「並木先生。大丈夫ですか?風邪なら、休めばいいのに・・・」 並木 悟(なみき さとる)は小学校の、算数教師だ。 だが近頃、どうも風邪気味で悟の体調は優れていない。それでも悟は、頑張って学校に来てはいたのだが、肝心の生徒にまで、風のことを指摘されてしまった。 内心では悟も、生徒に移しちゃダメだ、とは思ってはいるものの中々病院などに行く暇は無い。
「それに俺、別に熱出てはないし・・・」 悟は、ブツブツ言いながらも保健室に向かっていた。一応、生徒に言われた事は気にするタイプなのである。 悟は保健室に着くと早速、体温計を手にした。
ピッピッピッ・・・
体温計の合図が、保健室に響いた。 「・・・?!」 体温計を覗き込んで、悟は1人ギョッとした。 「さ・・・38.5度ぉ?!」 病院に行ったほうが良い熱だ・・・。 「今日は、早退させてもらって、病院へ行こう」 と、言う事で悟は生徒の様にソソクサと早退して家へ帰った。
悟は家へ着くと、早速病院に向かう事に決めた。 「何だか寒気もするし・・・」 悟は、車に乗り込みエンジンをかけた。
「並木様~、並木 悟様~、待合室へどうぞ~」 自分を呼ぶ看護婦のアナウンスが聞こえた。悟はサッサと、待合室へ向かった。 何だか悟は、病院なんて久しぶりなのでドキドキしていた。 「並木 悟様、中へお入り下さい」 少しすると、前の患者が診察室から出て来た。 「お、お願いします」 悟は、診察室に入った。 「こんにちは、並木 悟さんですね?」 「あっ・・・」 悟の前に座っているのは、普通の白衣を羽織った医者なのだが・・・。 他の医者とは何かが違った。 何だか他の医者より、美しいのだ。世間ではこのような人を、美形と呼ぶのだろう。 悟はこんなに美しい人は初めてなので、見惚れてしまっていた。 「どうぞ、お座り下さい」 「はいっ!」 チョコンと、悟は丸椅子に腰掛けた。
それから直ぐに診察は完了した。 「並木さん、でしたよね?お仕事は何を?」 今までニコニコして、診察していた医者は行き成り真剣な顔をした。 「え?教師をしてますけど・・・?それが何か?」 「ちょっと、お話があるんです。落ち着いて聞いて下さい。並木先生、貴方は酷く今お身体が悪い状態です。様子を見るために、3週間入院願います」 悟は行き成りの事に、動揺の色を隠せなかった。 「えっ!ちょっと、待って下さい!僕、病気なんですか?」 思わず涙を目に溜めてしまう。 「はい。とっても重いものです」 「びょ、病名は?!」 「・・・それは言えません。トニカク今日から入院をこの病院でして下さい。私が貴方の担当に当たりましょう。如月 幸春(きさらぎ ゆきはる)です。では、この場で少々待っていて下さい」
何分待たされただろう。悟は、唇を噛み締めて如月を待った。 「並木先生、ちょっと」 如月が、診察室を覗いた。教師と言うだけで、医者に先生呼ばわりされるのもどうだろう、などと考えながら、悟は急ぎ足で如月の所まで寄って行った。 「一応、入院準備は整えました。後は貴方のご両親と、お仕事先だけですのでこの電話で連絡していただけますでしょうか?」 「はい。分かりました」 悟は、近くの机の電話を取ると、まずは両親に。それか学校に電話をかけた。
かけ終った後、直ぐに受話器を戻した。 「如月先生。終わりましたよ。これから僕は、どうすれば?」 「では、3週間貴方が使うお部屋を案内しますね」 如月は、悟の手を取ると歩き出した。
悟が案内された部屋は、6人部屋だった。だが、患者が1人も見当たらない。 「ああ、患者さんいないんですよ。この部屋」 唖然としている悟に、如月が言った。 「では、今日はもうこれで。時間も遅いですし」 いつの間にか、時計の針は8時を指していた。 「お休みなさい、並木先生。何かあったら、呼んで下さい」 如月はそう言い残すと、部屋を出て行った。 入院と言うものはこう簡単に出来るものなのだろうか? 悟は疑問に思いながら、布団に入り寝付こうとした。
「眠れない・・・」 夏なので暑いからなのか、病名が気になるからなのかは知らないが、中々悟は寝付けなかった。
ガチャッ・・・
そこへドアが開く音。 「ん・・・?」 「アレ?起こしちゃいました?」 正体は如月であった。ニコニコしている。 「いえ。でも何で如月先生がココに?」 「夜間の見回りですよ。担当ですし、貴方が気になって」 「どうも、ワザワザ有難うございます」 照れながらも、礼を言う悟。如月は満足そうに微笑んだ。 それから悟は如月と、1時間程喋った。仕事の事や、人生の事などだった。 「・・・と、夜間見回り終了の時間だ。じゃあね、並木先生」 「はい!今日はどうも有難うございました」 満足な笑みで、悟は言った。如月も笑った。 「あっ、如月先生!ちょっと、良いですか?僕の病気何なんですか?」 如月は、口にソッと人差し指を当てた。それから、如月は悟に近寄ると悟の唇に、口付けた。 「っ!!!」 「病名は内緒ですv」 言い残すと、如月は病室を後にして行った。 「今のって、キス?だよな///」 悟は唇を抑えて呟く。如月がした行為が、どう言う意味なのかは分からなかった。 「てゆぅか、病名教えてくんなかったし、そんなに重いのかな。俺の病気」 キスされた事と、病名の事とで悟は戸惑った。
それから翌日の夜も、次の夜も立て続けに如月は悟の部屋に訪れた。 その度に、悟は「僕の病名は?」と聞き続けたが、いつもキスで塞がれてしまった。 如月は男なのに、キスをされても悟は不思議と、抵抗感は無かった。 それを良いことにして、如月のキスは毎日来るたびに、激しいものへと変わって行ったのだった。
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