うっすらと開いた彼の口は雨の夕暮れをむいていた。 ぼくはその並びのよい歯を、じっと見つめている。 さきほどから彼はひとことも言葉を発しない。 ぼくもそれに応じるようにひとことも口を開かなかった。 部屋に満ちる静けさはぼくと彼の間の空気を密にし、また外の土をぱらぱらとぬらす雨がぼくと彼の間の空気をしっとりと湿らせた。 彼があまりに長いことぼんやり口を開けたままでいるのでなにやらおもしろくなって、小臼歯と大臼歯ではどちらが口うるさくしぶりやであるかについてや、あるいは第二大臼歯と八重歯はふたりそろってひっこみじあんな親知らずに懸想しているのではないかしら、などということを真剣に考えだしていた。 思考はいいぐあいに転がり、最後には男気にあふれた第二大臼歯が軽薄な八重歯の魔の手から親知らずを救い出し、晴れてふたりが枕を交わすというところまで考えついた。だがここで思わぬ問題に直面し、ぼくの想像力はいっしゅんの停止を余儀なくされた。 その問題というのは、果たして第二大臼歯が親知らずをその分身で愛してやるのか、あるいは親知らずが第二臼歯をその股に持ったものでいとおしむのかという、いささか下世話な疑問である。親知らずの生えかたを考えれば、第二大臼歯が親知らずを組み敷いているようにも見えぬことはない。だが、ときに親知らずはあたかも第二大臼歯の下から現れているような生えかたをすることもある。そういうさまを考えると、親知らずが第二大臼歯を腰の上に乗せているようにも考えられた。 これは大変な問題である。 諸君はこの問題について重々ご承知のことと思うので、ここではこれがいかに解決が難しくいかに普遍的な議題たりうるかについてくどくどしいことをいうのはやめておく。 ともかくもぼくはそのとき第二大臼歯と親知らずの関わりにおいて、どちらがどちらであるかを早急に求めねばならなかった。そのため、親知らずの本名が第三大臼歯であることを根拠に、親知らずのほうが若年であるため第二大臼歯が彼を組み敷いているのであるという、議論の余地をのこす結論で満足しないわけにはいかなかったのである。 だが、ふたりの上下が決まってもなおぼくの前には新たな問題が浮上し、なかなか想像を先へと進ませてくれなかった。これからが面白いところなのに口惜しいかぎりだが、いやいやこれから面白いからこそ障碍が現れるのやもしれない。 さて、諸君はお気づきだろうか、ぼくはさきほど親知らずが組み敷かれているという説の根拠とするため、彼の本名を示した。 彼の本名は第三大臼歯。大臼歯三兄弟のいちばんの末っ子である。ということは、とりもなおさず第二大臼歯は彼のすぐうえの兄であり、第一大臼歯は長男ということになる。 ここでぼくは愕然となった。第二大臼歯と親知らずは実兄弟であったのだ。 名前がまったく違うものだからてっきり他人と思い込み、ぼくは彼ら兄弟をすでに寝床のうえまで手引きしてしまっていた。しかもここへ来るまでにすでに、互いの口を吸い股のものをこすりあわせ、溢れた精を手に受けること一度や二度ではない。 身の内に注がれてこそいないが、彼らはすでに情を交わしたもどうぜんであった。 これは忌々しき問題である。 これがいかに忌々しき問題であるかについては諸君はもちろん教授されるまでもなくよくよくご存知のことと思うので、こちらについても詳しくは説明しない。 だがひとつだけぼくの態度を表明しておくと、ぼくはつねづね弟は果敢に兄に挑むべきだと考えているのである。この表明からわかるとおりぼくにとっては、実兄弟であるなどということはちいさいことである、まったく些末な事情にすぎない。それよりも、これまでの経過において親知らずがひっこみじあんであるだけに常に第二大臼歯の手ほどきを望み彼より与えられるものに酔いながらも自らは恥らって身を竦めてしまうような、そんな受動的な態度ばかりをとりつづけてきたこと、これこそが問題の核心である。 さきほどぼくは若年ゆえ親知らずは組み敷かれるといったが、潔く前言を撤回しよう。他の場合はともかくも実兄弟においては若年こそ相手を組み敷くべきであり、すなわち第二大臼歯と親知らずにおいては親知らずが第二大臼歯をその腰に乗せ翻弄しているととることがもっとも望ましい。 さてではひっこみじあんの親知らずにいかにして男気あふれる第二大臼歯を翻弄させるか、しかもはじめての同衾であるというのに親知らずは果敢にも兄を己の腰に乗せるのである。いかにかき口説けばういういしい未通の兄が我から足をひろげ隆々とそそりたった男根のうえにそのしとやかにつぐんだ菊座を開いて受け入れてくれるものか。 ぼくは口元にこぶしをあてるとその影でひっそりとほほえんだ。 ここがもっとも難しい場面であり、ぼくの腕のみせどころでもある。 まずぼくは親知らずに幾分かの勇気を分けてやった。ぼくの持ち物ではあるが、親知らずが持っていたとしてもおかしくはない。そして第二大臼歯にある人の面影を重ねてみた。第二大臼歯としては他人の印象を投影されることなど不名誉でありこそすれ喜ぶべきことでは決してないと腹を立てそうであるが、ここはひとつぼくのためにも我慢してもらうほかはない。こうしてみてやっと親知らずにもいくらかの勝機があらわれる。あとはこれをどのようにして活かすかである。 ぼくは沈思しいくつかのパターンを試みたのだが、はじめての同衾ということもありましてや相手は親知らずよりも体躯も大きければ心も剛いとなれば、なかなか思うようには進まない。三度果敢なる挑戦をして、三度とも親知らずは第二大臼歯の太くしっかりとした腕による抱擁と大胆ながらも繊細な口吸いによってあっけなく陥落し、その身の奥にはじめての精を注がれるに至ったのである。 それはそれで親知らずとしては甘美なる瞬間であったろうが、ぼくは断じてそれを認めない。三度とも睦みあいの終わりに強引にわりこみ幕を下ろしてやりなおしを求めた。 それを六度、七度と重ねたがいっかな妙案は浮かんでこない。 八度目に挑ませたときも最後には親知らずが聞くにたえぬ破廉恥きわまりない言葉をはっしながら第二大臼歯の精を絞るように体内で飲み干し、自身も吐精したところで思考をとめた。 なるほど、敵はあまりにも手ごわい。だが、手ごわいからこそこれを覆すときがたのしいのである。 ぼくは口元に当てたこぶしの下でほほえむばかりではなく、はしたなくも舌なめずりをすると、彼の薄く開いたくちびるの隙間に見えざる第二大臼歯と親知らずを思いうかべながら想像を勧めた。 ここまで来てしまえばもう意地である。 なんとしても親知らずに第二大臼歯を口説かせ、さきほど口にした言葉よりなお破廉恥でなお扇情的な言葉をいわせつつ、尻を責めなぶらせずにはおかない気持ちになっていた。 こういう方法はどうであろう、ああいう口調ではどうであろう、突然ゆくべきかあるいはわざともったいつけてじらしてみるべきかと、しばらく思案の時間がつづく。 だがやはりいくたび挑戦を試みても、第二大臼歯の後方への守りは堅く、容易に突き崩せない。にっちもさっちもゆかなくなったぼくは、眉をひそめてあれを用いるしかないかと心に決めた。正攻法はもはやひととおり試してみた。これで勝てなかったのであるから、正面からいっても勝てる見込みはない。 残るは奇策である。 ぼくはあまりに卑劣であることを理由に胸の奥底へ秘めてきた無数の策謀をここへきてはじめて表へ引き出した。奇策とは相手の想像を越えてこそのものだ。すなわち相手がいちどは考えはしても、いやまさかこれは実行すまいと否定してしまうようなものか、もしくはまさしく考えもつかないようなものでなくてはならない。その点に関してぼくが親知らずを介し第二大臼歯へ用いた奇策はじゅうぶんそう呼ばれるべきものである。 そして、奇策はみごとに実を結んだ。 親知らずは第二大臼歯をその的確で繊細きわまる愛撫によって翻弄し、やさしげな言葉で陥落させると、それまでいくたの挑戦の過程で己が口走ってきた言葉の数々を今度は第二大臼歯の口から溢れさせ、しごく満足げな笑みをうかべていた。もちろん最後には第二大臼歯は我から望んで足を開き、親知らずの腰の上に深く腰を落とすと、すでに立派に形を取った親知らずの男根の熱さに身悶え、体を走るこらえようのない快絶に狂おしい呻きをもらす。そして奥深いところで親知らずの情熱の発露を味わうとその身からも歓喜の飛沫を解放したのであった。 こうして過程はともかくとしても満足のゆく方法で親知らずに思いを遂げさせたぼくは、現実の視野にピントをあわせた。とたんに映し出されたのは彼の白い歯が薄曇の空から注ぐ光に油のようなぬめりを見せたところであった。 背を覚えのある感覚がざわりと走りぬける。ぼくはそこで自分が激しく勃起していることに気がついた。よく考えずとも原因は想像がつく。ついさきほどまで繰り返し親知らずと第二大臼歯が睦みあうさまを想像しつくすほど考えつづけていたのである。いくら想像の上とはいえ濡れ場は濡れ場だ。親知らずが未開地に強引に押し入られる痛みに悲鳴をあげてみたり、もたらされる快に酔い我から体をうごめかせもうろうと卑猥なうわごとを口走るさまなどを微にいり細をうがって脳裏に展開させた結果として、この身体の反応はあまりにも当然のことであった。 だからといってぼくがいっぺんの羞恥も感じなかったわけではない。正面には薄く唇を開いた彼がまったく欲情とは無縁と思える顔つきで座っており、周囲は静かで大気は密である。ぼくはひとりきりの高揚を勘づかれるのではないかと怯え、わずかばかり肩をすくめた。また雨の香に混じりぼくの硬くふくらんだ部分からにじむ滴りの匂いが漂いだしはしないかと、それもまた不安であった。 だがそれからしばらくしても彼は雨の流れる窓辺に顔をむけたままチラともこちらを見ようともしない。そこに欲情がないことも相変わらずであり、ぼくはひとりきりあさましい場所へ取り残されたような気持ちになり理不尽な怒りを覚えて顔をしかめた。 彼もまた同じところへ来てくれなくては嫌だと瞬時に考え、ひとつのたくらみをもって机上に左の手を残すと右の手はそっと机の下から彼の足へと伸ばした。そうしながら顔にはほほえみをうかべ彼の名を呼ぶ。 「昇二兄さん」 さきほどからずっと雨の窓外へむけられていた目がぼくを見た。 「なんだ? 攻三」 彼の、いやぼくの兄である昇二兄さんの男らしい顔がこちらへむくのと時を同じくして、机下ではぼくの手が兄さんの足の間をかすめた。本来は強くにぎりしめ、ぼくと同じようなところまで持ち込んでやろうという算段であったのだが、それにはいささか腕の長さが足りなかったらしい。だがここでもうひとつ予想していなかったことが起こっていた。さきほどまで平然たる面持ちで窓外を眺めていた兄の股間もまたぼくのそれ同様に激しく勃起しズボンの前立てを突き上げそこをわずかに湿らせていたのである。 「昇二兄さん」 ぼくはかすれた声でよんだ。 兄は己の体に触れた手とぼくとのつながりをいままさに認識したというように、急に落ち着きをなくしガタンと騒々しい音をたてて椅子から転がり落ちた。ぼくはそれを視線で追い、机の下で兄に触れた手をぎゅっとにぎりしめる。カタンと音を立ててこちらはゆっくり椅子から立ち上がるとと湿った空気を踏みしめ合板の床をくじるように足裏で押しのけながら兄に近づいた。手をのばせばあからさまな動揺が兄の男らしくしっかりとした骨格をふるわせ生真面目な衣服が相応しくなく床をこする。逃げるように尻で後退していく姿をぼくは三度のまばたきの間だけ見守り、そして行動した。 「兄さん」 また彼の立場を全面に出したその呼称を呼びながら、じりじりと接近する。もちろん兄はぼくが近づくだけ後ろへ下がったけれど、あるところまで来てぼくが急に大股での一歩を踏み出し即座に身をかがめて顔の前に顔を膝の間に片膝を、そして起ちあがっている部分にてのひらを置くと、打たれたように体を震わせ動きをとめた。 「兄さん。どうしてここをこんなにしているの?」 さあ教えてくださいよといじわるく問えば、兄は震えたまま答えない。 「いやだな。なにかあなたをあおってしまうようなものが雨の空にありましたか?」 てのひらでそっと盛り上がったところの頂点をこする。そうするとじわりと布地を通して湿り気がてのひらへ伝わった。 「しとしと降る雨があなたのここからしみだすものと同じにでも見えましたか?」 兄はぎゅっと唇をかみしめ頭を振った。 ぼくはそれを眺めながら閉ざされた唇の内で彼の第二大臼歯と親知らずがいまどうなっているかを考えてさらに勃起した。もはやこれ以上には硬くなるまいと思っていたものの再びの変化にいささか驚き手の動きがとまる。すると押し当てたてのひらの下で、物足りなげな揺らぎが生じ、ぼくはまたもや驚いて兄をまじまじと見つめてしまった。かあっと兄の顔に朱がのぼりその瞳があまりの羞恥のためにうるみはじめる。ぼくはこらえきれぬいじわるな笑みを口元にたたえ、顔をふせようとする兄のあごをすくいあげると唇を奪う。そうしながら、また腰の猛りの上にてのひらをかざして、そっと擦ったり布越しに形をたどるようにつまんだり、あるいは全体を兄の体にむけて押し付けたりしていじめた。 ぼくの唇の下で兄の呼吸はいよいよ速く荒くなる。ぎゅっと押し付けた手には間違いようのない湿りが伝わり、ついにはぼくのてのひらを濡らした。もはや隠すこともできぬほど、兄の腰は揺れてぼくのてのひらに己を擦りつけている。 「ああ、気持ちがいいんですね? そうでしょう、兄さん」 耳元にささやきかけてやるとぶるりと頭を振った。それが耳朶に吹きかけられる吐息ゆえなのか、あるいは否定を意味するものなのかぼくには判然としなかった。だが、それを追求するよりもいまは兄の欲望とその体を追求するほうが先である。猛る兄をこの目で見たい。すぐにでも直にこすりあげてやりたいという欲望に抗えず、ぼくは前を閉ざすジッパーを慎重に下ろした。途中何度か突きあげる下着の布地をかみそうになりながらも、ジッパーが下りきる。邪魔な布地をそっと左右へよけてやるとたくましい兄の頭がと飛び出してきてぼくの手を打った。 「い……いやだ。やめるんだ、攻三」 「かわいくない人だ。そんなことをいって、あなたのかわいいところはこんなにもよろこんでいるのに」 「そんなっ、あっ」 触れたとたんに兄の言葉は途切れてしまう。ぼくはそれに気をよくしてぐいぐいと力強く扱きたて降りしきる雨のように後から後から溢れるものをを兄の昂ぶりにすり込んだ。じゅくじゅくと泡立つ音が空気の中へ淫靡に広がっていく、その音は兄の体を刺激しているようだったが、同時にぼくの体にも影響を与え、たまらなくなったぼくは自分の前を慌しく開くと取り出した昂ぶりを兄のものと強く重ねあわせた。そのまま濡れた音をさせながら二本をいちどに扱きたてる。 「見てくださいよ、兄さん。ぼくのと兄さんのが絡んでこすれて、いやらしい。兄さんのこのでっぱっているところがぼくはいっとう好きですよ。兄さんもお好きでしょう? こうやってくじってやるとうなずくようにふるえますもんね」 「やめてくれっ、攻三。あぁ、違う。違うんだ」 「なにが違うんです? 雨の空を見て欲情して、弟の手になぶられてこんなによろこんでいるあなたなのに」 「違うっ。俺はそんなものをみてたわけじゃ!」 「じゃあなにを見ていたっていうんです? ここであなたにこんな気持ちを起こさせるなにがあったっていうんですかっ!」 兄がなにを見てこんなふうに体を昂ぶらせたのかと考えるだけでぼくの頭は沸騰しそうだった。半分はそのときの兄の心の内を想像して、のこりの半分はぼくの胸の内の嫉妬のためだ。 ぼくの突然の叱責に兄はぱっと目を閉じた後でゆるゆるとうかがうように開き、ぼくの目を見て震えながらこう告げた。 「お前だ、お前を見てたんだ。わかってるんだろう! だからこんなことを」 言いかけた彼の言葉をぼくはその口を吸って塞いでしまった。甘いようななめまいのするような言葉がぼくの口から吸いこまれ胸の奥へと落ちていく。 「ああ、あなた。もう知りませんよ」 ぼくは兄のズボンをつかんで無理矢理にその体からひきはがすと、兄の力強い体をうつぶせになるようにひっくりかえした。全体に筋肉が張り巡らされ締まった体が床にはうさまはなにかしらの淫靡さと背徳の甘みがある。ぼくはそれをかみしめながらひきあげた尻にかじりつき、ひゅうと息を飲みあぁと衝撃に尾をひいてもれる声を耳で楽しんだ。その後はしばらく舌でもって彼の内奥をおもうさま舐りぼくの味覚を存分に満足させ、続いて前を、その下の袋を、あるいは胸まで手をのばしてそこにあるとがりをいじめて彼の口から卑猥で恥辱にみちた懇願を引き出す。 兄はぼくが求めるといくらでも恥ずかしいことを口走った。 俺の淫猥な穴にお前の硬くてたくましいものが欲しいだとか、ぐじょぐじょにしてまくりあげて朝から晩まで犯していてだとか、おなかがいっぱいになるまで注いでくれだとか、そういう正気であればとてもではないが口にできそうもない事柄を次々と言わせ、最後にもういちど懇願させてからひといきに突き入れた。 その瞬間の兄の声をぼくは今後も一生忘れないと思う。どんないやらしい格好の女たちや男たちよりも兄の発した声が、ぼくを昂ぶらせるのに効果がある。右手とこれがあればこの先一生おかずに困ることはあるまい。 ぼくがそんなことを考えて悦に浸っていると差し入れたまま動かなくなった昂ぶりにじれたのか、兄がゆるゆると腰を揺らめかせながら口から懇願の声をもらした。 「攻三っ、攻三! 頼むから、奥を……奥まで突いておなかが痛くなるまでたくさんだしてっ!」 第二大臼歯。 ぼくは天啓のように耳に響いた言葉に背筋を震わせた。兄さんの体に包まれている部分がまたもや力を得てさらに存在を主張する。なんということか、いま兄さんが口にしたのはまさにぼくの頭の中で挿入の直後に第二大臼歯が口にしたのとほとんど変わらぬ内容であった。そうであるならぼくは親知らず。さきほど頭の中で繰り広げられたのと同じように兄に痴態を演じさせその体を存分にむさぼり、そして入れてはいけないところから兄の腹をいっぱいにする。 待っていてください兄さん。いますぐにそうしてさしあげますから! 頭の中の第二大臼歯の痴態を我が兄に重ねながらぼくはがむしゃらに腰を振り声を上げさせそうして疲れきるまで兄を翻弄した。 ただ残念なことにぼくは興奮するあまり、最後を兄を腰の上に乗せてむざぼる形で終えるということをすっかり失念していて、立ったまま壁にすがる兄を後ろから攻めたてる姿勢で終えてしまったのだった。 後始末まですべてを終えてからそれに気づいたぼくは、疲れたようすでぐったりと床に寝そべる兄を舐めるように見て、次は絶対に腰に乗せて終わらせてあげますからねとそんなことを誓ったのだった。
|