妹の彼氏と浮気をして半年。そんな駄目な兄貴の、俺の話。 * 愛美と彼氏の陽平がデートから帰ってきた。 恭弥は「おかえり」と表面的に笑みを作り、玄関で靴を脱ぐ陽平をみる。中腰に屈んだシャツから、平らな胸元が覗いてる。 その視線に気づいたのか、陽平も顔だけチラリと上げると、恭弥に向かってニコリと微笑みかける。 「あれ、お兄ちゃん帰ってたの」 「ああ、うん」 「お兄さんこんばんは、お久しぶりです」 「あ、どうも」 陽平の顔と声に、昨晩はげしく愛し合った情事を思いだした。その胸のなかに飛び込みたい欲求を必死に閉じ込め、何食わぬ顔で返事をする。 仕事が休みの今日はTシャツとジーンズのラフな格好だ。内心それを良かったと思う。いつものスーツにネクタイ姿の陽平を見ると、彼の下で甘い声を漏らす自分の姿を思い出してしまうからだ。 「あーいい匂い。お兄ちゃんビーフシチュー作ったの?」 お腹すいてきちゃった。匂いを嗅ぎながら愛美が言う。 「そうだけど。二人で食べて来たんじゃないのか」 「だってお兄ちゃんのビーフシチューは別腹だもん」 「はは。そんな食ってたら太るぞ」 ひどいと愛美が恭弥の肩を叩いて言った。 「へえ、お兄さんビーフシチューも作れるんだ?」 そこに陽平まで口を挟んでくる。昨晩も手料理を美味しいと食べていたはずなのに。 「得意ってほどじゃないけど、まあ好きかな」 「学生の頃ね、カフェででバイトしてたんだ。ビーフシチューはお兄ちゃんの得意料理なの」 「へえ。それは俺も食べてみたいな」 「夜食でよかったら、どうぞ」恭弥はエプロンを縛りなおしながら玄関に背をむけた。 どう言い繕ったとしても、二人の関係は決して明るみにでてはならない。ましてや、陽平は妹の彼氏なのだ。 家に遊びにきた陽平と何度か顔を合わせているうち、気付いたら恋に堕ちてしまっていた。 短大3年の愛美は、来年就職活動を控えている。それが落ち着くまでは、二人の関係は黙っていよう。言いだしたのは陽平だ。 愛美の就職が決まったら、きちんと理由を話して別れるよ。そうしたら俺達、ちゃんと付き合おう。 ある日ベッドの上でかわした約束を、半信半疑ながらも受け止め、恭弥はその日を待っている。 だけど、込み上げる気持ちは高まるばかりだった。妹の彼氏を寝取っている。最低な兄貴だという自覚はあったが、陽平が欲しいという衝動は収まらず、現在は彼と浮気関係を続けている。 会いたかった……。 言葉に出せない想いを呑みこみ、なるべく二人を見ないよう、すぐにキッチンに向かう。 ガスコンロに点火しようと伸ばした恭弥の手は、その直後停止した。 愛美を置いて先にリビングへと入った陽平が、真後ろからピタリと身体を張り付けてきたからだ。 「俺、実は料理に興味があるんですよね。もしかして調味料から手作りなんですか」 まるで恭弥に触れる口実を探すかのように、洋平が後ろから覗き込みながら言った。 そのうえ腰から両手を回すと、下腹部の付近で左右の手を交差させる。 いつ愛美がリビングに入って来るか分からない状況で、後ろから抱きしめられたのだ。 陽平くん……! その問いに声さえ出せず、口パクで訴える恭弥をよそに、陽平はさらに行動をエスカレートさせる。 耳元に唇をよせると、アルコールでほろ酔いがかった甘い吐息で囁いてきた。 「恭弥さんのエプロン姿、すごく可愛い」 「ばっ……」 「俺、こっちの方が食べたくなった」 身体を引かれ、玄関から死角になった壁際に背中を押し付けられる。 「陽平くん……、だめだ、愛美が……っ」 恍惚と背徳心ですっかり淫らな顔になった恭弥を、妹の彼である陽平がうっとりと見つめている。 大好きな男に、こんな間近で矯め眇め(ためすがめ)られている。幸せの絶頂と胸騒ぎが同時に恭弥をおそった。 ブーツに手間どっているのか、愛美の気配は未だ玄関にある。 「恭弥さん、俺だけを見て」 まるでギリギリの時間を弄ぶかのように、恭弥の髪を触り頬をなでる。やがて小刻みに吐息をはくそこを、躊躇いひとつなく陽平の唇が覆った。
上唇を丁寧に舐めながら、歯と歯の間を縫うように陽平の舌が入り込もうとする。ダメだと思いつつ、その侵入を許してしまう。 「ん……っふ、ぅ……」 あと、もう少し、もう少しだけ……。 恭弥も同じく、この危険な時間に憑りつかれていた。これ以上物音を立てれば、愛美に気付かれてしまうだろうに。 早く離れなければ……。 そんな緊迫した一秒一秒にさえ、興奮を覚える。もう少しだけこの子を独占していたいと。 「陽平―」 とつぜん玄関から愛美が陽平を呼んだ。 「……ん、どうした?」 「あー、ちょっと待って」 舌と舌をめちゃくちゃに絡めさせながら、合間に陽平が相槌を打っている。両手は恭弥の頬を包み込み、ときに親指で涙袋のあたりを撫でていた。 陽平くん……。 愛美より一つ年上のの陽平は、まだ22歳。恭弥より6歳も年下だ。 なのに、会うたび甘やかされるのは恭弥の方で。何でも包み込んでくれる陽平の優しさに、完全に溺れていた。 駄目だ、もっと君が欲しくなってしまう……。 だけど、自分から唇を離すことができない。陽平もまた、同じ気持ちなのだろうか。さっきから恭弥の股に足を割りこませ、執拗に身体を密着させてくる。 見なくても分かる硬くそそり立ったモノが、恭弥の同じ部分に当たっている。 今度、君とセックスできる日はいつなんだろう。 股間にはひしひしと想いの存在を感じているのに。それを手に入れられないもどかしさだけが募った。 「ごめーん、私、友達の家にレポート忘れちゃったみたい。取りに行ってきていい?」 玄関から申し訳なさそうに愛美が言った。 恭弥は胸の高鳴りを抑えることができなかった。 「ああ、うん分かった。俺はお兄さんと留守番してるから」 「ありがと、ごめんねー」 まさか、陽平くんと本当に二人きりになれるなんて。昨日ぶりとはいえ、今夜は一緒にいられると思わなかっただけにこみ上げる喜びを隠せない。 陽平も、今夜はいつも以上に興奮気味だった。 愛美が出て行くとすぐに行動も大胆になる。おもむろににエプロンの中に手をしのばせると、部屋着のスエットに手をかけ、いっきに下着ごと擦り下ろしはじめたのだ。 「えっ、待って陽平くん……!」 正直、一緒にいられる事で幸せをかみしめていた恭弥は戸惑いを隠せない。 「待ってる時間なんて無いでしょ。ほら、恭弥さんもこんなにしちゃって……」 さも当然かの様に陽平が言う。でも、と戸惑う恭弥を気に留める事なく一気にエプロンの裾をたくし上げられた。 「あ……っ」 すっかり曝け出された恭弥の下半身を見ながら、陽平は思わせぶりに舌なめずりをし、その場に膝だちになる。 口元を拭う紅色の舌と唾液を見ただけで、あらぬ欲望が、期待と不安の狭間でぐしょぐしょに濡れそぼっていく。 目の前には、陽平を想って幾筋もの愛を滴らせた恭弥のペニスが。羞恥心に身を焦がしながらも姿を露わにさせている。 触れられてさえいないのに、それはもう卑猥な角度に反りかえり、完全に勃ちあがっていた。 「でも、愛美がいつ帰ってくるか……」 「大丈夫、電車で往復するだけでも30分はかかるから」 愛美の言う友達に心当たりがあるのか、陽平は大丈夫だと言う。 「で、でも……っ」 ここへ来てセックスに踏み切れないのには理由があった。もしも本当にとつぜん妹が戻ってしまえば、二人の関係がばれてしまうどころか、愛美や家族までも傷つけてしまうからだ。 それに、陽平だって……。 男と浮気してた事が世間に明るみになれば、彼を非難される立場へ追いやってしまうかもしれないのだ。 「こんな可愛い恭弥さんを見せつけられて、俺もう我慢できない。恭弥さんは?これ、我慢できるの?」 「で、きない。けど……」 「それとも、俺が欲しくない?」 早くもペニスをゆるゆると扱きながら陽平が問いかける。 くう……っ。 手元を見てるだけで早くも快感がこみあげてしまい、恭弥は思わず天井をみあげた。 「ほ、しい……っ」 自然と腰を前後に揺らしながら、だんだん恭弥の自我が押しつぶされていく。 陽平くんに、もっと触ってほしい。抱いてほしい……。 自分勝手なのはわかってる。でも、彼の愛が、この体に欲しい。どうしても欲しい。 抱かれても抱かれても足りない。陽平を自由に愛せない窮屈な世界が、異常なほどの独占欲を生み出し、恭弥を攻めたてるのだ。 「よくできました」 ご褒美とばかりに、陽平は昂りの先にキスをする。 「はぁ、う……!!」 思わず腰がひけるが、お構いなしに舌をだして奥まで咥えこまれた。 昨日ぶりなはずなのに、陽平の口の中の暖かさ、柔らかさに、早くも爆ぜそうになる。 あっというまに蕩けていく思考のなか、次の行為へ促すように、いつしか恭弥は自らエプロンの裾をたくし上げていた。 「恭弥さん、昨日よりも感じてるよ。すっごい俺の口のなかで暴れてる……」 じゅぶ……じゅぶっ。 唇と舌で竿と亀頭を激しく追い立てられる。敏感な根本には唾液を塗りたくられ、ぐしょぐしょに滑ったところで右手で擦られた。 「ひっ!ああ……っは、ああっ陽平く……っ!」 陽平の口から出入りするペニスを見ては興奮し、すぐに我慢できなくなって目を閉じる。 しかしその感触はペニスにこびりついて、蕩けそうな快感の向こうまで恭弥を連れて行こうとした。 まだ、イきたくない……! エプロンをぐしゃぐしゃにしながら、必死で陽平の唇を味わった。しかし喉奥まで咥えこまれ、ペニスを呑みこむようにコクコク喉を鳴らされると、絶頂までひとたまりも無くて。 「ああ……っ!い、イク……!!」 早くも恭弥は快感の果てを覚悟し、思いきり目を閉じる。瞬間、あろうことか陽平は、ペニスを口からだしてしまった。 「ああ……っ!?」 まるで拷問のように、出すに出せない潮の群れが、行き場を失って恭弥の精管を攻めたてる。 ヌルリと唾液まみれの恭弥のペニスは、射精直前の快感をさがして飛び跳ねていた。
「よ、ようへいく……っ」 「駄目。恭弥さん、俺と一緒に気持ち良くなって?」
台所に置いてあったサラダ油に手をのばしつつ、陽平は再び限界直前の恭弥のペニスを口に含む。
「ひっはぁん……!」 「ふふ、今日の恭弥さんのアソコの毛、めっちゃいい匂いするね。ボディーソープ変えたんだ。もしかしてお風呂入りたて?」 「ば……っか!何を……っ」 「もしかして、俺のため?」 「ち、ちがう……っ」
そうだよ。 今夜は愛美が陽平くんとデートするって言ってたから、もしかしたら帰りに家に寄るかなって思ったんだ。 ちょっとでも陽平くんの顔が見たくて。だから、会社も残業を断って定時で帰って、ついでに体も綺麗にして待ってたんだよ。 なんて恥ずかしいこと、口が裂けても言えやしない。 しかし、まさか何もいわなくとも悟られてしまったなんて。洋平の気遣いに胸を熱くさせるとともに、照れくさくて仕方ない。
「んー、いい匂い。俺、いつまでも舐めていたい」
一方の陽平は、クンクンと鼻で息を吸い込みながら、恭弥のペニスを根本まで咥えこんでいる。 敏感な根本にふっくらと隆起した内唇が吸いつき、ちょうど喉奥に亀頭がぶつかる。
そのうえ、じゅぶじゅぶと音をだしてしゃぶりつかれた。唾液でまみれた卑猥なペニスが、同じくそれでテロテロに滑った陽平の唇から出し入れしながら、どんどん呑みこまれていく。
一度興奮が高みまでのぼり詰めてしまうと、些細な刺激にさえ、倍以上の快感で反応してしまう。 まさに恭弥はそんな幸せの絶頂、快楽地獄の渦穴にハマりつつあった。
「あ……ああ、う、あ、イ、ク……!!」
エプロンを掻き抱き、今度こそ絶頂を覚悟する。だけど、やはり陽平はすぐに口の中からそれを出してしまう。
「はっんぁ……だめ、陽平くん、出さないで、もっと舐めて……!」 「ちょっと……、煽るのやめてね。俺、今すごい勃起我慢してるんだから」
いや……、きっと勃起は我慢してないはず。我慢してるのは別の事じゃないかな、陽平くん。
陽平はもう一度それを美味しそうに頬張ると同時に、今度はまったく無防備だった秘孔に、油をぬりたくった指先をあてがった。
「あ……あっ」
もはや雑念に考えを巡らせる余裕もなかった。 そこに陽平の指先がふれた瞬間、アナルは期待感に満ちたかのように収縮を繰りかえしているのだから。 アソコが中がヒクついて、早く掻き回して欲しいと懇願している。 その証拠に、ほんの少し強い圧迫を加えただけで、中指はどんどん中へ呑みこまれていった。 陽平くんの体の一部が、俺の中に……。
「んん……ッはあ、すごい……もう奥まで……」 「このまま掻き回してあげようか?」
恭弥のアンダーヘアにほおずりしながら陽平が言う。 うんと言う前に、ゆっくり出入りを繰り返しながら、それはどんどん根本まで入ってきた。 陽平くんの体温、肌の感触。それらをもっとじっくり腸内で味いたかったのだけど。 内壁に挿入した指は、すぐに腹這いに折り曲げられてしまった。唐突に身をよじりたくなる、甘く痒い感覚がどっと押し寄せ、恭弥は思わず身をよじった。
「あ、あ……っすご……っ」
立ったままの体勢では、前立腺までは指が届かない。だけど明らかに直腸をこすりつける指の感覚が、得も言われず気持ちいいのだ。 油を塗りたくってるせいだろうか。滑らかな前後運動は、それだけで蕩けてしまいそうな蜜味を生み出していた。
「ふ、う……っすごい、気持ち、い……!」 「恭弥さん、そのまま前屈みになって、俺の肩にもたれかかっておいで」 「う……あ……」
言われるまま、身体を前かがみに折って陽平の肩に上半身を預ける。相変わらず恭弥のペニスを舐めている陽平の頭を、両腕で抱きしめる形になった。
ハアハア……。 苦しそうに吐き出した吐息が、耳の後ろのネコっ毛を揺らしてる。
「ん、いい子。ご褒美にもっと気持ち良くしてあげるからね」
ホラ、と抜きだした指をみせられる。陽平は油と体液でトロトロになった中指に人差し指をクロスさせると、そのままアナルにあてがった。
「今度は、指が二本……」
少々圧迫感があったものの、最初のさきっぽが入ると、あとは飲みこむように一気にズルズル中まで入っていく。
腸内はいっそう広がり、おかげで訪れる甘い蜜味も倍に膨らんだ。指を動かされるたび、ジクジクと痺れるような快感が、後を追ってついてくるのだ。 思わず自らも腰を振り乱し、後ろに訪れる快感をなお必死に得ようとする。
グッチョグッチョグッチョ……ッ。
さらに腕を捻りながら指を上下に突き上げられ、恭弥は自分のお尻がドロドロに溶けてしまうような切羽詰まった快感に襲われていた。 陽平の指を呑みこめば呑みこむほど、頭の中が真っ白になる。 気持ちいい。もう、そんな言葉では足りない。全身の細胞が、甘美な悪魔にひたすら追われているのだ。
「ふぅ、んんっ。あっ、あ、たま……真っ白……っ」 「気持ちいい?」
ペニスを舐めたり口から出したりしながら、陽平が尋ねてくる。 声もなく頷くと、「これは?」と指をさっきよりさらに深い角度で折り曲げられた。 中腰になったせいで、得もせず指先が奥まで届く。それはいとも容易く、睾丸の裏側にひそまった恭弥の前立腺を突き上げたのだ。
「あ……ああぁ、や、はぁ……あ、すごい……すごいよ、陽平くん……!」
くにゅりくにゅり。 指先がそこを揉みつけるたび、それまでとは比べものにならない鮮烈な快感がやってきた。
「わ、なんかえっちぃ汁がいっぱい出てきたよ」
陽平が面白そうに亀頭の尖端に指を付けたり離したりしてる。 カウパー液が指先について、線をひいて落ちていく。その間も、尻穴は掻き回され続けた。
ぐっちょぐっちょぬちゃ……っグリグリグリ……ッ。
脳みそがドロドロになって溶けだしてくるような狂った快感が、洪水みたいにやってきた。 陽平がそこを触れば触るほど、頭の中がトロトロに溶けて、本当におかしくなってしまいそうだ。
「あ、ああぁぁぁ……き、気持ちいい……ひぃっ、気持ちい……!!」
いつしか恭弥は必死になって腰を上下に振り乱していた。 もう、陽平の指だけでは満足できなくなっていたのだ。 もっともっと溶かしてほしい。もっと気持ち良くなりたい。陽平くんと繋がりたい。 貪欲な性が、動物的で淫らだと恥ずかしむような行為を、自らに強いている。
「陽平くん……陽平く……っ」 「駄目だ。俺もう我慢できない!」
陽平は突然そう叫ぶと恭弥の肩をもちあげ、キッチンに持っていく。 言われるまま腰を突き出すと、途中で放り出したビーフシチュー鍋の隣に両手をついた。 ジッパーを下ろす音がしてすふぐ、荒々しい呼吸が後ろからピタリと貼りついてきた。
「恭弥さん、いい……?」
駄目なわけ……。
「早く俺のここに、陽平くんをちょうだい……!」
駄目なわけ、ないだろ。 一分、一秒でも自分のものにしていたいんだ。 陽平くんの逞しい男が欲しい。すごく欲しい。 俺の中で、いっぱい気持ち良くなって、感じてる顔を見せて欲しい。 何より恭弥自身が、早く陽平に抱かれたくてしかたなかった。
ズヌッ……!! 間髪いれず、後孔に圧迫感が押し寄せる。
「くっぅ……」
瞬間、穴周辺にピリリと痛みがはしったが、陽平はかまわず腰を鎮めてくる。指の倍以上ある膨張した肉棒が、ふっくら隆起した尖端をめり込ませては糸をひいて出て来る。 どうしよう、めちゃくちゃゾクゾクする……。
「はぁ……ああ、ん……っ」 「ああ、ヤバ。先っぽ入れただけで気持ちいい」
再び亀頭をあてがうと、今度は一思いに奥まで突き上げられた。 グチュン……ッ!!
「――――っ!!」
気持ちいい。奥がどんどん熱くなる。 のけぞった恭弥の喉がゴクリと震える。 ゆっくり抜き出され、尖端がでかかった所でさらに深くひと突きされた。
ズヌッ……バチュンッ!!
「あぁぁぁぁ!!」
切ない毒素が溢れだしてくる。内壁が擦れ、寒気と熱を交互に生みだしている。陽平のピストンに脳内は白濁に包まれ、息ができないほど、激しい快感に襲われた。
「すっげ……」
また突かれる。小刻みに繰り返し。抜いては突き、斜めに腹の辺りを突いてはグリグリとペニスの先で捏ねられる。
ハッハァッハァッハッ……!!
苦しそうに息を吐きながらも腰を振り続ける陽平は、まるで恭弥に喰われてるみたいだ。 早くも高みへ追い上げられているのか、絶頂を呑み殺したような苦々しい顔にときおり恍惚が滲む。
「はぁ、はぁぁ、すご……っ。ああっ気持ちいいぃぃ!!」 「恭弥さんエロすぎ……っ」
陽平はさらに恭弥の腰を掴みあげると、いっそう高く掲げた。ついで真っ白な双丘を両手でもみくちゃにしながら、いっそう強くペニスを突きたてはじめる。
「すっげぇ……。恭弥さんの綺麗なケツが俺に汚されてる。この眺め最高にエロい」
ズンズンズンッぬぷっぐちゅ……っ!!
ペニスの形が確認できないほど、抜いては突かれ、出しては入れられる。 ジクジクと疼く場所に、幾度となく刺激を与えられた。 だんだん足腰が立たなくなり、体の半分はキッチンに投げ出した。ぱちゅんぱちゅん、卑猥な音と共に脳内が真っ白に染まる。
「ひっひぃぃ……!き、気持ちい……ああ、あぁぁ溶けちゃ……」
とうとう恭弥の上半身がキッチンから崩れ落ちる。そこに陽平を受け入れたまま、床のうえに倒れ込んでしまった。立膝に尻を突きだした様はよけいに卑猥だった。 「恭弥さん……俺に、会いたかった?」 このタイミングで陽平が問う。 掠れた声とは相反して、とんでもなく卑猥な腰つきで肉棒を掻き回しながら。 「あっああ……!会いたか……っ」 恭弥が口を開けると、ピストンはいやまして強くなる。 尻に腰骨がガツガツあたり、陽平の睾丸が恭弥のそれにぶつかった。 「―――っ!!あ、ああっは……ぁぁ気持ちいい……っ」 「ねえ、会いたかった?」 ズヌッ!! 鉛みたいに硬直した亀頭が、これまで以上に最奥を突き上げた。 あまりの快感に声が裏返る。返事さえできず尻を振り乱す恭弥に、「答えてよ」と腰を前後にクネらせながら陽平が言った。 ヌッヌッズヌッズニュっぬっちゃぬっちゃ……っ!! 「はっはぁ……ぁっぁぁぁ……っい、イク、イクイク……!!」 「ちょ、駄目だから」 痺れるような快感に身を委ねるまもなく、それを抜き出されてしまう。 「ああっ、いや……!!」 反動で秘孔が痙攣しているうちに、ペニスはすぐさま戻ってきた。すぼまったシワの合間にねじ込むように、間髪いれず奥まで突き上げられたのだ。 「あぁぁぁ!!」 快感を味わう余裕もなかった。あまりに立派に熟してしまった陽平の性器は、たったひと突きでも恭弥の自我を狂わせるには十分だった。 そそり立った肉の兵器が、プリンみたいに柔くなった内壁を縦横無尽に突きあげる。ただ前後する。 それだけでさえ快感だった。一度、時間をかけてとことん愛された身体だ。恭弥の中はすでに陽平の味を知り尽くしている。我慢しろと言う方が無理なのだ。体のなかに陽平を感じて、おかしくならないわけがない。 「ひっぃ……っ!!」 とうとう腰が痙攣をはじめ、殆ど無意識に射精してしまった。 とぷとぷと精子が溢れ出してくる。それでも終わらぬピストンに全身に力が入らず、腰から穿たれるたび頭が上下した。 「恭弥さん、まだイッちゃだめだって……」 腸内の容量がさらに増した。突き上げる激しさも荒々しくなってくる。 陽平がなにか言っていたが、頭のなかが真っ白で何も考えられなかった。 両手をブルブル震わせ、陽平の暴君に耐える。駄目だという割に呼吸はあらい。尻に食いこんだ指先が、彼も限界が近いことを伝えていた。 「あぁぁ……も、も……だめぇ、駄目!陽平くん……気持ちよすぎて俺……!!」 「恭弥さん……!!」 その声は、とうとう陽平の下半身を引火させたようだ。いっそう強く腰をつかむと、一心不乱にペニスを打ち付けはじめた。 直腸は激しく擦られ、感覚もないほど蕩けていく。 「く……っう」 ぐしゃぐしゃになって垂れたエプロンを掴み、精子の出ない絶頂感に耐えつづける。ぎゅっと瞑った目尻には涙まで滲んだ。 陽平の呼吸が、だんだん気持ち良さそうに掠れてくる。 首をひねり、その顔を見上げた。幾筋も汗のつたった浅黒い肌に、切なそうに眉根をひそめた青年の顔がそこにある。 唇を噛み、目は下半身と天井を行き来していた。恭弥の奥を突き上げるほど、いつもの凛々しい顔は崩れ、切羽詰った男の性を露わにさせた。 感じてるんだね、俺の身体に。 「陽平くん、好きだ……っ!君のこと、すごく……」 「ーーーっあ!!」 言い終わる前に陽平の腰が激しく痙攣する。これまでになく強く腰を穿ちつけた瞬間、ほとばしる精の塊が、恭弥のなかに溢れ出していた。 * 陽平の予想どおり、小一時間たった頃になって愛美はようやく戻ってきた。 恭弥の目の前で、二人は仲睦まじく夜食を食べ合っている。 こういう一場面を見ていると、ふいに思うことがある。 どうして俺達は、男同士で惹かれ合ってしまったんだろうと。 愛美と比べて、俺はちゃんと陽平くんを満足させてあげられてるだろうか。癒しになってるだろうか。 決して覆せない性別という壁は、これからもずっと二人の関係につきまとう問題なのだ。 その覚悟は、勿論ある。男を好きになること自体が、すでに一つ大きな壁を乗り越えてると言っても過言ではないのだから。 だけど、陽平にそこまでの覚悟はあるだろうか。男にも女にも嫉妬して生きる苦しさを、本当に彼にまで味わせてしまっていいのか。 いい年をした社会人だからこそ、いらぬ不安を積んでしまう。若くて将来のある青年なら尚更のことだ。 「恭弥さん」 ふと、会話の途中で陽平が呼んだ。顔をあげると、嬉しそうにニコニコと笑っている。 「ビーフシチュー、すごく美味しかったです。俺にも今度教えてくださいね」 恭弥を見つめるその瞳は、数分前と変わらない。冷静な顔のうらに隠れた情熱が、恭弥にだけ届く言葉で「早く一緒になりたい」と伝えている。 「……うん。また家においで。いつでも教えてあげるから」 やっぱり、好きだ。 心のなかのモヤモヤを呑みこむと、恭弥も胸の中で陽平に語りかけていた。 大好きだよ、と。 END
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