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 (18/#aaaaaa禁)
双頭(前編)


 その夜男は新宿の飲屋街で何軒も梯子を続け、鉄の胃袋と言われる腹に憂さ晴らしのやけ酒を流し込んだ。
 男は最近入ってきた新任の上司・・・男よりも20歳近くも若造の・・・とどうにもそりが合わず、本日盛大に意見の食い違いをやらかしてこうして夜の新宿をさまよう羽目になってしまったのである。だが、苦い酒は足下を多少ふらつかせる事にはなっても男を心地よい酩酊に誘うことは無かった。
 それはたぶん、新しい上司とそりが合わない要因が自分の方にも有ることを何となく自覚していたからかもしれない。
 なじみの店を何軒も回る内、気が付くと男は見覚えのないとある路地へと足を踏み入れていた。人気のない路地の再奥。一軒だけ薄ぼんやりと明かりがともる看板を見つけ、たまには新しい店の開拓もいいか、と、男はその店へと足を向けた。
 その店の四角い電光看板は、明かりがともっているものの名前らしき物は摩滅して分からなくなっていた。古いしゃれた煉瓦作りの狭い入り口。地下にドアがあるのか、これ又薄暗い煉瓦の階段が地下へと続いていた。
 男が一歩階段へと足を踏み入れたとき、どこから沸いて出た物か、背後から声を掛ける男がいた。
「お客さん、この店はやめておいた方がいい」
 振り返ると年の頃は30代前半位の背の高い黒い革のコートを着た男が銜えタバコで立っていた。眼光鋭く、凄みを乗せた笑い。売れない俳優かホストのようななかなかの色男だ。どこか崩れた雰囲気は有るが‘スジモノ’にも見えない。
「なんだぁ、婆ぁばっかりの店か?あんた余所の客引きか・・・それとも用心棒?」
 酔いに任せておもしろおかしく巫山戯た調子で聞き返す男に、黒コートの男はにやりと笑って答えた。
「婆ぁじゃない。・・・とびきりの別嬪ばかりさ。それと俺は・・・ここじゃあ『冥府の番人』って所だな」
「はは、それじゃあこの階段を下りたところは冥府とやらの一丁目ってこった。とびきりの別嬪さんに酌してもらえるんなら冥府だろうと地獄だろうとこっちゃあかまわねえさ。ぼったくりじゃなけりゃ是非とも寄らせてもらいたいな」
 と、男は豪快に笑った。上機嫌で階段を降り始めた男に階段の上からもう一度黒コートの男が声を掛けた。
「ぼったくりじゃ無いんだが今夜は大層特別な趣向でな。・・・少々高く付くかもしれないぜ?」
 その声に階下からかまわんよ、と男が手をひらひらと振って答える。その背中に黒コートの男が薄い唇に暗い笑み乗せて見送った。



 男が地下の樫の木で出来た重いドアを開けると、数人の若いホステスたちが出迎え、奥のボックス席へと男を案内した。店内は思いの外新しく、清潔かつ豪華すぎず、なかなかに男の好みに有っていた。ただ、照明が他の店よりも暗いのだ。見ると申し訳程度にランプが2つ吊してあるバーテンダーのいる一角以外はテーブルに灯されたガラスの器に入っている蝋燭の明かりのみで、そこそこ客は入っているものの柱の向こう隣のボックス席にいる客の顔等見えない。さざめき笑いあう男と女のシルエットのみが店内を満たしていた。
 男のいるボックス席は広めの通路を挟んで向かい側のボックス席と対をなす配置になっていて、広めの通路の先は小さな舞台。そして反対側は会計用のボックスを挟んで男が今し方入ってきた樫の木のドア。
 男がしばらく店の様子を眺めていると、そのうちに注文した酒と女がやってきた。黒コートの男が言った通り、ホステスは顔もスタイルも大きく開いた胸元から除く乳房の大きさもなかなかに上玉だった。
 新しいグラスに口を付け、ホステスとたわいもない話に興じる内、ショーの始まりを告げるひときわ大きな音楽が店内に流れてきた。
「一体どんな見せ物が始まるんだ?」
 男が隣に座る女に尋ねると、女はうっとりとほほえんだ。
「今夜は特別な趣向のショーなの。ああ、私もとても楽しみだわ」
 女の顔はこれから始まる期待に満ち、その瞳は濡れ濡れと妖しい光が宿っり、それはまるで前技で散々じらした後‘入れて’とせがむ女の表情のようで・・・男の欲望をちりりと煽った。
 
 舞台にさっと青白いスポットライトが差し、朱鷺色の長襦袢を身につけてうずくまる黒髪の女が照らし出された。女はゆっくりと立ち上がり、流れてくる音楽に合わせて緩やかに舞い始める。なんだ、ただのストリップかと男の興味は再び隣にいるホステスに移った。しかし、女の興味は舞台にあるようで食い入るようにうっとりと舞台の上の舞手に熱い視線を注いでいた。男はちぇっと小さく舌打ちをし、自分もこの退屈なストリップショー観覧に興じることに腹を決めた。
 舞台の上の舞手は、隣に座る女に比べると背の高いスレンダーな体型のなかなかの美人だったが、どちらかといえば豊満な肉体を好む男としては少々物足りない思いがした。そうこうする内、舞手は一本の赤い蝋燭を何もない空中から取り出し、男の立ち上がった陰茎に奉仕するようになまめかしくそれを何度も嘗めあげ、最後に何も持っていないはずの指先で火を灯した。舞手は火のついたローソクを片手で高く掲げ持ち、ゆっくりと自らの体に向かって傾け始める。熱によって溶けだした赤い蝋の滴が、ぽたり、ぽたりと舞手のはだけた肩を濡らす。
 赤い滴が落ちる度、あ、あ、と白い肌をふるわせ悩ましく身もだえる。さらには片手で朱鷺色の襦袢の胸元を大きくはだけ・・・

 白い「平坦な」胸もとをも赤い滴で飾り立ててゆく。

「あ?お、おい。あのねーちゃん・・・ずいぶんと・・・」
 男が隣の女にとまどいの声を掛けるが返事は帰ってこない。次に座り込んで大きく足を開いた舞手の襦袢の裾がぱらりとはだけた時、長くしなやかな足の付け根にある信じられない物を、男は見た。
「男?男のストリップなのか、これは!?」
 スレンダーな女だと思いこんでいた舞手は、実は年若い青年だったのだ。そのスレンダーな肢体に合ったスマートな淫茎はすでに立ち上がり、蝋の滴を自らの太股に落とし腰を妖しくくねらせる度、誘うようにひくりひくりと揺らめいていた。
 それに誘われるように前の方のボックス席に座っていた羽織の老人が、思わずと言う風情で舞台前に掛けより、青年に向かって膝を付き懇願する。
「どうぞ・・・どうぞ、今宵一番のあなた様の蜜の滴を口中にいただける名誉を、この汚らしい爺めにお与えくださいませ・・・」
 駆け寄った老人を冷たい瞳で一瞥し、それでもふふっと笑って青年は指先で手招きする。
 老人は涙を流さんばかりに何度も謝辞を延べ、そのまま青年の立ち上がりかけたモノを節くれ立った指で絡め取り、歯のない口中にそれを迎え入れた。
「あ・・・あっ!は、・・・ん」
 老人の奉仕を冷ややかなさめた瞳で眺めていた青年は、やがてあられもない歓喜の声を上げ、艶めかしく身悶え始める。手のひらから火の付いた赤い蝋燭ははずれ落ち、舞台の上に転がって消えた。いつの間にか音楽は消え、老人が奉仕を施すぴちゃぴちゃと言う淫らな音が店内に響く。どのボックス席も水を打ったように静まり返り、あられも無い舞手の姿に見入っていた。
「冗談じゃねえ、俺ぁ帰らせてもらうぜ。なにが悲しくて男の生板ショーなんぞ・・・」
 もとより性的にノーマルな男が席を立ち掛けるが、隣に座った女に恐ろしい力で引き戻される。
「だめよ、お客さん。今夜は特別な趣向の夜だから。途中で退店出来ないわ・・・」
 女の細腕とは思えぬその力と、滑り、妖しく光るその目に気圧されて、男は不承不承席に戻る。舞台の上では老人が熱心に青年の股間を嘗め続けていた。そのうち、あえぐ青年の声が一際大きくなり、上気した上体が淫らに、弓なりに反り返る。
「あ、あーーっ!!」
 青年の精が老人の口中に放たれたのだ。
「お、おおおおお・・・なんと甘い!こんな・・おお、こんなに・・・」
 老人が歓喜に体をふるわせながら放たれた精をすべて嘗め尽くそうとでもするように、尚も萎えた青年の性器をしゃぶり続ける。息を整え終わった青年がゆっくりと身をよじり、冷笑を浮かべながら己の股間に伏せられた老人の顔を蹴りあげた。無様に転がった老人は、それでも喜びに身を震わせながら何度も礼を述べ、元居たボックス席に帰っていく。
「ああ、くやしい・・・あんなこ汚い爺ぃに精を差し上げるなんて・・・」
 横に座った女が心底悔しそうに誰に聞かすでも無くつぶやくのを聞き、男はぎょっとした。

 いったい何なのだ、この店は。

 「そういうたぐいの店」とは思っても見なかったが、それにしてもこの女の熱狂ぶりは気味が悪い。仮にも客に向かって『爺』とは。あの舞手と「出来て」いるにしてもやりすぎだ。男は早くも店に足を踏み入れたことを後悔し始めたが、どうせ高い金を払うのなら、最後まで余興を楽しんで店を出てやろうと腹を決め、目の前の酒を嘗めながら再び舞台に視線を戻した。
 姿勢を整えた青年は、今までの狂態など微塵も見せぬ素振りですっと立ち上がると、先ほど転がった蝋燭を再び手に取り火をつけ直した。そして舞台の袖に向かってぱちりと指を鳴らす。すると、アシスタントらしき豊かな胸をカップレスの革ボンテージで締め上げた2人の美女が車輪の付いた座椅子をからからと押しながら現れた。
 その座椅子には、またしても「男」が座らされていて、男は少々がくりと肩を落とした。だがその椅子に座らされていた「男」をじっくりと眺めた後、男は飛び上がらんばかりに驚いた。
 その「男」は―――滅多にお目に掛かるはずのない銀髪。瞳に目隠しを施されてはいたが、その整いすぎるほどに整った綺麗な人形のような容姿。「男」は・・・それほど男の『年下の上司』に似通って居たのだ。

 まさか、そんなはず――――

 沸き上がる疑念に駆られたまま、男は舞台の上の青年から目を離すことが出来なくなっていた。
 目隠しをされた青年は、両腕を頭の後ろで組まされ、ちょうど胡座をかく姿勢で座椅子に座らされていた曲げられた両膝は革の拘束具によって固定され客たちの目に淫部を晒されていた。よく見ると、両膝に施された拘束具の革ベルトは手首の拘束具と一本のひもで繋がっていて青年が恥ずかしさに身じろぐ度、さらに大きく両足を開かせる様になっていた。そして股間は綺麗に剃毛されその上プラチナのリングを幹の根本までしっかりとはめ込まれ、つるりとした小振りのピンクのゆで卵のような頭をすっかり露出させられていた。淫嚢はリングを固定するための小さな革ベルトで締め上げられ、まるで杏の実のようだ、と男は思った。
 黒髪の青年が、赤い蝋燭を銀髪の青年の目の前にかざす。目隠しを施されているとはいえ、その熱でかざされた物が何かを察した銀髪の青年が思わずびくり、と恐怖に体をこわばらせる。
「何故怖がるのです?あなたはこれがお好きでしょう?」
 黒髪の青年がさも楽しそうに哀れな銀髪の青年を言葉でなぶる。初めて耳にする黒髪の低く艶のある青年の声は、意外に心地よく男の耳に響いた。
「あ・・・お、願い、お許しください・・・」
 対する銀髪の青年の震える声。やはり、それはどこか『年下の上司』の声に似ているような気がして、男の胸に得体の知れないどす黒い疑問が膨らんでいった。
 黒髪の青年がくくく、と笑って哀願の言葉を紡ぎ出す綺麗な唇に軽く口つける。
「さあ、どこから落としてほしいですか?ここ?それともここですか?」
 黒髪の青年はいつの間にか取り出したホイップ(乗馬鞭)で、哀れに括られた青年のぷくりと立ち上がった乳首、白く艶やかな脇腹、そして子供のようにつるつるの股間を順になぶっていく。
「あ、あ・・・っ、いや・・・」
 口ではいやと言いながらも、銀髪の青年の子供のようにつるつるにされた股間では、青年の淫茎が期待感に立ち上がり、あまつさえ透明な蜜を滴らせ始めていた。
 黒髪の青年がふふ、と含み笑いを漏らしながら・・・・銀髪の青年の白くなめらかな腹部に赤くとろけた蝋を・・・
 
 ぽたり。

「あぅ!」
 銀髪の青年の体がびくり!と大きく跳ね上がる。その拍子に、無毛の股間がさらに露わになり、そこへめがけてさらに新しい赤い滴が落とされた。
「ひぃ、ああ、あーーーーーっ!!」
 次々に落とされる赤い滴によって、青年の白い体の上に赤い花弁が咲いてゆく。解けた蝋によってもたらされる熱さに身もだえる青年の姿は、まるで銀の鱗を持つ艶めかしい魚のようだ、と男は思った。それと同時に、己の逸物にじわり、と熱が集まり初めて居るのを自覚し、男は大いに戸惑っていた。
「お客さんも堪らなくなって来たようね・・・」
 隣に座る女が、情欲にねっとりと潤んだ瞳で男を見た。
「ば、バカなことを言うな、なんで男なんか見て・・・」
「いいのよ・・・彼は特別だもの。それにあたしも、もう・・・」
 言いながら女が男にしなだれかかりその豊満な胸に男の手を引き寄せた。女の言うとおり、薄い布と下着越しにでも豊かな乳房の乳首がピンと張りつめて居るのが判った。男は少し戸惑いながらも女に導かれるまま、軽く布地越しに摘んでやると悩ましいため息で女が答えた。この分だと、女の秘所は相当ぬかるんで来ているに違いない。
 ぱし!と言う鋭い音で男の視線は再び舞台の上の「銀の魚」をとらえた。
「うっ!んぅ・・・ひぃ・・・っ」
 黒髪の青年が恍惚とした頬を上気させながら、赤い花びらを乗せた銀髪の青年の肌をホイップで打ち据える。
「さあ、次はどうするか・・・・判ってますね?」
「ひぁ、あああっ、やめて・・いや、あっ」
 吐息も荒く責め苦にあえぎ、泣きながら哀れに懇願する青年に、黒髪の青年が2度3度と容赦なく鞭を入れる。
「あ!あ!ひ、あ・・・あああああ!」
 しかし、その苦痛にのたうちながらも銀髪の青年の赤く彩られた無毛の股間は・・・。
「・・・感じてるのか、あれで」
 目の前で繰り広げられる異様な光景に男がかすれた声でそうもらし、自覚のないままごくり、と喉を鳴らした。
「ええ・・・言ったでしょう?彼は・・・『特別』なのよ」
 女が含み笑い、男のズボンのジッパーに手を掛け立ち上がり掛けている股間の逸物へと直接指を滑らす。が、男の視線は舞台をとらえたまま動かない。女はそれにかまわず取り出した男の持ち物を見、舌なめずりしそうな笑みを浮かべ赤いルージュでぴちゃぴちゃと味わい始めた。
 
 舞台の上の哀れな「銀の魚」は、青年が握るホイップに綺麗な顎を捕らえられ、その赤い唇を痛みに戦慄かせている。
「お仕置きはこたえましたか?さあ、いい子だから強情を張らずに従いなさい」
 銀の魚は・・・恥辱に赤く頬を染めながら青年に導かれるままゆっくりと座椅子の上で
アシスタントに助けられながらうごめく。銀の魚は大きく開かされた足を背もたれに、頭は座席に・・・無毛の股間とバラ色の淫華を客席に晒して・・・舞台に上がった時のポーズでそのまま逆立ちをしたような形になった。
「ああ、なんていやらしい格好なんでしょうねぇ。ほうら、恥ずかしい所が全部・・・物欲しげにひくついているお尻の穴までお客様方にまぁる見えになっていますよ?」
「あ、ああ、い・・・言わないで、ください・・っ」
 銀の魚が哀れにすすり泣く。だが、股間では赤く染め上げられたはち切れんばかりになっている淫茎がひくりひくりと揺れて、新しい蜜を垂らすのだ。
「ふふふ、嬉しいのでしょう?言いつけを守ったご褒美を上げましょうねぇ・・・」
 黒髪の青年が、大きく広げられたなめらかな双丘に咲く淫華をぺろりとなめ上げ、そこに蝋を垂らした。
「ひあああああっ!あ、はああああっ!あ、熱いっ!や、あああああ――――――!!!」
 その熱さに、今度こそ身も世もなく銀の魚は泣きわめき、終いにはひゅ、と小さく息を吸い込み、かくりと体の力を抜いて失神してしまった。
 黒髪の青年はおやおや、と客席に向かって軽く両手を広げて見せ―――客席に軽く一礼して見せた。
 客席からは拍手と、銀髪の青年への狂態への熱い賛辞が送られた。
「さて」
 黒髪の青年が客席に向かって声を掛ける。
「今宵は特別な宵で御座います。今宵当ラウンジにお集まりくださいましたお客様に多大なる感謝を込めまして、ただ今よりちょっとした余興を皆様にお贈りいたしましょう」
 そういうと青年は細くしなやかな指をぱちり、と鳴らす。その音を合図にアシスタントが舞台の袖から木で出来たアンティークな木馬を引いて現れた。
 かたり、かたりと小さな車輪をきしませながら引き立てられたその木馬。一見、子供の遊具の様に見えるが・・・腰を下ろすであろうその鞍には高い背当てが付き、車輪の回転にでも合わせているのであろうか。ゆっくりと上下に妖しく注送する一本の太い張型が仕込まれていた。
 やがて木馬は舞台の下に張型を覗かせた状態で停止し、黒髪の青年が艶めかしい仕草でそれを口に含み濡らした。その隙に2人のアシスタントが、足の拘束具を外した気を失ったままの銀髪の青年を木馬まで引き立てる。
 ホールの中程のボックスに居る男は、自分の股間でうごめく女の頭のことなど忘れ身を乗り出してこれから起こるであろう饗宴に我を忘れ見入っていた。
 二人のアシスタントが気を失っている青年を、女児に小用をさせるような格好で木馬に跨らせた。
 青年が妖しく微笑み、銀髪の青年の淫華に咲く赤い蝋を指先で軽く掻き取るとくったりと気を失っていた青年がその刺激で覚醒し、小さくうめいた。
「さ、今あなたの好きな好いモノを差し上げますよ」
 そう銀髪の青年の耳元で妖しい笑みを浮かべて囁くと、手のひらに捕らえた張型で一気に青年の淫華を貫いた。
「ああ――――――!!!」
 その瞬間、客席から何ともいえぬ感嘆の声が上がり、その場が一気に淫らな熱に包まれたように男は感じた。
 巨大な張り型を飲み込まされた淫華は、その痛みにヒクヒクと収縮を繰り返し、それでもリングによって締め付けられた淫茎は妖しく喜びの涙を垂らしながら揺れていた。まるでそのひくつくバラ色の秘肉を、濡れてきらめきながら幹を伝い落ちる蜜の涙を目前で見つめているような錯覚に、男の中の『何か』が舌なめずりをし、ずるりと蠢く。




 『何か』―――それは、男の中に潜んでいた、一つの欲望。
 嗜虐心、と言う名の 暗い欲望で有った。



 男は自分を性的にノーマルであると今まで信じていた。抱いた女は数々あるが、一度たりともこんな暗い欲望に捕らえられたことなどなかったのに。
 だが・・・目の前で繰り広げられる饗宴を食い入るように見つめる自分は一体なんなのか?己の股間で蠢く女のせいなどではなく自分は確かに、淫猥な木馬に繋がれた青年に欲情している。


『・・・に、似ている、からなのか・・・?』


 そう、今までは自覚することは無かったが・・・ときおりあの銀の髪の年若い上司を見るに付け、何故か不快な胸苦しさを覚えたのは・・・自分の中に我知らず存在していた暗い欲望を無意識に煽られていたからなのかもしれない。


   あの取り澄ました人形のような上司の 生白い肌を。
   その白いししむらを己の逸物で貫き、泣かせたい―――――。


 男は一息に肯定してしまった欲望に目眩を覚えながらも・・・女の口の中に吐精してしまっていた。



「双頭~前編~了」
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...2003/2/12(水) [No.34]
かんす
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