祐希◇◇◇◇◇◇ (続き)
ん?何だこの隣のチビ。
俺が手に取ったのが気になるのか?
これは俺様が見つけたんだ、あっち行ってろ、発達不良。
さっきからチョロチョロ落ち着きがねぇ奴がいると思ってたけど、何だコイツ、進学校様の野郎じゃないか。
新設校の癖に東大にガンガン輩出してるってことで、コイツも頭はいいんだろうけど、なんか動きが挙動不審だぞ。
それにしても随分細いな。
昔の俺みたいな体型してるな、肩幅も狭いし。
あ、髪が黒くて長いってのは結構俺の趣味だな。
いわゆる日本的なサラサラのストレートって奴か。
服とか髪に気を使ってないわけじゃないみたいだけど、多分童貞だろうな。
こいつは全然ガキくさいっていうか垢抜けてない感じだし、ダサいの一言。
だぼっとした制服の着方とか痛いだろ、それにDCとか履きやがって、スケーターか何かか?
お、顔が見えた。
・・・・。
あれ?まじで・・・。
渋谷、新宿、原宿、池袋、恵比寿、横浜、上野・・・。
色んなところでナンパしてきたけど、こういうのには会った事ない。
切れ長の瞳に長いまつ毛、雪のような肌・・・。
まるでよく出来た日本人形かなんかだな。
顔も小さいし、ぷっくりとした頬とかまさに俺のために計算されつくしている造形だ。
世間が何というか知らないが、俺的にはストリートレベルは9をくれたやってもいい一品だ。
ちなみに最高は10(超売れっ子芸能人レベル)だから、少なくともミスマガジン(ストレベル7)よりは上。
残念ながら、この馬鹿は男なんだよな・・・。
でもまぁ、こんな奴だったら余裕で過食だな。
余裕で人生初めての彼女として扱ってもいい。
いや、俺の女になれ、貴様。
男に食われるために存在しているとしか思えない。
俺も昔はこんな感じだとか思ってたけど、いや、こいつには負けるな。
黒い髪と白い肌のコントラスト、それに手入れされてない割りにプニプニの唇がそそる。
さすが、ナンパ師の宿命というものか、俺の観察眼が冴え渡る。
今の思考だってわずか10秒の間の出来事だし。
しかし、本屋で大っぴらに声をかけるわけにはいかない。
俺的には男を誘うフェロモンを振りまきまくってるけど、一応、普通の男みたいだし・・・。
あ~、何か緊張してきた。
もう出会い系のクソ野郎なんかどうでもいいわ。
こいつに今すぐ声かけたい。
俺はその場にあった本を手にとって、チャンスをうかがう。
コイツが外に出ようとしたときに話しかけてみよう。
さっきメールしたのはまずかったな・・・。
こんな時にガチホモ野郎に声なんかかけられたらたまったもんじゃいない。
でも、この少年を逃すわけには行かんぞ。
野郎に声をかけられたら、『消えろ、クズ』とでも言えばいいか、そしたら誰も傷つかないから・・。
ん?
俺のかわいこちゃんが携帯で何かメールしてやがるな。
こういう時って待ち合わせの場合が多いんだが、どういう風に声かけるかだな。
戦略をねっとかないとな・・・。
とりあえず、お友達から始めましょう・・・って感じで、爽やか清純系で行くか。
一人称は僕でいいか。
いや、俺でもいいけど、コイツ、気が弱そうだし、ちょっと脅したら素で泣きそう。
しくしくさめざめ、日本式に泣きそう。
お、メールだ。
あのクソ野郎からかな?
勘弁してくれよ、俺はもうそれどころじゃないんだ。
『てか俺も参考書のところにいるんだけど。普通に制服着てます』
はぁ?
来てやがるだ?
どこに?
参考書売り場ってここしかないよな?
ここには俺とマイハニーしかいないだろ、制服着てるのは?
・・・。
・・・・!?
・・・・・・・!!!
その時に俺を襲った衝撃には例えようが無い。
二時間ドラマで主役級のはずの船越が冒頭でやられ役としてあっ気なく死ぬぐらいの衝撃だ。
つまり、ありえない話だってこと。
やった!
俺の人生、捨てたもんじゃないぞ!
このチャンスは二度とないだろう。
てか、これ夢か?
夢なら覚めるな、せめて携帯の番号ぐらい聞かないと話にならん。
しかし、この心臓のドキドキ感は何なんだ。
いや、ここは俺から声をかけるべきだな、男として・・・。
お、目が合ったな。
ここはきっちり勝負顔しなきゃ。
「あの」
「あの」
おぉ、声も可愛い。
このまま押し倒してアフンアフン言わせたい。
いや、ここは我慢。
だいたい、こんな風に我慢汁が出そうな危機も俺は耐えてきたし、ここでも大丈夫なはず。
誠実に行けば何とかなるだろ。
さっきまでのこいつの評価は180度変わったな。
「えっと、あのメールしてた人?」
あんまり大っぴらに言えることじゃないのは分かってるから、一応、小声で囁きかける。
近くに行けるメリットもあるし、小声ってのは中々のナンパテクニックだよな。
「え、あ、はい。
そうですけど・・・」
おぉ、詰まってる・・・。
素直に可愛い。
『何も怖がること無いんだよ?』とか言ってギュッとしてあげたい。
そんな欲望を抑えて俺は言葉を続ける。
相手が詰まったときにフォローするのは出来る男の役目だ。
「良かった~。
本当に高校生じゃん。
僕は高二だけど、君は?」
まずは軽く自己紹介。
こうやって共通の話題を探すってのもテクニックの一つ。
「こ、高一です・・」
この人、相変わらず緊張してるのな。
まぁ、高三とかだと素直に引くよな。
てか、普通にしてたら中学生だろ?って思ってしまうけど。
やべぇ、速攻で触りたい。
俺、さっきまで女とやってたのに、この盛り上がりっぷりは何なんだ。
あぁ、もういい、とりあえず出よう。
こんな所で小声で話してたってどうしようもない。
「ちょっと出よっか?」
俺はその子の細い腕をぐいっと引っ張って外に出る。
この子の緊張をほぐすのが先だな。
開放トークその一だな。
いわゆる心開けば股開くって言うことわざどおりに頑張ればいいんだ。
でもまぁ、あくまで最初は真面目に誠実に。
怖がられるのが一番駄目だ。
「・・・あのさ、びっくりした?
僕も初めてだったから、まさか本当にいるとは思わなかった」
俺はちょっと笑って明るく話す。
俺の笑顔の作りこみは伊達じゃない。
毎朝、毎晩、そういった努力もしてるもんで。
「俺もかなりびっくりした・・。
絶対、嘘だと思ってたから・・・」
俺の笑顔に釣られたのか、一瞬だけハニーの顔が明るくなるのが分かった。
はにかんだ笑顔がそそる、そそる。
今もしも、世界に俺とコイツだけになったら、とりあえず三日三晩はセックスだけで生きていけそう。
いや、もっと行けそうだな、余裕で。
もっと、その笑顔が見たいから、もう少し続けよう。
「あはは。
でしょ?
僕も絶対怪しい奴だろうって思ってたもん。
でも、良かった、こんな可愛い人が来るって思ってなかったもん。
それに真面目そうだし」
ちょっとだけテクニカルなキーワードを紛れ込ませる。
『可愛い』とか、『真面目』とか。
相手の出方次第でその反応が分かる。
『可愛い』と言われて照れたりしてれば、内心、そう思っていると言う事。
真面目ってのは、まぁ、学校が進学校だからってのものあるけど、むしろ、初心かどうかをチェックするためのもの。
しかし、この子は何も返事をしない。
黙って下を向いちゃった。
これはマズイ。
確かに真面目って言うのは、その子のガードを挙げさせる効果を持つ。
『私は真面目なんだから、こんなことしちゃいけない』みたいに・・・。
しょうがないから話題を変えるか・・。
「んじゃ、お茶でもしよっか?」
俺はそう言って、その子を誘導するように半歩先を歩く。
これも重要なテクニック。
まさか男相手に使うとは思ってなかったけど。
さぁてどこに連れて行くかな。
お洒落さん御用達の和み系のカフェでもいいけど、男同士でソファに隣りあって話すってのも微妙だよな。
俺は全然いいけど、この人はまだ緊張してるみたいだし。
やっぱ、個室で話したい・・・。
と、なると行き先は決まってる。
俺様御用達の漫画喫茶、デラックスなカップルシートがあるお店。
「てか、あの、なんで漫画喫茶なんですか?」
まぁ、そこは突っ込んでくるよな。
でもそういう理由を求めてる時点で君は俺に負けてるんだよ?
本当に嫌ならその時点で帰ればいいんだから。
それにしても丁寧語ってのがいいね。
やばい、早く押し倒したい、触りたい。
俺のボルテージはどんどん上がるけど、いきなりそれじゃ絶対無理だろ。
それに、不安なあなたのためにはちゃんとした理由だって考えてあるし・・・。
「う~ん。
だって、僕らみたいな趣味の話って中々大っぴらに出来ないじゃん?
それとも、僕と一緒じゃ嫌・・・かな?」
哀願するための顔ってのも練習しておいて良かったな。
本当は対お姉さまの特別兵器だったけど、男相手にも効くかも知れんし。
俺にそういわれると、この子は黙ってしまう。
いいねぇ、そういう初心なの大好き。
でも、ここはちゃんと間を入れてあげるからね、お兄さんが。
「んじゃ、僕、ジュース持って来るね。
メロンソーダでいいかな?」
あんまり緊張させると帰っちゃうかもしれないし、というわけで俺は席を立つ。
それと、こうやってどうでもいいことをしてあげることって凄く重要。
たかだかジュースを取ってきてくれたぐらいでも親近感はアップするし、どんな人でも親切な人には好感を持つものだから。
「はい。お待たせ。
んじゃ、もっと君の事知りたいな。
身長とかいくらぐらいなの?」
そんなわけで、二人の距離はぐっと接近。
あぁ、もうとりあずキスしたい。
物事には順番があるから一歩一歩マス目を埋めていくようにゲームを勧めていくしかないけど。
「え、あ、165です。」
165か。
俺としてはもっと高い子が好みなんで、今度靴でも買ってあげようかな。
上げ底にすれば170は行くだろうし、それで買い物とかいければ最高。
「って、距離、近く・・ない?」
マイハニーの眉間に皺がよっている、
ありゃりゃ、ちょっと困らせちゃったかな?
でも、ここで引き下がるほど、俺は甘くないよ。
それに距離感は段々慣れてくるものだから、今だけは我慢してね。
「あ?そう?
僕は身長175ぐらいかな。
調度10cmぐらいの差だね。
名前聞いていい?」
ま、向こうは人の話を聞いてないとか思うかもしれないけど、それも計算済み。
こちらは矢継ぎ早に質問して相手のペースを狂わせればいいの。
それで、ちょっとおかしくなったところで次のアクション。
いわば積み将棋とかと同じで全て計算ずく。
そう言えば、小学生までは囲碁とかやってたし、俺にはそういう悪魔的な素養があったのかもな。
「俺は、れ、れおな、ですけど・・・」
れおなか・・。
多分、玲於奈って言う漢字かな。
こいつの容姿にぴったりの名前だ。
親もきっと、あまりの可愛らしさにその名前を付けたんだろうな。
さっきの女じゃないけど、こいつだったら名前を言いながら余裕でフィニッシュできそう。
鬼畜だと思うけど、そろそろ次のアクションを起こすかな。
俺の我慢も限界に近いし、桃色の唇だって熟れ時だろうから・・。
ま、向こうも出会い系使って男にメールしてきた時点でそういう毛があるわけだし、文句も言えないだろう?
「そうなんだぁ、可愛い名前だね
僕は、ゆうきだよ。
よろしくね?」
そう言うと、俺は我慢できなくて彼の唇にキスをする。
彼の方は準備できていたのか、不意をつかれたのか、思ったよりも何の抵抗もなく、それに応えた。
ま、あくまで初めてのキスだし、ほんのり軽くさらっとした奴だから怒んないでしょ?
それでもプニプに感は堪能できたし、俺はかなり幸せになっている。
さてと、この子をどう料理しちゃおうかな?
あれ?脅えてるじゃん?
喜んで無いってのは結構な見込み違いだけど、女の子でまだまだ初心な子にはよくある話か。
やっぱり、コイツ童貞確定だな。
と、なると初めての男は俺ってことになるな。
あ、でもその場合、童貞だけど処女じゃないってことに・・。
「おっぉぉっぉっ」
俺がそんなことを考えていると、おかしな声を出して、玲於奈はカップルシートのパーティションにまで後ずさる。
ひょっとして嫌だったんだろうか?
いや、顔は真っ赤だし、恥ずかしがってるだけかな。
まぁ俺が出口を塞いでいる以上、彼はかごの中の鳥、絶対に逃げられないんだけどね。
ごめんね、鬼で。
でも俺ってそういう性格だからさ。
「・・・俺じゃ駄目かな?」
もう僕とか演技するのはめんどくさい。
散々我慢しすぎたせいで俺のそっちもパンパンだ。
俺は追い込むようして、玲於奈を抱え込むと、その細い首筋にキスをする。
男の癖にいい香りがして、それ以上するつもりは無かったのに、どうしても舌が動いてしまう。
慣れてるってのはこういう時に駄目なもんだな。
「ひゃ」
俺が首筋を舐め始めると、玲於奈は驚いたような声を出す。
いいね、それ。
てか、感じてる声じゃん、普通に。
彼の様子に俺の中の理性のタガが外れそうになって、舌がレロレロ動いてしまう。
しかしよく考えたら、こういうことを初めてされるのって怖いのかもしれないな。
ちゃんとこっちの気持ちも伝えとかないと。
「可愛いよね、俺、ちょっと本気になりそう」
そう、俺はあくまで本気だ。
しかも、多分、俺は本気で惚れてしまってそう。
俺の根性は初恋をするには汚れきってるけど、それは今まで相手がいなかっただけで、今回ばかりは結構本気。
「や、や、やめ、やめ」
あれれ、さらに事態は悪化してない?
なんか異常に怖がってるし、俺のことをぺちぺち叩いてくるんですけど。
まぁ、力も入ってないし、好意の表れかもしれないけど、あんまりオラオラの強引で行くのも考え物だな。
窮鼠猫を噛むって言う言葉もあるし、あんまり追い詰めると何されるか分からないからな。
もしここで、『このホモ野郎』なんて叫ばれたら、襲ってたのが完全にばれる。
だって、玲於奈の容姿から考えると、俺が100%容疑者になってしまうだろうし。
「ごめん。
なんか強引な感じになっちゃったね・・・。
本当にゴメン。
俺はただ君の事知りたかっただけで・・・。
てか、俺と友達になってくれない?」
ここはちゃんと謝っておこう。
とりあえずガードが固いのは分かったし、それに友達からなら発展する可能性もあるはずだ。
っていうか、健全な彼女ってこんなもんなんだろうな。
こいつになら即セックスとかそんな贅沢はいらない。
とりあえず、一緒にいてキスとか出来ればいいや。
おし、男の土下座を見せてやる。
「本当に、もう変なことしないから・・・。
何か俺、お前に惚れたっぽいし・・・。
俺、ナンパしてても色恋使わない奴だから、これはマジで惚れたんだってば。
本当にゴメン!」
俺はプライド高いから土下座までして何かを頼むのはこれが初めてだった。
ちゃんと、本気で好きだってことも伝えておかないといけないよな。
俺はナンパで『好きだ』って言う事はない。
名前は嘘を教えたりするけど、『好きだ』って言葉を使うとめんどくさい事が多いから。
それに変なこともなるべくしないってことも。
さぁ、届け、俺の思い!
「友達だったらいいけど・・・」
相変わらず下を向いたままだったけれど、玲於奈は俺のことを許してくれた。
友達ってのは、健全な関係ってことだろ?
まぁ、当面はキスぐらいまででも十分です。
一ヶ月で20人ぐらいだったナンパのノルマも、電話するだけで金と体を差し出してくれる女の子のメモリーも速攻削除します。
それぐらいの価値はあると思う。
逆に男でこんなに可愛いほうがレアだし、付き合ってみても面白いんじゃないか。
「まじで?
ありがとう!
俺、今、すげぇ嬉しい。
やったぞ、俺!」
俺はそう言って、宙に拳を突き上げる。
俺は自分の勝利を確信した。
多分、玲於奈も俺のことが嫌いじゃないんだ、ってか、好きなはず、好きに決まってる。
まずはこの流れをどういう風に持っていくかだ。
俺好みにするために服を買ってあげようかな。
勿論、男物でいいんだ、女装とかしてなくたって十分燃える。
やっぱりかっこいい服とか着てて欲しいからな。
俺の玲於奈にふさわしい格好をしてほしいし、後は色々玲於奈のためにすることがあるはず。
俺って結構尽くすタイプだったのかもな・・・、今まで散々尽くしてもらうことばっかりだったけど。
「んじゃ、行こうか?れおなちゃん。
今から、とりあえずミッドウエストでビッケンバーグの靴を見て、それからカフェでお茶して・・・」
そうと決めたら善は急げ、早くデートプランを考えないと。
靴はバニスターでもクローンでもいいんだけど、ビッケンの靴で5cmばかり上げ底にしてみよう。
あ、タイシノブクニもありだな。
それにしても、玲於奈は上の空で、ぽか~んとしている。
俺がこんなに尽くす宣言してんるんだから、もうちょっと喜んでくれてもいいのに。
おいおい、そんなに隙だらけにしていると襲っちゃうんだが。
「ん?返事は」
俺は玲於奈の細い首筋に息を吹きかける。
「ひゃあ」
と、声をかけて仰け反る玲於奈。
いやぁ、可愛い可愛い。
俺はその反応に心を弾ませる。
でも、一瞬だけ玲於奈の眉毛がぴくっと動くのが確認できた。
ひょっとしたら結構外でいちゃつかれるのが苦手なのかもしれない。
でも、そんなことはお構いなし。
そういう訳で今度は玲於奈の腰に手を回す。
制服を結構ぶかぶかに着ているから分からなかったけど、抱き心地の良さを確信する。
「まだ返事無いけど?」
こうやって男をからかうのって面白いもんだな。
顔を真っ赤にしたりして可愛すぎ。
俺の心臓は初めて経験するときめきで結構高鳴っているのに、玲於奈は何故だか俺から数メートル離れてしまう。
ちょっとやり過ぎたのかもしれないな。
「てか、俺って、全然可愛いとかそういう部類の人間じゃないんで。
普段はもっとガサツだし、普通の男なんだが。
女も好きだし」
あ、なんだそんなことか。
余裕でオッケーでしょ。
てか俺も女は好きだし、女の経験なら俺の方が上だろうから玲於奈が女が好きなのは問題ない。
要は俺だけを好きになればいいのだ。
性格がガサツだろうが、何だろうが、俺の好みに躾ければいいんだ。
それに自分が一から開発できるし、あぁ、やべぇ、興奮してきた。
「知ってる。
・・・だが、それがいい。
敵は強いほうがオトし甲斐があるって言うか」
俺の返事はそんな感じ。
玲於奈はそれを聞くと、信じられないような顔をして空を仰ぎ見ている。
俺の純愛が届いたのかも知れんし、もしかすると半ば呆れてるのかも。
まだ俺のことは全然教えてないし、俺たち二人はもっと色々とお互いのことを知る必要がある。
ま、 俺にとって玲於奈が何者かなんてどうでもいいんだけど。
それからの玲於奈は案外素直で、携帯の番号とか家の電話番号とか、挙句には住所まで俺に教えてくれた。
何か普通にお願いすれば、嫌々ながらも教えてくれるんだよな。
最初の返事は『絶対、嫌だ』とか言うくせに、押しに弱いのか、もしくは俺の押しが強いのか。
あれ?また、コイツ上の空だよ、茫然自失ってやつだ。
携帯の番号を教えたのがそんなに気がかりなのかな?
「ねぇ、聞いてんの?」
今度は玲於奈の耳に息をふぅーっと吹きかける。
本当はその耳たぶを噛んでやりたいのだが、今度の楽しみに取っておこう。
「どこで覚えたんだ、そんなテクを。」
玲於奈は男の子っぽく、憮然とした態度で言うが顔を赤らめているし説得力がない。
「俺はお前より一年長く生きてるからな。
ま、もっと楽しい事もできるけど?」
俺は大人の余裕でそれをさらりと返す。
玲於奈には俺の過去の事はできるだけ黙っておこう。
別に女たらしの鬼畜人間なんて言われるのは屁でもないけど、玲於奈と俺の関係には不必要な情報だ。
それに付き合う相手は謎が多いほうが面白いだろ?
俺はにんまり笑って、玲於奈の腰に手を回す。
玲於奈は再び俺の手を振り払って数メートル先をダッシュする。
その動作が小動物みたいで可愛いんだよな。
しかも、俺のことを結局は待ってくれているのか、数分後には並んで歩いてくれるし。
まるでブーメランみたいな感じで、笑えるやら和むやらでお腹が一杯になりそう。
強気なんだか、弱気なんだか分からない性格してるな、俺の玲於奈は。
玲於奈の外見は天使とかそういう感じじゃない。
どっちかというと日本的な感じだし、黒髪とか切れ長の瞳とか透き通る肌とか、あぁ、そういう所に俺は惹かれてるのかな。
俺が西洋系の人形なら玲於奈は日本系の人形か。
ま、そういう恋愛も悪くないかもな。
「れおなって髪の毛、サラサラなんだな?」
玲於奈の黒い髪の毛はサラサラで、手の中で絹のような感触を残しながらほどけて行く。
10代は女の子よりも男の方が髪の毛は痛んでないことが多い。
和むなぁ、これは和むわ。
今まではこんなことしてるカップル共を見てるだけで蹴りを食らわしたくなる気がしてたけど、今、分かった。
別にセックスしてなくても髪の毛触るのは和むんだ。
玲於奈は髪の毛を触り続ける俺の手をバシッと叩いて向こう側に行く。
玲於奈には出会い系を使って偶然出会えたわけで、それなりに俺はその幸運に感謝している。
でも、次に使うことはないだろうな。
あんなに緊張するのは懲り懲りだ。
それに、俺にはもう傷を舐めあう奴らが必要なくなったわけで、玲於奈といるだけで十分幸せ。
暗黒面に堕ちていた俺を引き上げてくれたのは玲於奈な訳で・・・・。
あ、まだまだ俺の性格は余裕で暗黒面側なんだけど、そればっかりは簡単には直せないだろう。
俺の髪の毛を触る手を振り払うと、玲於奈は怒ったように俺の少し前を歩く。
やべぇ、その小さい尻を今この瞬間、触りたい。
腰に手を回す振りしてっと・・・。
あれ、何でそんな怒ってるの?
ひょっとしてばれてたりして?
ま、いくら怒っても俺の下を離れる事は許さないよ、絶対に。
あんなメールをしたのが運の尽きだったわけだ。
☆後書き☆ お読みくださってありがとうございました!
こういう視点チェンジの手法は連載中のPsalmでも行ってますが無駄に手間がかかって大変です。
18禁の最終話を私のHPにてアップしましたので、もしよろしければご覧下さい!
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