「…別に、抱いてやっても良いぜ。」ふっ、と僕を馬鹿にしたように笑みを浮かべて。それでも先輩は憎らしいほど格好良くて。僕は「お願いしますっ!」と、恥をしのんで頼んだ。僕が飯島先輩、飯島 浩司先輩に惚れたのは入社した当時からだ。元より同姓しか好きになれない僕が、先輩に惚れるのは仕方がない運命だったと思う。高い身長に整った顔、人から好かれる気さくな性格。仕事は早く、実家は大病院でその次男だそうだ。多くの女性を虜にする先輩は決してそのことを鼻にかけることなく、僕のような新入社員にも、笑いかけてくれた。僕以外にもたくさんの人、その他大勢に向けられたその笑みに惚れた。それでも本当はこの気持ちを伝えるなんて、そんなことをする気はサラサラ無かったんだ。それは本当。ノーマルな人に僕の思いなんて迷惑どころか、気持ち悪いはずだから。同じ性癖を持つ友人が前に「そのテじゃない人に惚れると苦しいだけだぞ。」と言っていたのを思い出したけど、僕は身をもってそれを実感した。僕はとくに優秀でもドベでも無いため先輩に構われることはそんなに無くて、そんな中たまに声をかけてくれたり触れられたりすると、僕の心臓は痛いほど跳ね上がった。25になる男が女子中学生のような恋をするなんて笑い者も良いところだけど、どうしようもなかったんだ。だから、あの夜、遠目にもわかるほど華奢で綺麗な感じの男の人の肩を抱いて、ネオンの中に消えていく先輩を見てとてもびっくりした。僕の見間違いか、何か勘違いしてるのか、僕はぐるぐる考えてはわからなくなった。だから、次の日、直接先輩に聞いてみた。「先輩、昨日、」僕の言葉を聞いた先輩は焦ることもなく、悪戯のばれた子供のように無邪気に笑った。「皆には、内緒な。」先輩と秘密を共有した僕は毎日がドキドキだった。前よりも先輩が声をかけてくれる回数が増えた。僕が皆にばらさない様に見張っているだけかもしれないけど、嬉しかった。「中村。」先輩の声に僕はすぐに反応して小走りで近寄った。先輩は僕を見降ろして、小さく笑う。「?、なんですか?」「お前って子犬みたいだな。」そして僕の頭をクシャっと撫でる。それだけで僕の頭はオーバーヒート寸前で、僕は頭を震わせて「止めてくださいよっ。」と照れることしかできなかった。「今日、良かったら飲みにいかないか?」「飲み会ですか、あ、じゃぁ僕参加者集めますよ?」「イヤ、違う。俺とお前の二人でだ。」「え?」「良いだろう?」有無を言わせない笑みに僕はコクリと頷いた。ああ、絶対飲み過ぎてる。ただでさえ先輩と二人きりで緊張してふわふわしてるのに、自分の許容量を超すお酒を飲んでしまった。「中村ー?」「…はぃ。」「はは、お前焦点合ってないぞ。」なんだかよくわからないけれど、先輩が笑ってる。それだけで僕は幸せだ。「随分と幸せそうな顔をしてるな、良いことでもあったのか?」「…先輩が飲みに誘ってくれたから、僕、嬉しい。」「中村は可愛いなぁー。」ガシガシと頭を撫でられる。頭が揺れたことでクラクラした僕の意識はそのままブラックアウトした。「ん、…?」「お、起きたか?」「…先輩、あれ?僕…」「ああ、お前酔い潰れたから俺んちに運んだ。」「っ!?こ、此処、先輩の家なんですか??」ふかふかのベッドに寝ていた僕は一気に体を起して辺りを見回した。白と黒を基調にしたシンプルな部屋は無駄な物が無いせいもあるとはいえ、とても広い。僕のアパートとは月とすっぽんだ。「明日は土曜だし…まさか、休日出勤しなきゃなんねぇほど仕事ため込んでねぇよな??」ニヤニヤと笑う先輩に僕は「してないですよ!」と言いながらもドギマギしてしまった。シャワーを浴びたのか、先輩は半裸だった。僕はベッドの上だし、変なシチュエーションだ。先輩が濡れた髪もそのままに僕のほうへ来て、ベッドに手をかけた。ギシリとベッドが鳴って、僕はまるで押し倒されそうな雰囲気だな、とボケッと先輩に見惚れていたら、肩を押され本当に押し倒された。「…あれ?」「くっ、おぃおい鈍すぎだよ、お前。」「…先輩?」「そんなもの欲しそうな顔すんなよ?…俺が気が付いてないとでも思ったのか??」「・・・ば、ばれてたんですか?」「とっくにな。…別に、抱いてやっても良いぜ。」一気に顔に血が上る。情けないことに馬鹿にされて頭にきてるんじゃない。昼間とは違う夜の顔の先輩の色気に僕はのぼせてしまった。「真っ赤だな、期待してんのか?」先輩はニヤリと笑う。「…お願いしますっ!」僕の顔はゆでダコのようだったと思う。噛みつくように口付けられて、僕はちいさく呻きながらもただ必死だった。先輩の舌が僕の口内を犯す、僕は苦しくて必死に逃げ回るけど先輩の舌はいとも簡単に僕の舌を捕まえて絡ませる。先輩の唾液が流れ込んできて飲みきれずに口の周りが濡れていく。一回離れたかと思うと、僕が息を整える間もなくまた噛みつかれる。先輩が存分に僕の口で遊びまわったころには僕はぐったりしてしまった。膝で股間をぐりっと押され僕は声を上げた。「ちゃんと反応してるな。」キスだけで敏感に反応してる自分が情けないけれど、僕は反論も出来ないまま先輩を見た。先輩は僕を見返して嬉しそうに笑い、僕の股間に手を伸ばした。いつの間に脱がされてたのか、パンツ一丁の姿の僕はそのボクサーパンツの上から握られ喘ぐしかなかった。だんだん湿りを帯びて濡れて張り付いて、僕のモノの形があらわになっていく。先輩はその最後の一枚の布切れも取り去って、情けなくもしっかり、上を向いてしまった僕のモノに直接触れる。それは羽根のような優しいタッチで正直物足りない。「せんぱい・・・・。」僕が恨めし気に見ると先輩は意地悪く笑ったまま、寒さと感じたのとでピンと尖った僕の乳首を口に含む。舌で潰したり、歯で甘噛みしたりと好きに遊びながら手はいまだに僕の股間を弄っている。イきたい。我慢汁がダラダラと流れ後ろのほうまで垂れていく。先輩はその汁にそって指を滑らせ、僕の後ろの入り口を撫でる。「怖いか?」先輩はまっすぐに俺を見て真剣な顔をしていた。「平気です。」「…痛い時は言えよ、優しくしてやる。」「先輩の好きにしてくれていいです…初めてでは無いんで、大丈夫です。」甘い笑みを浮かべていた先輩の表情がピシリと固まる。「ほぉ。」「…先輩?」「いや、そぅか。」ズンッと先輩の指が埋め込まれた。一本とはいえ、いきなりの衝撃に僕は「いっ」と顔を歪めた。そんな僕に構わず、先輩の指は好き勝手に動く。すぐに二本目が挿入され、中を広げられる。ランダムに動き回る指が僕の弱点をかすめた。ビクンッと背を弓なりにして声を上げた僕を先輩がギラリと見た。それからは三本の指をランダムに動かしては弱点を攻められた。「もっ・・・・っあぁっ!」イく!と思った瞬間僕のモノを先輩が握りこむ。根元を押さえられて快感を放出できなかった僕は悲鳴を上げた。「危ねぇ、後ろだけでイけるのかよ。」「は、はなしてくだっ・・・さい!」「随分と開発されてんだな。」ギラギラと光る先輩の目はまさに肉食獣だった。右手で後ろを弄繰り回されながら、左手は僕のモノの根元を握ったまま器用に鈴口を撫でる。強すぎる快感にひぃひぃ泣く僕を面白そうに眺めたまま、先輩は一気に指を引き抜き、すぐに己を突き刺した。次の日、先輩のベッドで遅い朝を迎えた僕に先輩は爽やかに笑いながら言った。「お前はセフレの一人だからな。」「・・・・。」「勘違いをするなよ。」「…ってことは、また…次を期待しても良いってことですか?」「あ?」「だって、『セフレ』ってことはまた抱いて貰えるチャンスが僕にもあるってことですよね!?」愛されるだなんて、そんなことは望んでない。僕が何より怖かったのは、もう二度と笑いかけてくれないこと、相手にして貰えないことだ。「僕、もう少し自分を磨くことにします。だから、その…先輩の都合が良い時は、また僕を呼んでください。」ベッドの上で深々と頭を下げた僕に先輩は複雑そうな顔をしたまま、何も言わなかった。うーん…まだまだ僕は要修行ってことかな。頑張ろう。
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