中谷 秀詩(なかたに ひでし)、元気な高校生。巷では『悪魔』と呼ばれている程の不良少年。 吊り目がちな目、髪は少々逆立っている。いかにも不良といった外見の持ち主だ。はっきり言って、高校の女子にはモテている。
そんなこんな秀詩にも恋人はいた。それは、この高校の生徒会長の大羽 琉奏(おおば るそう)であった。琉奏は、誰に対しても敬語を使い優しい。それに、女子には秀詩よりモテる美形だった。まるで、秀詩とは正反対で『天使』の様だった。そんな琉奏を、秀詩は大好きなのだ。
だが案の定。秀詩は外見通り、素直な性格の持ち主ではない。 この前だって、やっとテスト期間が終わったのと、秀詩の誕生日が近いのとで琉奏が、 「今度の日曜、空いていたら一緒に遊園地に行きましょうよv」とワザワザ誘ってくれたのに、秀詩は 「オレはそんなに暇人じゃねぇの!」と琉奏の誘いを断ってしまった。
「あーあ。本当は行きたかったんだけどなぁ。遊園地」 今更になって、屋上で1人ごとをぼやく秀詩。 「何でこう、意地はっちまうんだろ」 秀詩は、呟いた。このままだったら、琉奏に嫌われるかも知れない。
それから、数日後のことだった・・・――― プルルル・・・プルルル・・・ 「はい。もしもし中谷・・・」 「あっ!秀、いたんですね?!準備は出来ているんでしょうね!」 「・・・―――は?」 日曜の早朝。電話の向こうから聞こえた声は、何と琉奏のものだった。 だが、秀詩は琉奏が電話をかけてきた理由が分からず、聞き返してしまった。 「だから、遊園地!今日行くんでしょう?」 「えっ?はっ?!」 「今からそちらへ、迎えに行きますから!では」
ブツッ・・・ツーツーツー・・・
行き成りのことに、秀詩は戸惑っていたが直ぐに我に返ると、頭を整理した。 確かに、琉奏は遊園地の誘いを秀詩にしていたが、秀詩はその誘いを断ったのだ。 なのに何故?! 理由は琉奏が来て、明らかになった。
「どう言うつもりなんだよ?!オレはてめぇの誘いは、断ったじゃん?!」 琉奏をちょこんと、自室のソファに座らせてから秀詩は怒鳴った。 「アハハvパジャマ姿の貴方も可愛いですよv」 「話が違う!!!」 自分がまだパジャマだったのを視的にされ、秀詩は真っ赤になった。 「そうでしたね。遊園地の話題ですね」 「おう、そうだよ!!!」 「秀・・・何だか、あの僕の誘いを断った日本当は、すっごく行きたそうだったんですもん。遊園地v」 「えっ///」
「図星でしょう?」
結局、秀詩は琉奏の一言でコクンと頷いてしまい、琉奏に鼻息も荒く(←?!)遊園地に連れて来られた。
「ここで、お誕生日プレゼント渡そうと思ってですネv」 「分かったから!サッサと行くぞ?!」 「はいはい。可愛いなぁ~v」
秀詩は、最初の頃はドギマギして琉奏と思うように話せなかったが、慣れれば琉奏から手を握ってきても、それを拒まなくなってしまっていた。(と言うか、秀詩が「アレに乗りたい、コレに乗りたい」と言って琉奏を振り回していた)
「それじゃあ、次は僕の言う事も聞いて下さいね?」 「おう、いいぜ!何行くんだ?!」 スッカリ乗り気になっている秀詩は、琉奏の不適な笑みにも気付かず聞いた。 「あ・そ・こv」 「・・・げっ・・・」 琉奏が指差したものは、『お化け屋敷』とデカデカと書かれた古そうな建物だった。 「い・・・、ヤダ」 「アレレ~?意外と恐がりなんですねぇ~?よぉし、明日学校のみんなにバラしちゃおう。チラシをまず生徒会で作って、それを掲示板に・・・。『学校内で恐がられている悪魔は、恐がり~』ってv」 顔が笑っていても、目が笑っていない琉奏を見て秀詩は必死に「分かった」と言って頷いた。(笑)
夕日が沈みそうだ。 「あー!最高でしたねv『お化け屋敷』!」 「どこがだ!!!(怒)」 あれから、秀詩は何度も『お化け屋敷』に入らされて、とうとう夕暮れにまで及んでしまった。 「う~・・・。オレはヤダっつったのに!琉奏のボケッ!」 「ゴメンなさい。少し、やり過ぎましたね」 半ベソで、目に涙を溜めている秀詩を見て、琉奏が謝った。 「・・・そんで、このまま帰んのか?」 「いえ、まだまだ。本番はここからです」
それから2人は、観覧車に向かった。 「乗りましょ?」 「・・・うん」 今度は秀詩は、素直に頷いた。
「あの、秀?ちょっと、聞きたいことがあるんです」 「あんだよ???」 観覧車が動き出してから丁度、琉奏が話を切り出した。 「秀は、僕のこと好きですか?」 「なっ///何言い出すんだよ///」 ボッと秀詩は顔が紅潮したのが、自分でも分かった。 「真面目に、流さずに答えて下さい」 「あっ・・・。分かったよ。・・・うん、うん。えっと、う~んと・・・。す、き・・・だと思う。うん」 「それは、本心ですか?」 秀詩は疑われるのも無理は無いと思った。いつも、デートの誘いは断っていたし。 「ゴメン。いつも、素直になれなくて。でも、今のは・・・その、ホントだぜ?」 「秀・・・vvv」 秀詩が、頬を赤く染めて言い放った。そうしたら、琉奏は安心したような、どこか幸せそうな顔を浮かべた。
「観覧車、もう直ぐで頂上ですね」 「あ、そうだな」 さっきの話から、会話が弾まず、とうとう頂上まで来てしまっていた。 気まずい雰囲気が、流れる。耐えられず、秀詩が窓の外を見た。 「秀・・・」 「?」 琉奏が、悲しげに自分の名を呼んだので、ビックリして秀詩は振り向いた。 「っ?!」
「行き成り、何すんだ?!」 「すいませんv」 秀詩は、何とキスされてしまったのだ。 「頂上でキスすると、良いって聞くから・・・vvv」 「何が良いんだ、何がーーーー!!!」 秀詩が、ガバッと立ち上がる。 「ひっ!」 だが立ち上がると直ぐに、腰を抜かしてしまった。観覧車が、グラグラ揺れたのだ。 「僕の足の上、貸しますよ?(笑)」 「い・・・らね・・・」 「そんなこと言わずにvホラ!」 また観覧車がグラッと揺れた。そして、秀詩は琉奏の足の上に納まった。秀詩は、その時初めて琉奏の全体に触れた気がした。 とても良い香りがした。自分を包み込む両腕は、温かくて羽の様だった。まるで、本当の『天使』みたいだ。 「・・・秀?黙りこくってどうしました?」 「・・・みてぇだ」 「え?」
「天使みてぇだ。琉奏」
観覧車の中。もう満月が出てしまっている。
満月に照らされる、天使と悪魔。
「オレは、悪魔で琉奏は天使みてぇ」 「・・・秀?」 「いつも優しくて、大人で・・・。オレもお前みたいになりたかったな」 少しの沈黙。
「ならば、僕が変えて差し上げます」
琉奏は振り返った秀詩を、真っ直ぐ綺麗な瞳で見つめた。 「でも、貴方はそのままの方が魅力的ですよv」 「琉・・・奏・・・」
「それに今日は、貴方の本心も聞けたし・・・。僕は貴方が素直じゃ無くても、意地っ張りでも・・・」
「 」
空白の瞬間。秀詩は、瞳から涙を流した。そしてまた、今度は秀詩から深く琉奏に口付ける。 「フフッvコノ僕の気持ちが、お誕生日プレゼントですよv」 「へへッ、サンキュ・・・」
さっき、『悪魔』が『天使』から聞いた台詞。
愛している
それは今、『悪魔』の中の何か凍っていたものを、ゆっくり溶かして行った。
そしてこれからも、2人のラブラブライフは、続いて行くのですv
END.
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