玲於奈◇◇◇◇◇◇
そういうわけで、退屈しのぎに出会い系で男友達を探しているわけだが。
問題なのは俺も男というわけで。
あぁ、分かってる。
突っ込みどころ満載って言うんだろう?
分かってるってば。
でもまぁ、普通に男子高校生してても、そういった意味の男友達なんていない訳で。
かっこいい奴や可愛い奴が同姓相手に熱いラブを繰り広げるなんて、どんな都市伝説だ。
現実にはそいつらにはキッチリ彼女がいて、普通に楽しくあふんあふんやってる訳で。
それに俺の通ってるのは普通に共学だし、男子校ではないし、全寮制でもないし、おかしな雰囲気が起こりようがない。
こうでもしなきゃ、出会いなんてねぇってば。
で、問題はどういった出会い系にするかってことだ。
『そういった人たち向けの雑誌に載ってる出会い系とかでいいんじゃね?』
と、安易に思った俺はとりあえずそれを本屋でこっそり立ち読み。
勿論、こんなところを他人に見られたらヤバすぎるわけで、何らかの防御策を講じる。
結局はヤングジャンプにそれをはさんで読んだわけだが・・・、ゴメン、正直、ごっつい野郎の筋肉とか無理。
汗の臭いとかパス。
あ、そっか、男って言っても、俺の求めてるのはこう言った部類の野郎じゃねぇんだな。
もっと線が細くて、もっと可愛らしい感じで、美容師系の爽やかな人ならヒゲもOKだけど、普通に『兄貴ィ!』みたいな汗臭いののはまじで勘弁。
いや、馬鹿にしてるんじゃないけど、俺にはまだ早すぎるんだろうという事で終了。
仕方ねェから普通の出会い系で探してみるか。
って、・・・普通の出会い系って何だよ?
とりあえず、この間、そういう絡みで彼女作った奴に聞いてみる。
なるほど、今はこれが熱いのな、『時々怒気土器出会い』。
ときどきどきどきであい・・・?
正しく読んでいるのか読むのか分からんが、途中で怒ってるのは何故だ?
そこはかとなく縄文とか弥生の臭いもしてきそう。
ま、奴が熱いってんならそれもいいかも。
よくよく考えれば、俺は女にも興味があるのだ。
女とセックルしたことはないが、一応、興味はあるぞ、乳とか。
えぇ、ありますとも乳があるなら女でも可。
よし、そんじゃ、まずは女で童貞捨ててから考えよう。
男相手にするってのはもっと難しいだろうから。
・・・この考え方は非常に間違ってるな、正直、狂ってる。
でもまぁ、一度しかない俺の人生だ。
アストロ球団で磨いたこの命、男ならやってやれっていうわけで。
それにしても無数の書き込み。
半端ねェな、と思うけど、友達いわく、8割が業者だってことらしい。
可愛い子は怪しいとかいうので、色んなページを見てみよう。
・・・う~む、エロイ。
女はエロいの多いね。
何か盛り上がるわ。
てか、この高揚感は何なんだ?
野郎友達を探す旅がヤリ友達を探す旅になってんぞ。
「ん?」
無数にある書き込みの中から俺を唸らせる渾身の一作が見つかった。
これで男にアピールしようってんだから大したもんだぜ。
『名前:ゆうき 年齢:18歳 住所:渋谷区
当方、男ですけど、それでもOKって人友達になりまし』
当方なんて、今日び『バンドやろうぜ』でも使わねぇぜ(要確認)。
いや、突っ込むのはソコじゃない。
『当方、男』って何だよ?
あぁ、これが友達の言ってた釣りって奴か・・・。
写真もついてないし、多分、メールとかの個人情報を取り出すつもりなんだろうな。
あ~、恐ろしい。
でも、こんなんで釣れる奴いるの?
よし、俺も釣られてやろう。
こう言った悪乗りをするのが俺の悪い癖。
この間も悪乗りしてスケボーでコンビニ入ったら、お約束どおり、おでんの中に顔を突っ込んで弁償させられた。
鰹出汁が素で熱かったぜ。
『名前:えいやぁとぉ 年齢:20歳 住所:渋谷区
こんちは、俺も渋谷の高校通ってるよ。
よかったら話すで』
ぎゃはは、これで返事が来たら、お笑いもんだな。
年齢が20歳なのは、如何にも馬鹿にしてるみたいで悪いけど、このサイトでは18歳以上しか選べないんでしかたねぇ。
別に実年齢入れる必要もないんだけどな。
ま、変なメールが届きそうになったら、すぐにでも違うアドレスに変えればいいや。
次のアドレスは『ORENO_SHAKKIN_ZENBUDE_NANBOYA』に決めているのだ。
う~ん、フォーキー過ぎて60過ぎのおっさんぐらいしか元ネタわからねぇだろうな。
・・・って、おい、来たよ?
新着メール一件だよ!。
ま、どうせ迷惑メールだろ?
こんなところで期待するのは馬鹿で阿呆っていう寸法だ。
慌てる乞食は貰いが少ない、ここで焦ってはならんと思いながらも携帯をすばやく開けてチェック&チェック。
『メールありがと☆一番、まともそうだから返してみました。
僕も渋谷で高校生してるよ?
てか、今も渋谷にいる?』
うっひょぉい、マジかよ、何だこの流れ?
新手の詐欺事件に発展するんじゃねぇだろうな?
ゲイを狙った男霊男霊詐欺とか、おぞましい名前がついてる奴だったりして。
でもまぁ、ここまで来たからにはやるっきゃない。
話のネタに一発かまして見るぜ。
『だいおう?
いるいるいます、いるいます。
今はPBCでGROOVE読んでるけど』
Grooveっていうのは、テクノとかそういったコンピューター系の音楽を作ってる人が読んでる雑誌。
俺の兄貴がそういった仕事をしてる絡みで俺も読むようになった。
ま、16歳が読むには早いけど、たまに面白い情報がある。
俺はテクノって言うか、ヒップホップが好きなんでどうせ調べるのはサンプラーとかの話題が多いんだが。
『あはは、だいおうって何?
なんか面白そうな人だね。
んじゃ、今からパルコ行きます。
至って普通のネコ型ロボットなんでがっかりしないで下さいね』
って、おいおい、コイツ、正気か?
てか、本当に来るのか?
モノごつっい兄やんが来たらどうすんだ、俺?
五体満足でおうちに帰れるか分からんぞ・・・。
あ、そっか、とりあえずGroove以外の場所で待ってりゃいいんじゃん。
んで、相手の顔を見て判断すれば・・・。
ひょっとしたら、宗教とか超怪しい奴かもしれないし、警戒しとかなきゃ話にならんぞ。
しかし、普通のネコ型ロボットって何だよそのセンスは?
まさかスリーサイズがドラ○もんってわけじゃないだろうな。
しかもアイツの体重はめちゃくちゃ重いんだぞ(ドラ○もん百科より)。
・・・よし、来るなら来てみろ。
おかしなダンスを踊るような奴なら速攻逃げてやるぜ!
『あー、了解。
俺は全然、面黒くない人なんでそちらこそがっかりしないでな。
いや、まじで普通ですってば。
着いたら教えてくだry』
こんなにやる気のないメールで大丈夫なのか分からんが、まぁ話のネタだな。
それに俺自身、今日は制服着てるし、本当に会える勇気があるのか分からない・・・。
奴の返事が来るまで、とりあえず乙会の参考書でも物色するか。
模試も近いし、あぁ、くそ、進学校なんてクソ食らえだ。
・・・
・・・20分たったけど、何の連絡もねぇ。
まぁ、最初から分かってたけど「釣り」ってわけだな、俺は華麗にスルーというわけだが。
でも本当は、どきどきして損したって思ってる自分がいるのも事実なわけで。
ちょっとだけ見てみたかった・・。
不謹慎な事は分かってるけどさ。
ま、何事も無く終わるってのもいいことだ。
いきなり男相手に出会い系なんていうのはハードル高すぎたかもしれないな。
だいたい、リスクが大きいんだよ。
たかがヤルヤラナイのためだけに、自分がソッチ系の性癖があるなんてばらされてたまるかって奴だ。
参考書を物色するのも飽きたし、段々、俺の心も覚めていくのが分かる。
家に帰って、野郎友達とスケボーでもするか。
せっかくの土曜の昼下がりもこれにて終了って奴だな。
あぁ、何かけだるいからグラフィティ描きのNocchiさんに会いに行くか。
あの人、変人だけど、中々面白い人だし。
ん?
何だ?
この隣の奴・・・。
いつの間に俺が最後に読もうとしてた、『ボーイズラブで学ぶ日本史入門』を・・・。
しかし、あれってBL小説って奴じゃないのか?
そんなの受験参考書の棚に置いてていいのかよ?
あ、この制服は我が校のライバルの奴じゃねぇか。
進学校だけど坊ちゃんばっかりで何か鼻持ちならねぇ連中なんだよな。
ま、こいつは身長は普通ぐらいだけど、色白で弱そうだから許すけどな。
それにしても高校生でこんなに白いのって恥ずかしくないのかね。
ま、俺も人のことは言えないが、スケボーは夜やってばっかりだから日焼けしないんだわ、これが。
お、こっち見たぞ・・・。
さっと、参考書を元の位置に戻しやがった。
やべ、じろじろ見てたのがばれたかな?
それにしても、・・・なんて顔してやがるんだ、コイツ。
一瞬、背筋が凍ったぜ。
綺麗な顔してやがるとはコイツのことだな。
俺も外見は悪くないと勝手に自負してたけど、こいつには負けるな。
なんかオーラが違うもん。
少しだけ垂れた瞳は大きくて、唇は元々そうなのか知らないけど、へにゃるんと笑ってるみたいな感じだ。
こんな奴とお友達になれれば俺の高校生活ハッピーなんだろうけどな。
変な意味じゃなく、普通に友達ってだけで十分幸せなんだが。
おっと、じろじろ見るのは危険だ・・・、そろそろ帰ろう。
『着いたんだけど・・・。
参考書売り場のところで制服着てる奴です。
気に食わなかったら帰ってよし』
その時、ケツに氷のツララをぶっさされたような恐怖が俺を襲ったぜ。
何故かって?
参考書売り場にいる『制服着てる奴』は俺を含めて二名しかいねぇんだわ。
つまり、この坊ちゃん高校の奴が、俺のメールしてた奴だったわけで・・・。
すまん、正直マジだとか殆ど予想だにしてない展開だった。
てか声かけるの怖いのよ・・・。
俺って、内弁慶だから心の中では饒舌だけど、初対面の人に馴れ馴れしく話しかけらんねぇんだわ。
あれ?内弁慶の使い方おかしくないか?
ま、そんなんはさておき、こんなときは文明の利器、メールにてお願い。
あぁ、すんません、ヘタレでゴメン。
『てか俺も参考書のところにいるんだけど。普通に制服着てます』
うぉい、アイツが携帯を確認してやがるのがリアルに分かる。
やばい心臓がばくばく言ってやがる。
俺はこの緊張の渦の中で死ぬかも知れん。
あ、やばい、目が合ったし、話さなきゃ・・・。
「あの」
「あの」
向こうも俺と同じタイミングで声を出す。
見事にハモっちまったじゃねぇか。
しかもやばい事にはお互いに言葉が後に続かねぇというわけで。
何なんだ、この数十年前のお見合いみたいな展開は。
誰か俺を操っている奴がいるのなら、今すぐ止めろ、速攻止めれ。
「えっと、あのメールしてた人?」
コイツが沈黙を破り、小声で俺に聞いてくる。
ヤバイ、この男はヤバイぐらいにかわいいぞ。
まるで天使か何かの生まれ変わりだ、きっとそうに違いない。
こんな男を傷つけちゃいけない。
いいか、正直にゴメンなさいするんだ、いいな?
俺は正直、Youをからかってました、ごめんなさいだ。
ジャニー並みにYouをキメてやれ!頑張れ、俺!
「え、あ、はい。
そうですけど・・・」
やべぇ、詰まった!
昼に食ったジャージャー麺のお陰で、俺って口臭くないか?とか気になり始めて、もう何も言えないってば。
「良かった~。
本当に高校生じゃん。
僕は高二だけど、君は?」
なんていうか、この口調はいかにも育ちが良さそうだな。
地方生まれで下町育ちの俺とはかなり違うぞ。
「こ、高一です・・」
しかも、俺の方が年下だよ。
俺も素で答えるなよ、高三ですって言えば良かったじゃないか。
しかも俺はなんで丁寧語使ってんだよ?
「ちょっと出よっか?」
ぐいっと腕を引っ張られ、そのまま坂を下る。
やばい、このままヤクザに引き渡されるんじゃないだろうな?
気まずすぎる展開だ。
よし、逃げよう。
今ならまだ奴らの包囲網を突破できるやも知れぬ。
これがラストチャンスだ!
「・・・あのさ、びっくりした?
僕も初めてだったから、まさか本当にいるとは思わなかった」
俺の決心はいきなり揺らぐ。
奴のはにかんだ笑顔が本当に可愛いかったから。
こういうのが女顔なのかわかんないけど、俺みたいな感じじゃないな。
ネコ型ロボットってはさもありなんって感じだ。
しかし、こいつの言葉を額面どおり信じていいものかは不明だ。
いつもこうやって金を巻き上げているのかもしれないし。
適当に相槌を打つのが一番だな。
次に隙が出来たら逃げればいいわけだ。
「俺もかなりびっくりした・・。
絶対、嘘だと思ってたから・・・」
ま、今でもそう思ってるんだけどな。
「あはは。
でしょ?
僕も絶対怪しい奴だろうって思ってたもん。
でも、良かった、こんな可愛い人が来るって思ってなかったもん。
それに真面目そうだし」
いや、それはこっちの台詞だって。
俺は全然可愛くないってば。
顔は男前な方だよな?自己評価だけど。
ま、確かに背は高くないし、肩幅もないし、筋肉もあんまりないし、色白ではあるが、性格は余裕で男そのもの。
もう俺の男らしさと言えばさっき読んだ、椿族どころじゃねぇぞ。
・・・いや、それほどじゃないな・・。
結構女々しいところもあるんだよな、俺ってば・・。
それに、普段は夜中に警察官のおっさんに声かけられそうなほどスケボーにはまってる、やんちゃ盛りの16歳なんですが・・・。
試験でいい成績取れたから進学校に行ってるけど、決して真面目ではないぞ?
「んじゃ、お茶でもしよっか?」
なんか、相手のペースに乗せられている気もするけど、とりあえず出方を見よう。
普通にお茶するんなら他に人もいるだろうし、もし、怪しいところに連れて行かれそうになったら逃げりゃいいんだわ。
・・・で、なんで漫画喫茶なんだよ?
しかもカップルシートってのは。
「てか、あの、なんで漫画喫茶なんですか?」
ここはきっちり突っ込まねば。
一応、年上だから丁寧語だ。
「う~ん。
だって、僕らみたいな趣味の話って中々大っぴらに出来ないじゃん?
それとも、僕と一緒じゃ嫌・・・かな?」
そういう涙潤ませるの無しで。
返事が返せないじゃん。
「んじゃ、僕、ジュース持って来るね。
メロンソーダでいいかな?」
って、コイツ、俺の返事は聞いちゃいねぇよ?
どんだけマイペースなんだ。
顔が可愛いから許すとして、人間として間違ってるぞ。
きっとお坊ちゃんだから甘やかされて育ったんじゃないか?
「はい。お待たせ。
んじゃ、もっと君の事知りたいな。
身長とかいくらぐらいなの?」
すんません、なんか近いんですけど・・・。
その距離感おかしくないか。
あなた様の髪の毛あたりから非常にいい匂いがしてくるんですが。
多分、ディオールですね、それ。
「え、あ、165です。」
あー、俺は本当に中途半端な身長だな、おい。
あと10cmは欲しいですぜ。
コイツなんか、可愛い顔してるくせに175はありそうだし、世の中間違ってやがるぜ。
「って、距離、近く・・ない?」
ここはちゃんと俺も突っ込まねばな。
お坊ちゃんは普段は甘やかされているせいで、他人との距離感覚が常軌を逸してるのかもしれんし。
「あ?そう?
僕は身長175ぐらいかな。
調度10cmぐらいの差だね。
名前聞いていい?」
コイツ、人の話をはなっから聞いてねェな。
また近づいるし。
「俺は、れ、れおな、ですけど・・・」
緊張しているのか、嘘がつけない。
洋でも洋一でも直也でも高志でも適当な名前を言えばよかったのに。
わざわざ、おふくろさんとお父さんががノーベル賞取った学者にあやかってつけてくれた俺の大事な名前を言ってしまうなんて。
馬鹿か俺は。
「そうなんだぁ、可愛い名前だね
僕は、ゆうきだよ。
よろしくね?」
『ん!?』
って、いきなりソレか。
何が起きたんだ、俺、ってか、何をしやがるんだお前!
コイツいきなり俺にキスをしてきやがった。
いや、多分、別に嫌じゃないけど、長期的に見ればの話で。
これが俺の生まれてはじめてのキスだったんだぞ。
・・・あの~、何でそんなに何の抵抗も無いんだ、こいつは?
無理矢理キスをしてきたってのに「へへぇ~」などと言って笑ってやがる。
「おっぉぉっぉっ」
妙な声が俺から出る。
恐らく恐怖を前にしたときに自然と出る断末魔の叫びに近いものだ。
まるで貞子か伽耶子に会ったときの役者のように俺は後ずさりする。
しかし、カップルシートの席は狭くてすぐに行き止まりになる。
しかも出口は奴の長い足が塞いでやがる。
「・・・俺じゃ駄目かな?」
なんか、さりげなく一人称変わってますよ、旦那。
てか、嫌とかそういうわけじゃなく・・・。
ん、もしかして、俺が襲われてんじゃないの?
この状況は・・。
いや、待て、俺は確かに身長は低いけど低すぎるって方でもない。
どっちかというと俺は上の方が良いわけで、痛いのは嫌だ。
そりゃそうだろ常識的に考えて。
って、おい、再び来たぜこの野郎。
「ひゃ」
いつの間にか首筋にそいつの舌が這ってやがる。
まるでなんか触手系のエロアニメだ。
てか、淫獣大決戦とか言ってる場合じゃねぇ、やばいぞこの舌、やばいってば。
生まれて初めての貞操のピンチだわ、お母さん。
しかも俺、「ひゃ」なんてそこらの女も言わない台詞を口にしちまうし・・・。
「可愛いよね、俺、ちょっと本気になりそう」
なんなくていいってば、お兄さん、ちょっと止めろ。
ほら、果汁0%のメロンソーダでも飲んで落ち着こうよ。
君は輝かしい将来をたった一度の過ちで棒に振ろうとしてるんだぞ?
「や、や、やめ、やめ」
やばいってば、俺、声震えてるし、こんな恐怖を感じたのは生まれて初めてだ。
このままじゃ、ヤられる!
いや、もしこの話を聞いてる奴がいたら「ちょっwww」とかって言うかも知れないけど、冗談じゃねぇぞ。
よし、こいつのドキャンタマに一発お見舞いして帰ってくれるわ。
いち、にぃ、の・・
「ごめん。
なんか強引な感じになっちゃったね・・・。
本当にゴメン。
俺はただ君の事知りたかっただけで・・・。
てか、俺と友達になってくれない?」
この兄やん、完全に口調が違ってやがるよ。
あぁそうか、パルコの『僕』はフェイクだったのか。
てか、いきなり下手に出られてもなぁ・・・。
「本当に、もう変なことしないから・・・。
何か俺、お前に惚れたっぽいし・・・。
俺、ナンパしてても色恋使わない奴だから、これはマジで惚れたんだってば。
本当にゴメン!」
今度は向こうが謝ってくる。
しかも椅子の上でご丁寧に土下座という趣ですよ。
何があったのか分からんが、俺を解放してくれる事に疑いはない。
まぁ、俺も無理矢理変なことされるのでなければ、そういった友達がいることにやぶさかではない。
・・・てか、ナンパしてて色恋って何?
意味不明だけど、今度聞けばいいや。
「友達だったらいいけど・・・」
しかし、俺の心はまだまだ動揺しているようで言葉は多く出ない。
「まじで?
ありがとう!
俺、今、すげぇ嬉しい。
やったぞ、俺!」
そいつはそう言って、宙に拳を突き上げる。
本当にコイツ大丈夫なのかな?
何か悪いもんでも食べたのではなかろうか?
最近は色んな悪いものが海外から輸入されているって言うし。
多少、心配になってしまう。
「んじゃ、行こうか?れおなちゃん。
今から、とりあえずミッドウエストでビッケンバーグの靴を見て、それからカフェでお茶して・・・」
さっきの一人称が「僕」だった頃とは大違いの展開で、俺は何が起きているのか分からない。
ミッドウェストってTシャツ一万円の世界の店だよな?
俺とは趣味が違いすぎるぞ。
でも、まぁ、とりあえず、・・・今からデートみたいだな・・・。
デート?
う~ん、どうなんだろ?
コイツとなら歩いててもいいけど・・・。
俺はこれからどうなることやら想像がつかない。
って言うか、俺がやっぱり・・・その、あっちの方なのか?
まじで?
いや、ゆうき君の顔とか好きだけど、正直、自分がソレって言うのは・・・。
「ん?返事は」
奴は俺の首筋に息を吹きかける。
『天下の往来でこんなことをしてたら変に思われるだろうが!
このトンチキ野郎!』
と、怒ってやりたくとも、俺は「ひゃぁ」だの情けない声を上げるしか出来ない。
まずいぞ、このままじゃ俺の役割が決まっちまうぞ。
「まだ返事無いけど?」
今度は奴の長い手が俺の腰に絡まる。
って、止めれ。
女子どもが見てるじゃねぇか。
慌ててその腕を振りほどくと俺は数メートル距離を置く。
「てか、俺って、全然可愛いとかそういう部類の人間じゃないんで。
普段はもっとガサツだし、普通の男なんだが。
女も好きだし」
彼に気に入ってもらえたのは嬉しいのかもしれないが、そこらへんははっきりしとかなきゃいけない。
少々惜しいが、これで終わりだって全然いい。
むしろ幻滅して帰れ、このセクハラど変態は。
「知ってる。
・・・だが、それがいい。
敵は強いほうがオトし甲斐があるって言うか」
・・・こいつは相当にヤバイ。
俺の尊敬する真の漢(おとこ)、前田慶二の真似事してやがる・・・。
奴のきらきら輝く大きな瞳は生粋のいくさ人の目だ。
てか、一体何者なんだ?
なんで男っぽい俺の性格がいいっていうんだ?
理解不能すぎるぜ、俺の好みはPsalmに出てくる佐藤初とかなんですけど・・・。
俺の受難はたった一回の人生の過ちから始まった。
あの時、こいつにメールしたのが本当に悔やまれるが、今では後の祭り。
携帯番号どころか家の電話番号まで教えちまった・・。
何で教えてんだよ、俺の馬鹿!
「ねぇ、聞いてんの?」
今度は俺の耳に息をふぅーっと吹きかける。
あまりの気持ちの悪さに「やっ」などと再び情けない声を出す俺。
背筋がぞくっとしちまったわけで、俺の体も、もっとしっかりしろよ。
堪忍袋の緒が切れそうな俺は
「どこで覚えたんだ、そんなテクを。」
などとぶっきらぼうに聞くが、
「俺はお前より一年長く生きてるからな。
ま、もっと楽しい事もできるけど?」
との大人の返事。
完全にはぐらかしてやがる。
って、渋谷なんかで男の腰に手を回すのは止めろ。
人口密度が日本有数なんだぞ、ここは。
ひょっとしたらテレビに映ってるかもしれないじゃねぇか
こいつ外見は天使みたいなのに、性格は悪魔で・・・。
それでも俺が上なら許せるけど、俺はなぜか下に役割分担が行きそうな悪寒・・・。
「れおなって髪の毛、サラサラなんだな?」
道すがら、奴が俺の髪の毛を撫でる。
何かいかにも恋人同士って感じだな。
・・・くそ、不覚にも男相手にドキッとしたじゃねぇか、この野郎。
どうしてくれるんだ。
このままじゃ、変な気分になりそうで、やっぱりヤバいんじゃないか・・・。
あぁ、畜生。
出会い系なんてクソ食らえだ。
地道に出会いを探したほうが良かったな、こんな目に会うぐらいなら。
俺の受難はまだまだ続きそうな悪寒。
楽しくやれるのかわからないけど、退屈はしなさそうだが、コイツのセクハラをまずは全力を持って阻止せねば。
って、今、人の尻触っただろ、コイツ・・・。
☆後書き☆ お読みくださってありがとうございました!
やっぱりやばいですよね、出会い系はw 一応、攻め(ゆうき)視点のものは長さの関係上、前編と後編に分けてUPしました。 攻め視点をリクエストしてくださった方ありがとうございました。
感想などございましたら私のサイトのコメントボックスから一言お願いしますです。 ちなみに玲於奈が好きだと言ったPsalmは私のサイトで連載中ですw。
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