先輩と関係を持ってから3か月。僕が先輩に呼ばれて、先輩の家へお邪魔出来るのはだいたい週に1回。僕みたいのを相手して貰えるのだから、満足しとくべきなんだと思う。だいたい週に1回なんて、なかなか好成績じゃないか。…とはいえ、先輩の家に僕以外の人の痕跡が残っていると胸がチクチクするのは事実だ。僕には痕跡を残すそんな勇気もなくいつもコトが終わると逃げるように帰るだけ。そして、僕には今。悩みがある。「はぁー…。」「どうしたよ、中村。そんな色っぽいため息ついちゃって…さてはコレか!」小指を立てて肩を組んで僕の顔を覗き込む同僚に僕は苦笑した。「色っぽいってなんだよ。」「最近妙に色気があるんだよなぁ、お前。それなのに中村は浮いた噂もねぇしな。」「僕モテないもん。」「嘘つけ、こないだ女子社員がお前のこと可愛いぃ~vってはしゃいでたぞ。」「そういう奴は恋人候補には入れないんですー。」「まぁ、確かにな。…でも女子社員がお前にはしゃぐのも無理はないよ、中村って幼い子供みたいだよな。汚れたことは知りませんっ、みたいなさ。」「なんだよそれっ。」むっと膨れると同僚はニヤニヤ笑いながら僕の頬を突いた。「あ、飯島さん!」急に同僚は僕の後ろのほうを見て頭を下げた。僕も慌てて振り返ると飯島先輩が笑いながら立っていた。…目は笑ってない。機嫌悪そう。飯島先輩は同僚に話しかけ、僕のことは見えてないふりだ。良いけどね、僕たちの関係がばれないためにも会社では必要以上に側には居られない・・・わかってる。その日、デスクワークをしているとケータイが震えた。そっと見てみると飯島さんからで「今日、来い。」嬉しいけれど、今日あの機嫌の悪かった飯島先輩のままだったらこっ酷く虐められそうだな、と僕は思って・・・その予感は外れなかった。結局意識を失うようにして眠りこけた僕は先輩のベッドで朝を迎えた。あの、最初の日以来、僕は夜のうちにヤることが済んだら家に帰っていたので(それが良いセフレだと思って)こんな風に朝を迎えたのは久しぶりだ。ヤバいなー…こんな眠っちゃって先輩はさらに機嫌を悪くしていないだろうか?ベッドからむくりと起き上がるとすぐに先輩に引き戻された。「まだ寝てろ。」と、掠れたセクシーボイスが耳元で囁かれる。…下半身に直撃しそうだよ、その声。その後さらに寝て、昼の12時近くなって先輩と一緒に目覚めたけど、先輩の機嫌はすっかり直っていて、鼻歌を歌いながら先輩が作ってくれた昼食までごちそうになった。作ってもらったオムライスを頬張りながら、僕は最近の悩みを再び思い出した。僕は先輩に何もしてあげられてない。セフレのくせにいつも先輩に愛撫してもらって鳴くばかりで、先輩がいまいち気持ちよくなってくれてるかがわからない。こんなんじゃ今は良いとしてもすぐ飽きられる。やっぱり他のセフレとは違う特技とか持っとくべきだよなーと思いながら、僕はモグモグと口を動かした。無言で食べていたのが悪かったのか先輩は不機嫌そうに「誰を…何を考えてる?」と低い声で言った。「先輩のことです。」「・・・そうか。」素直に言うと先輩は優しく僕の頭を撫でてくれた。先輩のためならなんだって出来るってことをアピールしたいのにな。ブラブラと暇な日曜日を街で過ごしていると、ナンパをされた。残念ながらそれは逆ナンではなく…相手は今どき風の男の子だった。「俺、怪しいものじゃ無いデスヨ?」と、明るい髪のいかにも怪しい少年はにっこり笑う。「僕、急いでるから。」横を通り過ぎようとした僕の腕を簡単に掴み、引き寄せた。「待って、…あそこで話しませんか?」少年が指差した先にはファーストフード店があった。「で、俺はいつも俺の仕事場の前を通るアンタに惚れたんです。」「・・・はぁ。」「今日会えたのも何かの運ですって…ね、俺と付き合いましょ?」僕は告白されながらも内心関心してしまった。どうしてそんなこと軽く言えるんだろう、断られたら…とか思わないのかな。「ごめん。」「なんでっすか?もしかしてもう恋人あり?」「違うけど、僕の片思いだけど…すっごく好きな人が居るんだ。」「…。」「だから、ごめんね。」そのファーストフード店を飛び出すように僕は店を出た。なんだか無性に飯島先輩に会いたい。今日は呼ばれてないから会えないけど…電話ぐらい・・・。・・・別のセフレの人が出たりしたら嫌だな。そんなことを考えながら自分の家へ向かっていた僕は気が付かなかった。今の男の子が、妙に誰かに似てることに。「あ、兄貴?作戦B、失敗でーす。」無駄に走って息を切らしながら家に着いた僕は、ケータイを握りしめたまま電話が出来ずに固まっていた。忙しいかもしれないよなぁ、迷惑だとか一言で切られるかも。そんな風に飯島先輩のことをもやもや考えてたら…体が熱くなってきた。これは…。背中にむず痒い快感がせり上がる。一昨日先輩の家に行ったってのに、僕も意外と若いな。現時刻18時27分なり。僕はそっと股間に手を伸ばし一人遊びを始めた。「んっ…」服の裾を咥えて、変な声を出さないように極力気をつける。僕のアパートの壁は薄い。とはいえ、先輩の手の動きを想像しながらすると今にも声が漏れそうになる。「…ふ、ん…んぅ。」あ、も、イく。「中村、居るのか?開けるぞ。」ほぼ声と同時に玄関のドアが開けられた。僕の家の合鍵を持ってるのは二人しかいない。お母さんと…飯島先輩だ。飯島先輩が僕の家に来たがる時があって、僕は手放しに喜んで合鍵を渡した。それは…決してこんな場面を見せるつもりだったわけじゃないけど。さすがの先輩も固まってる。そりゃそうだよね、僕の股間はびっくりして縮んでくれれば良かったのに元気に天に向かってヒクヒクしている。「淫乱な奴」とか思われそう。部屋が狭いから仕方がないけど、なんでこんな玄関から見えるとこでしてたんだろう僕…穴があったら入りたいってこのことだ。少しの沈黙の後。先輩の怒声が響いた。「っざけんなっっ!!」先輩は靴も脱がずに部屋にドカドカ入ってきて僕が股間を握ってた右手を持ち上げた。「こっちがどんな思いで1週間に1回で我慢してやってんだと思ってんだ、ああ??…俺は『右手の恋人』にすら勝てねぇ男なのかよ!」僕はポカンとしたまま引きずられるようにして先輩の車に乗せられた。しっかりと僕のアパートの鍵を閉めて、運転席に乗り込んだ先輩はイライラと唇を噛みながら急発進させる。僕は慌ててシートベルトを締めた。先輩の家に着いて抱えられて先輩のベッドに落とされた僕はまだポケッとしてる。なんで此処へ連れてこられたかも良くわからないまま。「言え。」「え?」「言えよ。」憮然とした顔のまま先輩は繰り返した。「何を…。」「言えって!」「…?」「お前、“片思いですっごく大好きな人”って誰なんだよ。」「え?」「言ってみろよ。」「・・・先輩、です。飯島先輩が、好き。」先輩はその言葉を聞いて力が抜けたように座り込んだ。「そうだよなぁ…でも、違う。」「?」「片思いじゃないだろ?」「?」「俺は・・・お前をセフレだなんて思ってない。」それって…「先輩…そんな、僕は・・・セフレ以下ですか?」一気に目が潤む。セフレを降格させられたってことかな。セフレの下って何?下僕??「ちげぇ…。」先輩はさらに脱力した。「お前は、中村は俺が好きなんだろ?」「大好きです。」「じゃぁ、あとは言うことわかるよな?」「…っ捨てないでください!」「違うっつーの。」「中村、俺と付き合え。」「…はい、何処にでしょう?」首を傾げた僕に、プチッと何かが切れる音が聞こえた。それが、先輩の血管が切れた音かどうかはわからないけれど、次の瞬間覆いかぶさってきた先輩に僕はとんでもない目に合わされた。Happy End?
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