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 (鬼畜/逃げ回る受け/15禁)
被っていた猫はでかかった。


どうして…どうして誰もアイツの異常さに気が付かないんだよ!!

俺は迫りくる恐怖から逃げるようにただただ必死に足を動かした。




俺は昔から結構感が良い。
一目見れば相手がどんな奴か、なんとなくだけどわかる。
人とコミュニケーションを取る際に俺のこの能力は大変役に立つ。

なんて言えば相手が喜ぶのか、怒るのか。
つまらない衝突を避けたい俺としては自分のこの才能は素晴らしいと思っていた。

アイツに会うまでは。

初めて出会ったのは桜が舞い散る4月、高校の入学式。
新入生代表として壇上に上がったのを見た時だった。
一瞬で感じる。
『ああ、あれとは気が合わないな。』
もちろん、今まで生きてきた中でも気が合いそうに無い奴は何人も居た。
その場合は簡単だ。必要以上に近寄らなければいい。
その時もアイツには近寄らない様に気をつければ良い、と単純に考えていた。

その男は完ぺきだった。
容姿端麗、文武両道、文句のつけようのない暖かな性格。

男子校という特殊な空間の中で、アイツはモテた。
すでに男子校を卒業した兄貴から、そういう性癖の奴も男子校には居ると聞いていたし、同性愛者と実は気が合うことなんてよくあることだ。
俺のこの能力は人の見た目や趣味には全く連動しない。

俺は俺と気が合う人間だけと関わることが大好きな内向的な性格だった。

不運にも同じクラスになってしまったのは2年の時。
ファーストコンタクトはプリントを配って貰った時。
「愛内…恋(れん)くん?」
俺のプリントを持って、そう聞いたアイツに俺は軽い笑みを浮かべて答えた。
「そうだよ。」
「すごいな、名前の中に『愛』と『恋』が入ってる。」
「それ、ちょっと恥ずかしいよな。親の遊び心で付けられて・・・。」
「ううん、すごく可愛い。」
ウゲェ、と心の中で吐いた。
やっぱりいまいちコイツとは気が合わない。

アイツが一人居るだけで俺達のクラスは何故か全学年の中心クラスになる。

音楽祭、体育祭、文化祭。
どの催しでも俺たちのクラスは常に一位。
クラスが一体となって頑張る姿、涙、友情、熱意。
担任になった若い男の先生は『お前ら、最高だ!』と涙したけど、この空気はアンタじゃなくて、アイツが作ったんだよ。

そんな風に頬杖をついて俺はアイツを見た。



2年から3年へはクラスは持ち上がりになるため、あまり感傷もない。
春休みに入る修了式。俺は式後に忘れ物をしてクラスへ一人で戻った。
ロッカーの中にある体操着を引っ張り出して、「洗わなきゃな」なんて思っていると、ふいに気配がした。

ハッ、と振り向くと、にこ、と人好きしそうな笑みでアイツが立っていた。
「うお、びっくりしたー。何?お前も忘れ物?」
「うん、そんなとこ。」
にこにこと笑みは崩れない。
完璧な奴もたまにはミスることもあるんだな、と声には出さず思うと、アイツは音も無く近寄ってくる。

「ん?何?」
言いつつ、言いようのない寒気が俺を襲った。
「ねぇ、恋てさ。」
呼び捨てにされたのは今日が初めてだけど、そんなことが気にならないくらいその冷たい声に驚いた。
「俺のこと、嫌いでしょ?」
にっこりと笑みを浮かべたまま言い放つアイツに俺は足元から崩れそうになったけど、必死に踏ん張る。

「は?何?なんで?俺なんかした?」
「何にもしてないよ。それがおかしいんだ。」
目の前に立つその男は俺より頭一つ分でかい。
目を合わせられなくて、俯きたくなったが俺はあえて横を向いてなんでもないように言う。
「何にもしてないなら別にいーじゃん。俺、別に嫌ってないよ。」
「ふぅん。じゃぁ、好き?」
少しかがんで俺の耳元で囁く。

『ああ、普通に好きだよ。』

そう言ってやろうとして、アイツと目を合わせた瞬間。
俺は息を飲んだ。
恐ろしい目、歪んだ唇は鬼のように見えた。

簡単に答えたら俺は一生後悔する。
そんな予感がした。

『気が合わない』なんて、なんでそんな甘いこと思ったんだろう。
こいつは俺の『天敵』だ。

「…き、嫌いじゃない。」
絞り出した声にアイツはすごく楽しそうにニヤリとした。
「はは、やっぱり。」
「…。」
「お前だけだよ、俺の本性に気づいてるの。」
「本性なんて知らない。」
それは本音だった。ただ、自分とは合わないと思ってただけで。

「でも、クラスで…いや、この学校でお前だけが俺を信用する気が無い。」
「た、たとえそうだったとしたら、なんだってんだよ!」
体中が震えるのがわかる。
何が怖いのかわからない、だからこそ怖い。

「いや、俺ずっと探してたんだ。お前みたいなの。」
ぐいっと前髪を引かれ、無理矢理上を向かせられる。
「やっと見つけた。」
痛みで呻く俺に構わず、アイツは笑う。
「まぁ、精々足掻いてみろよ。逃がさねーけど。」
クックッと笑いをかみ殺してるアイツを睨むと、舌舐めずりした。
そして、口付けられる。

理解する間もなく、歯を割られ侵入する舌に俺の舌が絡みとられた。
歯の裏側を舐められゾクゾクとした快感が背中を突き抜ける。

「ん、ん…ぅ、ん。」
肩を押し、抵抗しようとしたが力が入らないせいかビクともしない。
上を向いたままだから否応なしにアイツの唾液が口に入ってくる。
飲みきれなかったそれが口の端から流れ出た。

いつのまにか両腕とともに抱え込まれるようにされ、身動き一つ取れなくなる。
アイツの両手が揉みしだくように俺の尻を掴んだ。
ぎゅむぎゅむと尻を握られながら、口内を犯される。

それがいつまで続いただろうか、突然拘束を外され、快感と酸欠で力の入らない俺はへたりと座り込む。
茫然としたまま、アイツを見ると立ったまま見下ろしてニヤニヤと笑う。

「感じたのかよ。」
座り込んだ俺の股間にアイツの足が容赦なく入り込む。
「あっ。」
上履きの底で踏まれ、俺は痛みで呻いた。
コリコリと反応しかけているソコを転がすように足を動かされ、俺は「ひっ、ぃっ」と声をあげた。

アイツは素早く両手で俺の足首を掴み、ぐいっと持ち上げた。
俺は肩で自分の体重を支えた不安定な形になる。
アイツは楽しそうに笑って俺の足首を軽く開き、無防備になった股間にまた自分の足を当てた。

「…や、止め…。」
ニヤリと笑った瞬間、いわゆる子供のころ流行った『電気按摩』が俺を襲う。
高校生になって、しかもすでに反応している股間を震わす電気按摩の足は想像以上に痛気持ちいい。

「や、ぁ、ああ、だ、…んぅ、は、」
ぐりぐりと股間を遊ばれ、俺は悶えることしか出来ない。
教室でなんでこんなことをやってるんだ、と頭の片隅で冷静な俺が居た。
「は、なせ!」
キッと睨んで不自由な足をばたつかせると、ふいに足首をつかむその手が離された。
俺は慌てて距離をとる。
アイツはニヤニヤ笑ったまま、もう一度近づくことは無かった。
アイツの側に転がった俺の体操着が見えたけど、そんなものを取る余裕は無く、俺は一目散に逃げ出した。

「頑張って逃げろよ。でも誰もお前を助けちゃくれないぞ。」

後ろからそんな声が聞こえた。
確かにそうだ、アイツは2年かけて学校中を味方にした。
俺が騒いだところでそれは揺るがない。
完全に勃起した股間が制服のズボンと擦れて、走りにくいがただただ必死に階段を下りて、昇降口を駆け抜けた。
もう誰もいない校庭を走る俺に「恋!」とアイツが叫ぶ。

振り返ると教室の窓からアイツが体操服を掴んで立っているのが見えた。

何を言うのかと怯える俺にアイツは俺の体操服に顔を埋め何度も匂いを嗅いだ。
「俺、この匂いだけで勃ちそうv」
俺がウゲェッとその気持ちのまま顔を歪めると、アイツは益々楽しそうに笑った。
「お前のその嫌がった顔最高だな。」
俺が今度こそ帰ろうと背を向けると、アイツは気にせず続ける。

「明日、コレ届けてやるよ。お前んちまで。…どうにかして明日は家族全員追い出さないと、お前、自分の部屋で声をかみ殺して喘がなきゃいけなくなるぜ。」



俺は今度こそ走り出した。
背中にアイツの笑い声を聞きながら、もう振り返ることは出来なかった。


「ありがとうございました。」
...2010/5/28(金) [No.525]
ちな
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