あ、なんで俺この男を抱いてるんだ? 今日は翔を抱こうと思ってたはずなのに。
自分の腕の中で震える小柄な男をまじまじと見て俺は首を傾げた。
「はぁ、超気持ち良かったぁ。ね、ね、お兄さん名前なんて言うの?」 「…山田太郎。」 「うわ。似合わなーぃ!」
ケラケラと笑う声が耳障りで俺は眉を顰める。 俺はこういうタイプは嫌いなはずなのに、なんでこんな奴と一緒にこんなわけわかんねぇホテルに居るんだ?
「まだチェックアウトまで時間あるよぅ?…ナニ、する?」 たった今セックスが終わったばかりだというにも関わらず、そいつは誘うように俺を見る。
お。 この瞬間わかった。 俺の顔色を窺うように見上げるこの仕草が、翔に似てる。
だから俺は今こいつと居るんだな。 そう納得して俺はその男をもう一度押し倒した。
「佐伯ー。」 「…おぅ。」 「眠そうだなお前。」 クスクスと笑う翔は綺麗だ。 本当は昨日この居心地のいい翔の家へ来ようと思っていたのに、失敗した。 だから今日は朝起きてまっすぐに翔の家へ来た。
翔は大学に通っている、バイトもしている。 俺は翔が居ない間もずーーーっとこの家でのびのび過ごしていた。 翔の香りのするベッドから起きて欠伸をしたとこで俺は気づく、美味そうなにおいがする。
「…腹減った。」 「そう言うと思って飯作っといたよ。」 「昼飯か。」 「は?」
驚いたように翔が目を見開いて俺を見た。 そして次の瞬間花が咲いたように顔が綻ぶ。
「今もう夜の8時だぜ?」 「…。」 「どんだけ寝てたんだよ?」
ホラ、と翔が差し伸べてくれた手を取ってよっこらせとベッドから立ち上がり俺は腰をトントンと叩いた。 「じじくせっ。」 「うるせぇよ。」
こないだこの翔の家に男を連れ込んだのは流石にまずかったと内心冷や汗をかいたのに、当の翔はいつもと変わらず俺と接する。 言い訳をすれば連れ込んだんじゃなくて勝手に付いてきて翔の部屋を俺の部屋と勘違いして勝手に上がって俺の上に乗った淫乱な男だった。 ・・・あいつ、不法侵入だよな、良く考えたら。
もちろん俺は合鍵を貰っているのだから違う。
翔は表情はコロコロ変えるが、感情はたいして変えない。 何があっても笑ったり怒ったり呆れたりしながらも、冷静に行動する。 俺によく向けられる表情は笑顔だが、感情は「諦め」だ。
それが気に食わない。
俺を好きなら好きだともっと態度に表わせばいいのに。 まるで俺には伝わるはずもないと諦めたように俺を見る。
そんな翔が唯一俺を感情のこもった目で見るのは抱かれてる時だ。
「…おかわり、いるか?」 上手いともまずいとも、世間話すらしないでモクモクと食べる俺に嫌な顔一つしないで、翔は空になった茶碗を渡せと手を伸ばしてきた。 「米は良い。」 「…んじゃ、味噌汁はおかわりするか?」 味噌汁を温め直す気なのか、立ち上がった翔の腕を身を乗り出して捕まえた。
「うぉ、何だよ佐伯。」 「…甘いものが欲しい。」 「は?デザートかよ。しゃぁねぇな、コンビニで買ってくるから少し待ってろ。」
何言ってんだこいつ。 俺の目の前にこんなに美味そうな「甘いもの」があると言うのに。 コンビニなんかに売っててたまるか。
・・・。 売る。
翔が売られている。
その言葉を思い浮かべた瞬間俺はぶわっとすごい勢いで妄想した。
「ん、んんっ。」 そのくぐもった声は夜の公園のトイレの一番奥の部屋から聞こえる。 そこを開けると後ろ手に手を縛られ便座に大股開きで固定して座らせられた翔。 口は白い布で覆われ大声が出せないようになっている。
下半身は晒され、むき出しになった翔のジュニアが天を向いて立っている。 翔は羞恥心からか顔を真っ赤にして俯き力なく首を振る。
そっと指で翔のジュニアをなぞると、「ふ、ん。」と悶えながらも必死に足を閉じようと震える。
首から板が下げられ、そこには「一回500円 ご自由にどうぞ」の文字。
「お、おい。佐伯?俺、すぐ買ってくるから、その手離せよ、な?」 腕を掴んだままトリップした俺を翔は心配そうに覗きこむ。 「…全財産つぎ込んでもいいな。」 「は、何がだ?」
ガタンと立ち上がり翔の腕を引っ張りそのままベッドへ投げた。 「ぅあ、いて。」 顔からベッドにダイブした翔が恨めしそうにこっちを見るが、今はそんなことを気にしている余裕はない。
ひん剥くように服を脱がせジーパンを下げる俺に翔の制止しようとする声が聞こえたような気がした。 ・・・もちろん全力で聞こえないふりをした。
翔の両手を縛って、無理やり力ずくで翔の足をM字開脚させる。 翔は嫌なのか必死に逃れようと体をよじるが俺には誘うように揺らめいてるとしか思えない。
「佐伯、ちょ、待てっつーの!」 「…全部丸見えだな。」 絶景ってのはこういうことを言うんだろう。
俺は指と舌でその絶景をたっぷりと楽しんだ後、自分の怪物を突き刺す。 突き刺された翔の方は喘ぎながらヒクヒクと体を震わす。
その瞬間に俺を見る翔の目の熱さに俺はゾクリとする。 ああ、犯している実感。
500円じゃ安すぎる。 5万でも10万でも出せるさ。
「佐伯が好きだよ。」 あの時のあの必死な翔の顔がもう一度見たい。 俺だけを見て、「自分を好いてくれ」と必死に願う顔。 俺に夢中なあの表情。
今ならあの時みたいに適当に聞き流したりしない。
「佐伯が好きだよ。」 「ああ、俺もお前が好きだよ。」
ちくしょう。
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