「デューク、こっちへおいで」 「い、嫌だっ…ι」 シェネスが手を差し伸べると、その手を払いのけ、デュークは彼と距離を取る。 「…やれやれ…聞き分けのない子だ」 「ヴァンプに従う気なんてさらさらないってぇの!」 デュークの言葉にシェネスはにやりと不敵な笑みを浮かべ、鋭いヴァンパイアの眼光でデュークを捕らえる。 「うっ…」 身動きできなくなってしまったデュークは懇親の力をいれてその呪縛から逃れようとするがそれも叶わず… 目の前にシェネスが立ちはだかる。 「っ…!あ、あっち、行けっ…!!」 「…昨日あんなに私にお強請りしたのに?」 「!!」 デュークの顔が一気に朱色に染まる。 目線だけがこのヴァンパイアを追い、羞恥と自分への苛立ちからか、目の淵に涙があふれてくる。 「ああ、ごめんよ…また泣かせてしまったね…可愛いデューク…」 「!ぁ…っやっ…触っ…あぁっ!!」 呪縛がとかれ、与えられる快楽に身を任せたのか、彼の躰は大きく撓った。 「や、やめっ…」 「私の名前を呼んだら…少しは考えなくもないですよv」 「~~~~サドっ!馬鹿っ!!変態ヴァンプ!!!」 「好きなだけ言ってなさい」 懲りないデュークを押し倒し、その白い肌に口づけを落とす。 依然つけた首筋の刻印<ラブメッセージ>に優しく舌で触れ…そのまま新たな鮮血を貪った。 「!…っつ…ぁ…」 血の流れが変わる。 僅かながら赤い雫が肌を伝う。 やっと刻印から唇が離されたと思った矢先、今度はシェネスの手が躰中を弄ってくる。 「!!」 「しんどいですか?ならやめましょうか…」 肌に触れる冷たい手が離れると、つい『あ…』と惜しむような声を上げてしまった。 慌てて口を抑えるが、シェネスにそれが聞こえていないはずもなく…… 「デューク…」 「……………」 「欲しい?」 「~~~~~っ」 何も答えない彼にシェネスはふふん♪と意地悪そうな笑みを浮かべ、目をそらすデュークの耳元で囁く。 「…まだ…素直になれませんか?」 「!!!~~~~~っ!」 一気に耳まで赤くなるデュークを見てマジでからかっているかのようにくすくすとその反応を楽しんだ。 「……変態」 「そのようです」 「…認めてどーする…ι」 「まぁ…そこはどうとでもなりますからvそれよりも君が少しでも私に心開いてくれるなら…いくらでも狂って見せますよ?」 「……殆ど病気だな」 「貴方が欲しい病ですか」 「なんだよそれι」 シェネスはやっと振り向いたデュークにやわらかく微笑み、彼の頬に触れ『事実です』と甘く囁いた。 「…勝手にしやがれっ」 徐々にほだされつつあるデュークは、この妙に人間くさいヴァンパイアに…少しずつ心を開き始めている。…いや、初めて出会った時から…すでに心は絡め取られていたのかもしれない…
……半年前の事だ。 ヴァンパイアハンターの駆け出しだったデュークは、アルヴァーナシュタイン伯の領地にある『白の荒野』という場所に単身乗り込んでいた。 「…今日こそ…っ!A級のヴァンプを仕留めてやる!」 武器は洗礼と祝福を受けたボウガン一式と純銀の十字架、そして万が一のための聖水とヒイラギの木から作った杭。 普通の人間から見ればちょっと異様かとも思えるナリだが、ここではその格好は別段変なものではなかったのだ。 今を遡る事300ほど年前…… この地に住み着いた不死者<ノーライフキング>の為に国中が多大な被害を受けた。 非処女・非童貞の者は食人鬼(グール)と化し、それが鼠算式に増殖していきあわや国がグールに滅ぼされようとしていた矢先、一人のハンターが現れ、まだ『人間』である者に戦う術を教え、そして自身はすべての根源である不死者を滅し、かくして国からグールは消滅、人々は安堵の笑みを浮かべる事ができるようになったのだ。 そして今後このような事が起こらないように、国は優秀な人材を募り、『ヴァンパイアハンター』の集団を結成した。彼らの活躍ぶりは凄まじく、他国からも依頼が殺到するほどの腕前で……いつしか国は『ヴァンパイアハンターの国』として名をはせるようになった。 そしてここに一人。 そのハンターになろうと必死こいてる少年がいる。 名はデューク=カストロ(15) 涙ぐましくも、先人ディール=ヴァンリッヒに憧れ、ハンターを目指すようになった少年の一人である。 「今日こそっ…!シェネス=ルードヴィッヒ=ローランスを狩ってやる!!!」 長々しい名前なのでもう一度呼ぶのは省くとして…(おい!)シェネスとはこの近辺に20年ほど前に住み着いたヴァンパイアのことで…未だこれといって悪さはしていないのだが、そうであってもいつ人々の脅威に変わるとも判らない。 なので先手を打とうと単身この地に乗り込んできたおばかさんがデュークなのである。 「出て来ぉい!!ローランス!!勝負だ!」 武器ばっかきちんとしていて戦略も何もあったモンじゃない彼は堂々正面からシェネスの居城に乗り込んだ。 「やぁ、おチビさん。お一人かな?」 「!!」 突然高い天窓のそばから眼前に降り立ったシェネスにデュークは当然ながら驚きを隠せない。 「っ…ぁ…!お、お前がローランスだなっ!?」 「いかにも」 優雅な礼をとり、デュークに微笑むシェネス。 拍子抜け…といってもおかしくないけれど、油断させるための罠かもしれない。 そう思ったデュークは腰に下げてあったボウガンを素早く取り出し彼に向かって叫んだ。 「お前を退治しに来たっ!!勝負だ!!!」 「私はまだこの二十年、何もしていないのに?」 「!……そ、それでもっ!!ヴァンプなんだからっ…いつか絶対人を襲うだろうがっ!!そうなる前に先手を」 デュークの言葉が止まる。 「!?」 金色だったシェネスの瞳が真紅に染まる。 「…!?」 「もっと穏便にことを運べないものですかねぇ?人間というものは…話の一つも聞かないし」 「ほ、ほどっ…」 「…改めて見れば…とても可愛らしい顔をしてますね?坊や」 「!!坊やって言うなっ!!!」 「ところで」 デュークの抗議を歯牙もかけず、淡々と自分の話を進めていく。 「君はまだ未経験ですか?」 「………は?」 急に何を言い出すんだ?? 未経験…ってことはつまり… 「!!!なっ…バッ!!なんでそんなこと言わなきゃならないんだよ!?」 「それだけ動揺するってことは、まだ知らないわけかv」 「…へ??」 シェネスはにんまりと微笑んで動けないデュークに近寄ってくる。 まじまじとまるで品定めしているかのような素振りが終わると、シェネスは彼の衣服を脱がし始める。 「Σ!!?な、何してんだよおおおおおおおっ!!?」 「見て判りませんか?」 しなやかな指使いでつつっと首筋をなぞり、顎から胸元にかけてゆっくりと舌を這わせる。 初めてのことにデュークは真っ赤になって抗議するが、それもつかの間… 「!…あっ…」 胸の突起をぺろりと舐め上げられ、ぞくぞくっと肌に電流が走る。 頬が上気し、息が荒くなる。 「…感じますか?可愛いですねぇvこんな上玉がまだいたなんてね~」 「!やっ…ぁ…っ!あぁっ…!!」 逃げようにもまったく動けず、与えられる今まで感じた事のない感覚は全身を犯し、術さえ解ければもう自分の力で立っていられないぐらい、シェネスに肌を貪られた。 「そろそろいいですか」 「…ふぇ…??」 パチンと指を鳴らすとその場に崩れ落ちるデューク。 すかさずシェネスは彼に覆い被さり、また愛撫を重ねる。 「!!ああっ…!や、やめっ…!」 自由になってもなかなか躰に力が入らなくてもうシェネスの愛撫に完全に虜とされたデュークは、涙ながらに切れぎれに呟く。 「………こ、ろすんだろ…?サッサと…!あっ…!!殺せ…よっ!!!」 「物騒な事を言いますね、私はそんなことはしませんよ。ただ……今からちょっと君を味見するけど」 「!!ヴァンプに、なるのは嫌だっ…!」 しかしシェネスは違うと言う。 じゃあどうするというのだ。 「今から、君を抱くんですv」 は? 今なんと?? 「!?お、俺は男だぞ!?」 「こんな上玉、女でもなかなかいない。ましてや君は童貞くんのようですし…もし血を吸ったとしても私の仲間になるだけですからv」 それが嫌なんじゃあああああああああっ!!! 「大丈夫v初めてでしょう?すっごく優しくしますから」 いや、そんなこと言われても嫌なモンは嫌なんですけど。 「抵抗すると、結構痛いですよ?たぶん…」 じゃあやめろよっ!!! 「でも怖くない怖くないv」 「!!やっ……あああああっ…!や、だぁあああっ…」
そこからは初めて経験する事ばかりだった。 つーか何で俺?? 疑問炸裂である。 不覚にも、一線を超えてしまったことで、大ショックのデューク。 一方シェネスは彼の躰に味を占めたようで…… それ以来、居城の門を硬く閉ざし、彼が逃げ出さないようにして毎日デュークを口説き落とすために甘い言葉を囁きつづけている。
かくして…デューク少年の受難の日々が始まったのだった(合掌)
おわり
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