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 (オリジナル 年下攻め シリアス 15禁/15禁)
Deceive


「・・・大丈夫?」
いつも直樹はそう言って、晴海を抱きしめる。
細く震える体は、抱きしめてくる腕から逃れようと身もがいた。
呆然とした頭で、いつも思うこと。

――自分のものにしてしまいたい。

しかしそれは、気付いてはいけない想い。
叶えてはいけない願い。
晴海は、兄の恋人なのだ。




出逢ったのはいつだったか。
もう忘れてしまった。
覚えているのは、胸の高鳴り。
柔らかに微笑む、晴海の笑顔。
そして、言葉。


「あの時?」
「うん。なんて言ったか、覚えてる?」
「うーんと・・・確か、この家で二人きりで逢っちゃった時だよね?」
そう、と直樹は、晴海の首筋に残る赤い痣を指先でなぞる。
自分が付けたものではない。
いつも、証拠を残さないようにと気を付けているから。
「なんだったっけな?覚えてないよ。」
首を傾げる晴海に、直樹は寂しそうに笑った。
「いいです、忘れているなら。大した事じゃないし。」
パチパチと不思議そうに瞬きをする晴海に、直樹は遮るように口付けた。
ちゅ、と音を立てて離す。
至近距離で見つめると、晴海の瞳はまだ閉じていた。
「・・・・・・」
また、口付ける。
今度は、長く。
触れ合わせながら角度を変えると、晴海の唇から舌が覗いた。
それを、優しく吸う。
晴海の鼻腔から、甘い吐息が吐き出された。
腰が疼く。
ついさっき交わったばかりなのに、カラダは勝手に火を燈してしまう。
抱きしめる腕の力を強くする。
胸に置かれた晴海の手が、押しどけるように突っぱねた。
構わず、口腔内を貪る。
晴海はぎゅっと瞼を閉じ、絡まってくる舌を必死で吸っている。
それを薄い視界で見つめる。
長い睫毛。
中性的な顔と体。
晴海の全て。
心臓が鷲掴みにされる。
きゅっと眉根を寄せて、晴海の肩を掴む。
音を立てて離れた唇を、名残惜しげに追いかけながら、晴海は瞳を開いた。
黒い瞳は、快感に濡れている。
いつも、嫌がるくせに。
「嫌なんじゃないんですか?俺とするの。」
「え?」
「いつも、俺のこと避けるじゃない。」
「あ、あれは・・・」
「兄貴の前だから?兄貴にバレるのが怖い?」
「・・・・・・」
押し黙る晴海に、眇めた瞳で微笑む。
卑怯だ。
そうやっていつも誘うくせに、終わると兄の事を盾にする。
兄に知られるのを恐れているのは、直樹も同じだから。
「晴海さん、ずるい・・・」
「・・・・・・そうだね・・・」
晴海は、直樹から視線を外し、逃げるように言った。
欲しい。
欲しい。
あなたが欲しい。
俺はあなたが・・・・・・

首を振る。
頭に浮かんだ二文字を消すために、首を振る。
晴海が、不思議そうに見つめてきた。
「どうしたの?」
あなたは、兄のものだ。
ふ、と、柔らかく微笑む。
でも、瞳は笑っていなくて、晴海はびくりと肩を竦めた。
「教えてあげましょうか?あの日、あなたが何を言ったか。」
「あっ・・・」
まだ濡れている蕾に、指を埋める。
収縮する内壁は、いつも直樹を誘う。
「やっ・・・ぁ・・・あっ・・・」
一番感じるソコを、何度もひっかく。
晴海の腰が揺れ始める。
中心は、熱を持ち、起ち上がり始めた。
それを、ゆっくりと扱く。
「『僕は君のほうが好みだ。』 あなた、あの時、そう言ったんですよ?そして、俺を誘った。」
「あっ・・・あっ・・・」
赤く主張する痣を、上から何度も吸う。
晴海の中の兄の存在を、直樹で埋めるように。
「いつも、俺を誘うくせに・・・・・・」
「いやっ・・・ぁ・・・っ」
「あなたは、兄貴のものだ・・・!」
「あっ・・・あぁっ」
激情に任せ、先端のくぼみに爪を立てる。
ひっ、と掠れた悲鳴が、晴海の唇から漏れる。
「な、直樹・・・・・・っあ!」
嫌がる晴海のカラダを閉じ込めるように抱きしめ、唇を奪う。
いつも、そうやって兄を誘っているのか?
嫌がるふりをして、腰を揺らして。
かあ、と頭の中が熱くなる。
晴海の中にある、兄の存在を全て消してしまえたら・・・・・・!
「ああっ・・・直樹!」
我慢できないとでも言うように、晴海の脚が直樹の腰に絡まる。
ぐっと引き寄せられ、直樹は誘われるまま、嫉妬に狂った塊で蕾を犯した。
どうして・・・・・・
どうして俺を誘うんだ。
なぜ俺は断われない?

どうしてあなたは、俺のものじゃないんだ。

頬を、汗と涙が伝った。





きっともう、自分の気持ちには気付いている。
でも、頭の中で、それを認めたくないと主張するもう一人の自分がいる。
傷付きたくない。
晴海を傷付かせたくない。
兄も、幸せでいて欲しい。
だから、直樹はいつも、想いを誤魔化す。


そして今夜も、直樹は自分を騙すのだ。
「「兄貴のものだから・・・・・・っ」てな感じですかね。ほんとはただのやせ我慢なのです。」
...2002/3/16(土) [No.4]
ユチカ
No. Pass
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