっかり繋ぎ直して歩きだした。
「えっと、勢いで書いてしまいました。笑って読み飛ばして下さい。」
...2003/9/15(月) [No.75]
No. Pass
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