「っふぁ…!ぁ…ぁんっ、流っ…!」 「相変わらずめっちゃ淫乱だな」 「意地悪言ってないで…ぇっ、早…っ、ちょうだい…!」
軋む音はしないけれど、濡れきった優斗の声と余裕のある流麗の声。 そして、深く深く繋がる音が場を支配した。
「ぁぁっ、ぁ…ぁ……りゅれい…っァ…」 「ツラいだろ?」
流麗は口の端を軽く上げて薄気味悪く笑った。 笑い漏れた甘い吐息…それだけで優斗は追い詰められる。 何か、詰まったままの圧迫感。 中へ入ってきた流麗のモノ。それを迎えた優斗。 けれど、モノは動きを見せず、ただ黙するだけだった。
「…ぁっ、なんで…っ、動いてっ」 「やーだね。そりゃいつもと一緒だろ?」 「……んんっ、ぁ…だって…はやく、ほしいっ…!」
流麗は結合したままの状態でベッドサイドのスタンドから 深い紫色のワインを手に取った。 当然、優斗にそんな余裕はない。 何をしているのかわからない顔で、流麗を見るだけだ。
「りゅれ…っ、はや…くぅ…」 「お前さ、好きなプレイとかってある?」 「……そんなの後にしてよっ…」 「いえよ。たまには変わったことしよーぜ」
疼き、ギシギシに流麗を締め付けながら優斗は考えた。 ワインを飲み干した流麗は、長い髪を後へ流す。 一番気品のある色として言われている茶の瞳。 そして、何よりも価値があると言われる銀の髪。 流麗は真っ直ぐに優斗と見ている。
「…変わったことって…っ」 「例えばー、鬼畜チックな事とか、変態チックな事とか…さ♪」
そういって流麗はモノを一気に押し込んだ。 すっかり油断していた優斗は深く進んだモノにか細い嬌声をあげる。
「ぁぁあっ、ぁ…あっ…」 「縛るのもいいけど、この間やったし…何かいいのねぇ?」 「ぁぁっ、ああっ、ぁ…あっ!」
さっきの一突きで締め付けは更に激しくなった。 欲しくて欲しくてしょうがない。 自分から腰を進めれば済むことなのに、それが出来ない。 流麗から突き上げて、イかせてほしい。 そんな我がままを考えられる余裕があるのはまだまだ限界でない証拠だ。
「バイブもしたし、目隠しもしたし…あ♪」 「……ぁっ、なにっ、やだ、りゅれい…!」
欲求する下半身に歯向かいながら、思い立った流麗に聞き返す。 流麗は一旦モノを引き抜くと優斗を抱きかかえた。 いわゆるお姫さまだっこでベッドから降り、風呂場へ向かう。 湯も張っていない大きな風呂場にお互い裸のまま進む。
「鏡って…使ったことねぇよな♪」 「………っ」 「いいか、ちゃんと鏡の自分を見てヤるんだぞ」
流麗は大きな鏡の前へ座り、優斗の足を命一杯開かせた。 ベッドの上では開ける膝も、鏡の前では抵抗を感じてしまう。 膝に力が入り、開かそうとする流麗に抵抗する。
「……やだやだっ…!やだぁ!」 「開けって。普段、こういう顔してんだぜ、お前」
流麗はそのまま鏡を顎で示した。 涙をいっぱいに溜めた優斗が指されるがままに鏡を見る。 そこは膝は抵抗しているものの、無残な顔があった。 涙が零れ、眉が寄せられ、口もだらしなく半開き。 震える肩、とがった胸の先端。
「ほら、開け」 「やっ!っ、ぁ…恥ずかし…っ」 「ココにいつも俺がいれてやってるんだ」
無理矢理開かされて開脚した足。 股間までもが綺麗に鏡に映し出される。
「…っ」 「見ろよ。美味そうに俺を貪る、イケナイクチ」 「…ばかっ、なんでそんな…意地悪ばっかりっ…」
優斗の弱弱しい声が風呂場に響くが、流麗は全く耳を貸さない。 クリアな鏡に光る優斗の涙。 指を穴へ入れられているその光景がいつもよりずっと新鮮に伝わる。 鏡の中自分を見て、羞恥が滝登りを始めた。
穴でさえクリアに映す鏡。 動く流麗の指は新鮮で、生々しく、犯されてるんだという現実が突きつけられる。
「見ろよ、お前の液。こんなにくっついてくんだぜ」
流麗の指に絡む自分の精液に優斗は思わず目を瞑った。 恥ずかしくて、それでも、それを快感だと感じる自分がいる。
「しっかり見ろって。お前のなんだから、いつも俺が嘗めてんじゃん」 「やだぁ…見たくないもん…」 「黙っていう事聞いてりゃ、怖い思いなんかしなくて済むのに」 「え…?」
優斗が聞き返すのとほぼ同時に優斗の顔には優斗の液が塗られた。 こりつけられる指に、優斗は言葉を失う。 口を開けば確実に指を押し込まれる。 黙って堪えるしかない…。
「んんんっ、ん…んん……っん」 「綺麗だな、優斗。もっと塗ってやるよ」
下半身へ手が伸び、念入りに中をかき回す。 粘着音が耳に届いて、それが終われば耳元での粘着音。 耳へ塗りこまれ、唇にも塗られていく。
「んんっ、やっ…やぁぁああっ!」
口は開けてはいけないと決め込んでいたのにも関わらず、 優斗は大きな声をあげ、激しく暴れた。 下半身にある流麗の顔。 口で優斗のモノを咥え、先端にたまった液を吸い上げていく。 溜まっていた液は流麗の口へ収まっていくが、 自分で出したのとは違う感覚で、なんともいえない羞恥が襲ってくる。 吸い上げるその音。 流麗の口へ収まった液の行き先は当然優斗の…口。 口付けられて、無理矢理唇を割られる。
「んーんんんーっ!んんんー!」
唸り声のような声が響き、優斗の精液が口移しされる。
「ぁ…っ、っ、んっ、ぁ…ごほっ、けほっ…」
放り込まれた精液と、事のペースについていけなく優斗は咳き込んだ。 しかし、休む間は与えられない。 流麗は風呂場のシャンプーのヘッドを外す。 今、どこの家でも使われているであろうチューブがついているものだ。 そして、そのまま何の躊躇いもせずに流麗は優斗の穴へ進めていく。 チューブを押し込む。
「ひゃぁぁあっ、ぁ…っ、りゅうれ!…ぁぁんっ、っはぁんっ」 「んじゃ、もう一本」
そうして今度はボディソープのキャップを外す。 また挿入。
「あぁっは…ぁぁあっ、ぁ…んっ」 「次はコレだな」
薄く笑った流麗の手にはシャワー。 鏡でかろうじて見て、やめてと叫ぼうとする。 しかし、言う間もなく流麗の手は進む。穴を目掛けて一直線。
「やっ、痛いっ!痛っ、痛ー…っ、あん、流麗ッ!」 「んじゃ、チューブ抜いたら入るか?」 「はぁっん…っ、はっ、ぁ……あぁっ」
流麗がチューブを抜き、そしてシャワーの先端を差し込む。 苦しそうではありながら、優斗はシャワーを迎え入れた。 くわえ込んでしまえば、刺激がほしくなる。
淫らだと言われるのは嫌な筈なのに。 こんな風に酷くされるのは嫌な筈なのに。 自ら腰を揺らすなんてしたくないのに。
「腰揺らせよ」 「…っ、やだ…っぁ…」 「ずっと、このままだぞ?」
埋め込まれたシャワーの先端をも咥え込んだ優斗。 腰を揺らせば楽になるのに、腰を動かすことが出来ない。 いや、出来ないなんて事はない。 いつもなら、いつも通りのベッドで、 いつも通り流麗に挿れられていれば、自分から動かせる。 腰を自ら揺らすことでさえ、いつもの事なのだから。 けれど…目の前の大きな鏡。 後に控える流麗の吐息。
「……っ、できなっ…りゅれい…、やって…!」 「どーしよっかな」 「…おねが…い、おねがいっ…」
優斗が言い終わると同時に、流麗は優斗の顎を掴み引き寄せる。 当然のようにそのまま甘い口付けへと誘う。 貪るような口付けではなく、唇だけの口付け。 唇を放し、優斗の乱れきった瞳を覗き込む。
「…可愛い」
流麗の一言で、優斗の頬は一瞬で染め抜かれた。 けれど、そんな甘い時間に浸っていられるのはほんの数秒だ。
「揺らすぞ」 「んっ、ぁあ!ぁあっ、あっ、ああっ…ぅっ、あ、んんっ」 「ふっ、シャワーまで喰うんだな、お前」 「ひゃぁあっ、ぁ…っ、ぁあっ、も…っ」
激しい粘着音に揺らせなかった腰が動き出す。 手当たり次第引っ掻き回す子猫のように先端が騒いだ。
「すっげぇなココ」 「ぁあっはぁ…っ、んっぅっ、ぁ…!」 「イくか?」
薄く笑ったまま、流麗が言うと、優斗は深く一度だけ頷いた。 流麗の手はいっそう速くなる。 悲鳴がテンションを上げる。
「いやっ…っ、ぁ!…ぁ…りゅれ…っ、ぁあああっ!」
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「おはよ」
朝4時半。 まだ薄暗く、雀の声も聞こえない。 その闇の中で優斗はゆっくり瞳を開けた。
「………おはよ…う」
ベッドの上。 しっかり毛布をかけられて、眠っていたのだろう。 服もしっかり着せてあり、ベトベトのはずの顔もすっかり元通りだ。 いつも流麗との行為の後はこうだった。 絶頂へ辿り着いた優斗はそのまま意識をとばしてしまう。 そんな優斗を流麗は抱きかかえる。 身体を拭き、服を着せ、風邪をひかぬように温める。
「まだ寝ぼけてんのか?」 「うん…?」 「はははっ、完全に寝ぼけてんな」 「………ん」
夢の中を彷徨っているのではないかという虚ろな目のまま 優斗は流麗に抱きついた。 布団の中などよりもずっと温かい流麗の胸。
「……流麗」 「…ん?」 「………なんでもない」
幸せそうに笑う優斗は、ぎゅっと流麗の服を握った。 そしてまた夢の中へ。 流麗の美しい銀の髪が、段々と朝日に濡れていった。
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