もうすぐ3月14日、、、ホワイトデーだ、、、 いつもならそんなこと考えたことなんてなかったな。 バレンタインには必ずって言って良いほどチョコを貰ってるけど、 お返しなんてしたことがない。 量が量だから金の無駄使いのように思ってたし、 何より自分が『好き』って思ってない奴にプレゼントなんて、 したいと思わなかった。 ダチからは『冷たい奴だな』とか言われるけど、 それは俺自身の考えだからどうしようもない。 でも今年は違ってて、自分が心から好きになれる奴ができた。 そいつからバレンタインのプレゼントも貰った。 自分もそいつのことが好きだから、何かを返してやりたいと思う。 本当に好きだから、何かを返してやりたい、、、本当にそう思う。 今までそんなことなかったから、自分でも不思議な感じがしてる。 なんで自分がそんなことしようとしているのかも解らない。 きっと俺あいつのことが本当に好きなんだなって思う。 何をあげればあいつが喜んでくれるか、、、 そして自分のプレゼントで、あいつの喜んでくれる顔がみたい、、、 そればっかりが自分の頭の中を駆け巡る。
「なぁ、プレゼントってどんなんが良いと思う?」 「あん?なんだよ、急にプレゼントって、、、」 友人は少し不思議そうな顔をしながら聞き返す。 「だから、もうすぐホワイトデーだろ? お返しにプレゼントするなら何が良いかな?って思ったからさ。」 友人は納得した表情を見せながら、少しにやけながら言う。 「あぁ、、、そういうことね。ってお前お返しなんてすんのか?」 「うっせーな、、、別に良いだろ、そんなの、、、」 少し照れながら返事を返す。 「へぇ、、、あれほど嫌な日だとか言ってたくせにねぇ、、、」 にやにやしながら友人は言ってくる。 「もういいだろ!!良いから何が良いか教えろよ!!」 今度は少し怒りながら言う。 「そう怒んなって。 うーん、、、別にホワイトデーたってどうせチョコのお返しだろ? なんだって良いんじゃねぇの? それに大事なのは気持ちだって、キ・モ・チ」 友人はそう言う。 確かに『キモチ』も大事だと思う。 でも本当に好きな奴だから、単なる「お返し」ではなんとなく嫌だった。 せっかくのプレゼントだし、喜んでもらえる物をあげたかった。 幸裕が喜んでくれるものをプレゼントしてやりたいと思った。 「はぁ、、、解ったよ、、、ありきたりな回答ありがとな。」 少しあきれた感じで返事を友人に返すと、教室を後にする。
それからずっと、何をプレゼントしたら良いか、 そればかり考えていた。 「何が良いかな、、、なんだったら喜ぶだろう、、、」 自分の頭はそのことばかりだった。 幸裕とつきあってまだそんな期間があるわけじゃないし、 幸裕のこともあまり知らない。 正確には知ろうとしなかったのかもしれないけど、、、 もともと他人の詮索とか好きじゃないし、そういうの苦手だからな。 そんなんだから幸裕の好みとかも全然知らない。 今になって思えば、色々聞いておけば良かったとも思う。 「あーーーーどうすっかな、、、」 考えても考えても思い浮かばない。 そうやってどんどんと日にちだけが過ぎていく。
ホワイトデー当日。いつも通りの授業を終え、放課後になる。 幸裕とは学年は一緒だが、クラスが違うから帰る時間がちょっと違う。 だからいつも校門の前とかで待ち合わせて帰る。 学校の帰りはいつも一緒だった。 「ゴメンッ!!なんかあの先生話し長くてさ。」 少し息をきらせながら幸裕が校門前にくる。 「あぁ、そんな気にすんなって。そんな待ってねーし、、、」 そう言うと幸裕はほっとした表情を浮かべる。 「ほんとっ?良かった。」 「んじゃ帰っか。」 「うんっ!!」 いつも通り2人で学校の校門を後にする。 帰り道は特に何かする訳じゃなく、適当に今日あったこととかを話すだけ。 それでも毎日の楽しみでもあった。 それは好きな幸裕と2人きりでいられるから、、、 短い時間だけど、2人きりでいられる時だから、、、 幸裕の家が近づいた辺りで、準一の方から切りだす。 「あのさ、、、ちょっと良いかな?」 「どしたの?」 「んっ、、、ここじゃちょっと、、、あそこの空き地で良いか?」 準一の指差す先には、少し暗く、誰もいない空き地がある。 「うん。別に良いけど、、、」 幸裕は少し心配そうな顔をしながら準一の後についていく。
「ほらっ、、、コレッ、、、」 そう言うと右手に持っていた小さな箱を幸裕に手渡す。 「えっ?」 準一にいきなり渡された物に戸惑う。 「今日、、、ホワイトデーだろ。 バレンタインにプレゼント貰ったし、そのお返しだよ。」 少し顔を赤くしながら準一は言う。 しかし幸裕はいきなり渡されたプレゼントに驚き、そのままボーっとしていた。 「どうしたんだよ、、、ボケーっとして、、、」 少し心配そうに準一が聞くと、幸裕は少し慌てながら言う。 「えっあっ、、、ありがとう、、、その、、、なんて言うか、 準一のことだから、お返しなんて期待してなかったから、、、」 「んだよ、、、その『期待してなかった』って、、、」 「あっ、、、ごめっ、、、でも、凄く嬉しい、、、ありがとう、、、ほんとありがとう、、、」 本当に嬉しそうな顔をしながら幸裕は言う。 そんな幸裕の顔を見ると、準一は急に照れだす。 「べっ、、、別にそんな凄いもんじゃねぇし、、、」 「ねっ、開けてみて良い?」 「あぁ、、、お前喜ぶかわかんねぇけど、、、」 少し心配そうな顔をしながら準一は言う。 幸裕が箱を開けると、そこにはリングが一個入っていた。 良く見る指輪だと思った。 そしてそれはいつも準一が気に入ってしている指輪と同じだと解った。 「この指輪、、、いつも準一がしてる指輪、、、」 「あっ、、、あぁ、、、その、、、 プレゼント何が良いか考えてたんだけど思い浮かばなくて、、、 結局俺のお気に入りのリングと同じやつをやろうと思ってさ、、、」 少しだけ申し訳なさそうな表情をしながら言う。 リングには名前が彫っているわけじゃないし、 何か細工があるわけじゃない。 自分がいつもしているリングと同じ、、、ただそれだけだから、、、
そんな表情をする準一に、幸裕は少し声を大きくしながら言う。 「でもっ、、、コレ準一のとお揃いのリングでしょ? 僕、、、それだけでも嬉しいよ、、、 なんか『自分はいつでも準一と一緒なんだ』って思えるし、、、」 「幸裕、、、」 嬉しかった。 自分のあげたプレゼントを、 『嬉しい』と言ってくれること、、、そして喜んでくれること、、、 「ありがとう、、、準一、、、」 幸裕は今までに見せたことのない笑顔を見せる。 すると幸裕はいきなり幸裕の肩に手を置き、キスをする。 「えっ、、、じゅんい、、、んっ、、、ん、、、」 「幸裕、、、」 口を離すと、幸裕の息が荒くなっているのが解った。 「じゅ、、、ん、、、いち、、、?」 「っあ、、、わっ、、、わりぃ、、、なんか、、、その、、、キス、、、急にキスしたくなって、、、」 理由なんてなかった。自分が幸裕にもっと近づきたかったから、、、 もっともっと、、、自分の側にいて欲しいと思ったから、、、 「ゴメン、、、悪かった、、、」 でもそれは自分の気持ちの押し付けで、 幸裕のこと全然考えてなくて、、、 「謝らなくても良いよ、、、僕も準一のこと好きだから、、、」 それでも自分の気持ちが伝わったときは、とても嬉しくて、、、 「幸裕、、、」 少しの沈黙のあと、幸裕は照れながら言う。 「ねぇ、、、その、、、もう一度キスしてくれないかなって、、、 いきなりじゃなくて、、、普通にして欲しいなって、、、」 「幸裕、、、」 そう言うと準一は、幸裕を抱きしめ再びキスをする。 さっきよりも長くて、深いキスをする、、、 「んっ、、、ん、、、っ、、、」 一番好きな奴と、今までで一番近くに感じられた時だった。 そしてこのままずっとこうしていたい、、、そう思った。 準一は幸裕の指にリングをはめてやる。 「準一と一緒だね。いつでも一緒だよね。」 嬉しそうな表情をしながら準一を見る。 準一もまた嬉しそうな表情を浮かべる。 「あぁ、、、そうだな、、、いつでも一緒だ、、、」 そういうと再び幸裕にそっと口づけた。
a novel written by izumi copyright(C) sky hope
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