俺は仕事をがんばっちゃってる
なんでかって?
そんなに聞きたい?
うわぁ~困っちゃうな★
あ、引かないで引かないで!!!
好きな子がね、大好きなあのこと付き合うことになったんだよ!!
もぉ~かなり嬉しくてさぁ!!
変にテンション上がりまくりなんだよね
いつもこのテンションってわけじゃないからあんまり引かないでくれると嬉しいな
「太郎ぉぉぉぉぉぉぉ」
「なんだい?ハニー」
いとしいあの子が、俺を求めてる
眉間にしわよってて、目がイっちゃってても可愛い。
これが世間一般に言う恋は盲目てやつですか
ああ、世界中の幸せを独り占めした気分
あのこの目より、俺の思考がイっちゃってるよ
パコーン
「誰がハニィーだ誰が!!」
「いちちち、ドメスティックバイオレンスだ」
丸めたカタログで殴られた頭いたい、あなたの愛がイ・タ・イ
結構容赦なく叩いてくれましたね今。
ダーリンに向かって何すんですか
と言いたかったが、これ以上言うと殴られるだけでは済まなそうなので言わないで居た
俺だっていたいのは嫌だし、好きな子でも殴られるのはやだ
俺はMじゃないもん
「そんなことはどうでもいいんだよ!!!このカタログなんだ?!このカタログは」
どうでもいいって…
ドメスティックバイオレンスは家庭崩壊の危機なんだぞぉ~
何て言えなかった。
言いたいのに言えないって切ないなぁ
「カタログなんか変だったの?」
俺はモデルだったりする
だからカタログのデザインの会議にも参加してる
結構俺の意見聞いてくれるんだ
まぁ、モデルしてんだしセンスは悪くないと自分でも思うけどね
「なんで、俺とお前の2ショットが出てんだよ!!」
カタログの1ページを開けて、肩を震わしている
何に怒ってるんだろう
「可愛く撮れてるでしょ」
「そんな問題じゃない!!なんで俺が出てるかを聞いたんだよ」
いや、一回も言ってませんよ
『なんで俺が出てる』なんて一言たりとも言ってませんから
貴方いきなり俺を殴ったんじゃないですか
いくら俺と以心伝心してるからってさぁ、もぉテレちゃう
「何で、俺が出てるんだ?ああ?」
きゃぁ~本気で怒ってるぅぅ
怖い
マジで怖いですよ貴方
そん所そこらのヤクザなみに、その目つきの悪さは天下一品国宝物ですよ
「俺は何も言ってないよ~だって凌駕(りょうが)が出てることを今知ったんだし」
「本当か?」
「うん。それ何のカタログ?」
凌駕からカタログを受け取って、表紙を見た
ああ、最近撮影した奴じゃん
でも、これ凌駕が寝てるときに悪戯で取った写真だし
なんでカタログに?
値段まで確り書いてあるよ…さすが通販雑誌恐るべし
「これ作ったやつ誰」
「しらないよぉ~俺雑誌の構成は立会いok出されてるけど通販のは立ち合わせて もらえなしい」
「ちっ、役立たずが」
「ヒド!!」
凌駕の顔は本気だった
普通恋人に、マジな顔して『役立たずが』って言いますかぁぁぁぁぁ
しかも、俺腐ってもモデルですよぉぉぉぉ!!頭いきなり殴られて、貶されて
あ~俺愛されてない?
なんかショック
確かに、俺からの告白だし?
しつこいくらいアックしてましたけど?
少しは愛情表現してくれてもイイじゃねぇかよ!!!
「何不貞腐れてんだよ」
「凌駕が冷たい」
「何時も通りだろう。ほら休憩おしまいさっさと行けみんなに迷惑かかる」
「はーい」
絶対愛が無い
凌駕はメイク・ファッション・ヘアメイク代替全部やってるけど専門はメイクさん
化粧は嫌いだけど、凌駕にメイクしてもらうのは好き
顔近いし
俺は男だから、ファンデーションコンシーラーくらいしか入れないから直ぐに 終わっちゃうけど…下手したらメイク無いときもある
まぁ、若いしね
撮影はライトもあるし、俺は肌綺麗だし
ヘアメイクも、凌駕にしてもらいたい
俺がヘアメイクしてもらってるときは、たいてい他の人のメイクをしてる
なんか、ムカつくんだよね、至近距離だし
せめて、凌駕がスタイリストさんなら……変わんないか
凌駕が他の人といるだけで俺は焼くんだし。
あーあ、凌駕は俺に焼きもちとか焼いてくれないのかなぁ
「よろしくおねがしいまーす」
「「「「「おねがいしまーす」」」」」
スタッフさんにまとめて挨拶して、監督に挨拶して、モデルさんに挨拶して 挨拶だけで結構ダルイ。
親しき中にも礼儀ありだけど、最近毎日みてる顔ぶればかりだ
「太一、もっと聖夜によって」
「はい」
「ok、このまま10枚撮ります」
カシャカシャカシャカシャカシャカシャ
眩しく暑いライトに、眩しいフラッシュ
そして、横には好きでもない男。
はぁ~これが凌駕なら、喜んで密着したのになぁ
聖夜、香水くさいから苦手だ。
「はーい、お疲れ。服変えて。次の子入いって」
俺たちと入れ違いに、次に子が入っていく。
「太一君これね。次の」
「ありがとうございます」
あ、ちなみに『太一』は俺の芸名
太郎のままでよ良かったんだけど、事務所の社長が駄目って言うからさぁ
「太一、顔よこせ」
「はい」
仕事中はお互いに忙しいのでイチャツク暇も無い
でも、この数秒の時間さえも嬉しい
ブラシが、顔のラインに沿って流れていく
くすぐったいなぁ、女の子は毎日こんなのしてるなんて尊敬するよ
「聖夜にあんまりくっ付くなよ」
凌駕は立ち去り際にそう言ってくれた
え、今の焼きもちですか?
焼きもちですよね?
うわぁぁぁぁぁぁぁ、マジで嬉しいんですけど
夢じゃないですよね
「太一さんー入ってください」
「あ、はーい」
人が幸せに浸ってるのに
そう思いながらも、仕事は仕事と割り切って太一の顔をした
でも、考えてることは凌駕のこと
嬉しくって仕方が無い。まさかあの凌駕が焼いてくれるなんて夢みたいだ
「太一、笑って」
「はーい」
カシャ
「ok」
一発okを頂いてしまった
「今の笑顔最高。何時もこれくらい笑えよな」
「アハハハ、がんばりまーす」
そりゃあ、今の笑顔はマジの笑顔ですからね
この後、太郎の笑顔を見た凌駕がひそかに焼きもちを焼いていたのは誰も知らない。
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