「ほら、柚貴(ゆずき)の負け。」
パサリと雅之(まさゆき)はスペード2枚を俺に見せた。 そして俺の手に残ったのはジョーカー1枚。
現在、ババ抜き中=俺の負け
「っのあぁぁぁぁ!!」
俺は悲鳴を上げ手中のジョーカーを握りしめた。 なんせ罰ゲームは「女装」 男子高校生としてはあるまじき大ピンチだ。
「な、なぁ、やっぱ罰ゲーム変えようぜ?」 「柚貴、男らしくねぇぞ。」 「女装するくらいなら男らしくなくていい!!頼む、雅之!」
俺は両手を合わせて頭を下げた。 雅之はため息を付き、にっこり笑う。
「問答無用。」
「雅之の鬼ィーーー!!」
俺は本日二度目の悲鳴(?)をあげた。
「はい、柚貴くん。おめめ閉じてねv」
可愛らしく微笑む目の前の女性も、俺にとっては悪魔の使いとしか思えない。
「あの、」 「あ、口開いちゃダメよぅ!」 「すいません、でも雅之は?」 「ああ、あの子なら自分の部屋に居るわ。」
あんにゃろー、俺を夏美さんに預けて自分は部屋でのんびりか? 終わったら速攻怒鳴り込んでやる!! ちなみに夏美さんとは雅之のお姉さんにあたる。
そして現在俺は夏美さんの手によってメイク中。
「柚貴くんてば肌キレイねぇ。羨ましいわぁ~。」 「はぁ。」 「もう少しで終わるから頑張ってね!」 「はぁ。」
むしろこのまま終わらなくていい。 雅之の野郎女装したまま出かけるとかほざいていやがった。 それだけは絶対拒否しなくてはっ!!
「はい、出来上がりv」
鏡を見た俺はしばし固まった。
コレハダレデスカ?
「すっっっごく可愛いわぁv柚貴くん。」
正直に言って俺もそう思う。 メイクってすげぇ。 もともと童顔のせいで「可愛らしい顔してる」とは言われた事があったが、それは女顔ってことではなくて幼いって意味だった。
それなのに、今鏡に映る俺は、
「可愛い・・・。」
惚けたような声がして俺が慌てて振り返ると雅之が立っていた。 俺は開き直ったように仁王立ちになり、雅之に詰め寄る。
「俺がここまで頑張ったんだぞ。出かけるのは止めにしてくれるよな?」 「ぁ、ああ。つーか、あんまり近づくな。」
そう言って口元を押さえて顔を逸らす。 なんて奴だ、雅之の野郎笑うのを堪えてやがる。
「失礼な奴だなー。ふん、笑いたきゃ笑えばいいさ!どうせ心ん中じゃ大笑いしてんだろうよ?」 「バッカ、違ぇよ!俺は・・・」
焦ったような雅之の声を遮るように夏美さんが俺に声をかけた。
「ね、柚貴くん!この服なんてどう?」
そこにはフリフリの可愛らしい服を持った夏美さんが居た。 忘れていた、服も着替えなきゃなんなかったんだっけ。
「これなら下にジーンズはけば良いし。どうかしら?」 「・・・そうですね。」
俺は半ば諦めたようにその服を受け取ろうとした。
「いや、わりぃけど、服はいんねぇよ。」
遮ったのは雅之だった。
「は?」 「あら、どうして?」 「別に出かけるの止めるし。柚貴も着たくねぇだろ?」
俺は願ってもないのでコクコクと縦に頷く。
「わかったわ、残念。そうだ雅之、私2~3時間出かけてくるわね?」 「ああ、わかった。」
夏美さんは笑顔で俺に「頑張れ!」と手を振って出かけて行った。 ・・・・頑張れ?俺はその意味をこの後嫌というほど思い知る。
「部屋行くぞ。」 「お、おぉ。」
俺は一抹の違和感を感じながら雅之の後ろへ付いていく。
「俺、いつまでこの化粧してなきゃなんねぇの?」 「んー?全部終わったら落とせば良いだろ。ホラ、入れよ。」 「あ、サンキュ。」
俺はいつものように雅之のベッドに腰掛けた。
「どうせ全部終わったら風呂に入んなきゃなんねーしな。」 「え?」
雅之はカチャリと部屋のカギを閉め、次の瞬間覆い被さってきた。 俺の上半身が後ろのベッドに沈み、スプリングがギシッと鳴る。
「は?雅之?」 「無防備にもほどがあるよな。」
ニヤリと笑った雅之の顔を俺は見たことがなかった。
「やっ、やめ・・・ぅあっ」
胸の突起を甘噛みされるたびに体中がジンジンする。 頭の上でベッドに縛られた両腕と、足の上の雅之の重さで上手く動けない。 それを良いことに雅之はゆっくりと脇腹に口付けながら下降していく。
「・・・っ・・・はっ。」
ゾクゾクして上手く頭が回らない。 気持ちいいような、どこかもどかしいような。
そして俺は強い快感で一気に目が覚めた。 「っひぁ!ま、まさゅっ・・・あぁっ!」
あろうことか雅之は俺自身を口に含んだ。 熱い口内と動き回る舌に俺は一気に上り詰めていく。
「や、やめっ!あぅっ・・・ふゎ、ぁ。」
腰が震えるのを止められない。 俺の先走りと雅之の唾液が混じってグチュグチュと音を立てる。
「ふっ、も!やぁ・・・出るっ!」
雅之がジュルと吸ったのと同時に俺は果てた。
肩で息をする俺を余所に雅之は俺の足を思い切り広げ、自分の両肩にかけた。
「な、もうやめてくれ・・・。頼む。」
俺は上手く力が入らないまま哀願する。 そんな俺をチラリと見て雅之は呟いた。
「今更止められるかよ。」
冷たいローションと一緒に雅之の指が入ってくる。 最初1本だったそれはグチュリと粘着質な音が大きくなるのと共に増えていく。
俺は快感に身を任せたまま、またたち上がり始めた自分自身を見た。
雅之がある一点に触れた瞬間、ビクンと俺の体が波打った。
「ココ、だな?」 「な、に?」
そこに触れられるたびにあられもない声を漏らし、体が震える。
「今、指何本入ってると思う?」
俺はその問いに力無く首を振った。
「3本だ。」
答えと同時に3本の指が入り口で拡げられる。
「もうそろそろ良いよな。」
誰に問いかける訳でもなく雅之は呟いた。 指が引き抜かれ、俺はゴムを付けた雅之自身見た。
そして、
「っ死ねーーーー!!」
俺は体中が痛くて(特に下半身)ベッドから動けないまま手当たり次第に物を雅之向かって投げつけた。
「おい、危ねぇよ。柚貴。」 本気で怒ってる俺に対して雅之は飛んできた枕をキャッチしてニヤニヤ笑ってる。
「何でっ、こんな・・・。」 「だって俺柚貴のこと好きだし。」
サラリとほざく雅之を俺は睨み付けた。
「嘘付け!俺が女装してたからだろっ!女だったら誰でも良いのかよっ!!」 「は?馬鹿言え!いくら女装してたからって男抱けるかっ!?」
焦ったような雅之の声に俺は少し驚いた。
「・・・マジで俺が好きなの?」 「ああ。」
「そっそれにしたって・・・お前無理矢理過ぎ。」 「我慢が効かなかった。悪い。」
雅之が頭を下げた。 雅之がしたことは絶対許されないことだし、俺は凄い傷ついた。 でも、結局俺は雅之に甘い。
「次は無いからな。」 「あ、それは無理。」 「は?」 「お前の味を知ったのに今まで通りとはいかねぇよ。安心しろ、次はもっと上手くやる。」
「っ、ふざけんなー!!」
俺が投げたローションの瓶が雅之の顔面にヒットした。
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