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 (香港 人体改造 鬼畜 /18禁)
金魚博物館 後編


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職場である海洋公園を離れ、香港仔トンネルを通り抜けて北東方面に車を走らせること30分、地下鉄港島線の終点であるチャイワン地区にたどり着きました。構内へと続く階段に痰唾が吐き捨ててあったのも昔のこと、ポイ捨てに罰金が科せられるようになった今ではタバコのフィルターひとつ落ちてはいませんでしたが、たまにガムがこびりついていたりするところが清掃担当者の手抜き具合を表しています。

中途半端な清掃が施された地下鉄の駅から徒歩5分のベトナム料理店を右に曲がって30m先ほど行ったところにある、『港島大厦』こそが、変態金魚愛好家メリッサの自宅マンションでした。ここ香港では眺めの良い高層階ほど家賃が高くなるのが常なのですが、彼はなぜか一階部分と地下階を借りて住んでいました。

別に金がなかったわけではありません。
これから彼が作り出す、新しい金魚を養育するには地下の方が何かと都合が良かったからです。

そんな秘密の場所ともいえる自宅の地下室には、人間として生まれたはずの尖晶を一匹の金魚として生まれ変わらせるための、ありとあらゆる器具が用意されていました。部屋の真ん中には、台部は3cmほど窪んだ形になっており、上方にはシンクや水道の蛇口が取り付けられている
ステンレス製のベッドが置かれているではありませんか。どう考えても、普通の家具店では到底見ることができない代物です。

ベッドにはなにやらハンドルのような鉄輪がマット部分を取り囲むような形で取り付けられており、腕や脚を乗せるための小さな台座も設置されていました。本来は脊椎などを怪我して寝返りをうつことができない人の体位変換の為に作られたベッドだと思われますが、このたび、解剖台としても使用できるようにわざわざ改造したのでしょう。

「さあ着いた。今日からここがお前の家だ」

メリッサは解剖台の上にアルバイト君をそっと横たえると、身に着けていた衣服をすべて脱がせました。正月に飾る鏡餅のように白い肌には傷ひとつ無く、未だ女を知らぬと見える陽具は亀頭の部分まで皮に包まれています。勤続数年にして初めて触らせてもらった首筋からは、規則正しい脈拍や体温といった、生きた人間であるという確証の数々が伝わってきたのでした。

「ふふ。お前はまだまだ子供だったんだな。もっとも、普通の人のように長生きはできないだろうが。・・・・・でもまあ、感染症を起こさなければ少なくともあと10年は生き延びてくれるだろう」

彼は軽く寝息を立てている尖晶の唇に自らのタバコ臭い唇を軽く押し当てたあと、どこから持ってきたのか知りませんが、滅菌袋に入ったままの真新しい手術着をクローゼットから取り出し、それに着替え始めました。そして文字通りまな板の上の鯉となっているバイト君の手足をベッドの台座部分にきっちりと固定すると、右腕の静脈に全身麻酔薬を投与したのでした。

正月にもらった年賀状の全部が全部、5等の切手シートが当たっていました・・・というくらいの嬉しさを感受しながら、メリッサは輸血用の血液や拭血用の滅菌ガーゼを次から次へと取り出しては、横に置いたテーブルに並べていきました。用意されたメスは100本以上でしょうか。メスの替刃もハンドルも開封したばかりの新品でしたから、価格にしたら100万円は越していることでしょう。医療用のマーカーペンを手にした変態主任は、以前から用意しておいた人体カラーアトラスを参照しつつ、皮膚の切除が必要な部分にマーキングを施していったのです。

・・・・・・・・この男の周りにいる人々にしてみれば、休日ともなれば園内ではしゃぎまわっている子供たちを相手に金魚についてのあれこれを優しく語り、またある時など、近隣の小学校から『いきもののそだてかた』と題した課外授業の講師として招かれては命を育むことの難しさと大切さを伝えてきた男が、このような変態極まりない欲望を心中に抱き、いつか実行に移してやろうと計画していたなどとは思いも寄らなかったに違いありません。意識を沈められて解剖台に横たわる金魚少年の全身を、消毒薬を含ませた脱脂綿で丁寧に拭い取っていきました。

昔懐かしい『独占!女の60分』がすべて観終わってしまえるほどの時間が過ぎたでしょうか。ところどころに陰毛が絡みついている脱脂綿をピンセットごとポリバケツに放り込んだメリッサ主任は、手術用のキャップとマスクを嵌めながら呟きました。今から始められる所業・・・すなわち手術を開始する準備がすべて整ったのです。

「今からお前を可愛い金魚にして、私が一生の間飼ってあげようね」

そんな一方的な宣言を終えるとともに、メリッサはマーキングを施した部分にゆっくりとメスを入れました。溢れ出した鮮血を滅菌済み脱脂綿で丁寧に拭い、動脈や神経を傷つけないように気を遣いながらも、当該箇所の皮膚を切除していきます。

人間であったはずの肉体を、昔ながらのメスを使用して少しずつ、少しずつ他の生物のそれに変えていく・・・これ以上彼を興奮させる行為は世界の何処にも見当たらなかったことでしょう。メリッサにとって、それはパチンコでリーチがかかった瞬間の500万倍は血湧き肉踊るものだったのです。

大腿部の切り開いた部分を交差するようにして重ね合わせ、その上をまた縫合していきました。つまり、傷口がくっついた状態で固定してしまおうと言うのです。このまま治癒すれば、接合された部分の組織が癒着して、やがては一本の脚のようになってしまうことでしょう。そうすれば、彼の両脚は一生この形のまま、動かすことができなくなるのです。
指先の神経を極限まで集中させなければならないような作業であるにもかかわらず、メリッサは実に根気よく丁寧に、縫合糸とピンセットを繰り回していました。

投与された全身麻酔のおかげで、尖晶君はおとなしく目を閉じたままです。もっとも、こんなふうに自分の身体が改造されていく過程を目の当たりにしたら、とてもじゃないですがまともな精神状態ではいられなかったに違いありません。

続いてメリッサは陰茎の両側の皮膚を10cm程度切開すると、内股に開けた傷口とナイロンブレイドで接合させました。余計な包皮も取り払われたのですから、タダで包茎手術をしてもらえたと感謝すべきなのかもしれませんが、もはや尖晶の下半身は人間というよりはむしろ、童話に出てくる人魚姫のような形に変形させられてしまっていたのです。

「お前はもうずいぶんと長い間、この金魚博物館でアルバイトに勤しんでいたね。お前はこのまま金魚になるんだよ・・・」

彼はそう囁きながら、ベッドに取り付けられたハンドルを回転させ、かわいそうなアルバイト君の身体を裏返しにしました。日に当たることのなかったそれは手足よりもずっと色白で、また高級めがね拭きにも負けず劣らずのきめ細やかな肌ではありませんか。少なくとも、日焼けのし過ぎで皮がボロボロ取れてくるような状態でなかったことは確かです。

ところどころに見受けられる小さな黒子、ラクダのこぶなどとは比較すること自体が失礼なほどに美しい曲線を描く肩甲骨、山形食パンのトップを思わせる、かじりつきたくなるような臀部・・・・・。
通常の人なら、この状態で尖晶を犯したいと願ったことでしょう。

ところがメリッサは違います。
両腕をつけた完璧な姿のミロのビーナスが直筆サインをくれたとしても、レオナルド・ダ・ヴィンチの描いたモナリザが眼前に立ち現れて乳首を見せてくれたとしても、嬉しくもなんともありませんでした。彼にとって人間の形をした肉体は用のないものだったのです。

病気で手術が必要だというのなら話は別ですが、この男がやろうとしていることは単なる趣味に他なりません。そんな理由で人様の身体にメスを入れようなどとは不届き千万、来世はムカデに生まれ変わったとしても文句が言えないほどの大罪です。

しかし地獄も来世の存在も信じていなかった変態主任は、弛緩している尖晶の両腕を後ろに回し、交差させた手首を包帯でゆるく固定すると、大腿部の内側部分と同じように腕の皮膚を切開していきました。内側部分の組織がむき出しの状態になった両腕は、まるでマグロの刺身のように真っ赤に染まっています。

献血センターから褒められそうなほど質の良い鮮血にまみれたピンセットをバットの中に置いたメリッサは、額に滲み出ていた汗を滅菌済みのガーゼで軽く拭き取り、マスクの下で大きな溜息をつきました。

「ふう・・・よし、手足はこれでいい・・・・・。あとは包帯で固定するだけだな。・・・っと、ついでに口の方を片付けておくかね」

全身麻酔のおかげで痛みは全く感じていないのでしょう。アルバイト君は穏やかな表情のまま目を閉じています。酸素を確保するためのチューブを経鼻用のものと交換し、顎が外れる寸前まで口を開かせると、虫歯の一本もなかった自慢の永久歯をひとつひとつ引き抜いていきました。
歯の根元が歯茎から離れる際、2、3本束ねた細い釣り糸を引きちぎったかのような感触が、抜歯鉗子を通じて伝わってきましたが、この男にとってはそれすら快感です。

「まあ眼は残しておこう。水槽の中からも私の顔がはっきりと見えるように、レンズをつけてあげようね」

そうして両眼の瞼をメスで切開し、水の中でも鮮明な視界を保つことができるようなレンズを嵌めると、傷口部分に縫合テープを貼って、またさらにその上から包帯を幾重にも巻きつけました。手術台の周りは、既に切除された皮膚や溢れ出した血液でベタベタになっています。まさしく魚をおろすかの如き作業に一片の疲れも見せなかった主任は、手術台の脚についていたブレーキを解除すると、ひとつに接合された両手足に包帯を巻かれ、鼻と口に流動食を摂取するためのビニール管を通された姿のアルバイト君を隣の部屋に運んでいったのでした・・・・・・。

・・・・・・・・・・・
それからというもの・・・・・無菌室の中、彼はずっと睡眠薬を投与され続け、強制的に眠らさせていました。むしろ、人工的な昏睡状態にさせられていたといった方が適切だったかもしれません。なぜならば、それは通常の眠りよりもさらに深い、夢すら見ることのないものであったからです。墨汁のように真っ黒な沼の中に意識を沈められているかの如く、尖晶はずっと眠り続けていました。その間、世界では戦争や内戦、ロケット打ち上げに石油価格の暴騰などが起こりましたが、彼がそれを知ることはありませんでした。

いいえ、これから先一生・・・テレビを観たりラジオを聴いたり、買い物に行ったりはできないのです。彼にとって、人間としての生活は既に過去のものでした。なぜなら尖晶はメリッサの施した手術によって、もはや別の生物といっても良いほどその身体を変化させられてしまったからです。

切開した部分の癒着を早めるため、傷口にはガーゼ包帯がきつめに巻かれています。包帯の合間から陰茎の先が覗いていましたが、そこからは排泄物を放出するための細いカテーテルが取り付けられていました。当たり前ですが、肛門にもやや太めのチューブが挿入されており、ドロドロの糞便を排出し続けているのです。

例の主任は毎日毎日・・・台風が来ようが総選挙があろうが必ずこの地下室に姿を見せました。あちこちを切開され、傷口同士を縫合された尖晶の全身を保護している包帯を取替える際、その癒着具合を確認してはほくそ笑むというどうしようもない始末だったのです。

大陸で女を買い、ホテルにしけこんでいたところを運悪く写真に撮られてしまった政治家もびっくりのおぞましい所業ではありましたが、彼の心は以前から抱いていた願望を遣り遂げたという充足感によって満たされており、その嬉しさが枯渇することがありませんでした。以前にも増してにこやかな顔をもって子供たちに接し、熱心に金魚の世話をするようになったメリッサの様子を見た周囲の人間も、これまた無関心な香港人らしく、『きっと彼女でもできたんだろう』・・・と考えるに留まり、深く追求することはなかったのです。

日の光も射さず、外部の音も遮断された地下室において、尖晶は長い間眠りについていました。彼の身体には糞尿を排出するためのチューブや、感染症を防ぐための抗生物質や睡眠薬が混合された点滴、そして栄養摂取を目的とした高カロリー輸液といった様々な管が繋げられており、傷口を固定させて癒着を早めるため、包帯のみならずその四肢もベッドの四隅にベルトで固定されていたのでした。

もちろん、抜歯による感染症を起こさないよう、口腔内にも消毒薬と抗生物質の混じったクリームを塗布されています。点滴で栄養を摂取し、抗生物質と睡眠薬を投与されるだけの毎日が延々と続きました。 その間アルバイト君は一度足りとも目を覚ますことはなく、朝、昼、夜と行われるチェックによって生きていることが確認できる程度です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、手術からちょうど2年の月日が経ちました。
某巨大遊園地の開園とともにそのが存在危ぶまれていた海洋公園ですが、『ついでだからこっちも見ていこう』・・・と考えた大陸からの観光客が多数入場したことによって多少は持ち直し、金魚博物館にも多くの人が訪れるようになりました。現在、金魚の水槽は数名のアルバイト君によって毎日洗浄されていましたが、当然その中に尖晶の姿はありません。

・・・・・・妖精王オーベロンとその妃ティターニアが舞い踊りそうな真夏の夜のこと、例の主任宅において、今まさに一匹の新しい金魚が生まれようとしていました。

・・・・・・。
ここは・・・・水の中?・・・
ああ・・・僕は一体今までどうしていたんだ・・・・・・・・
随分長い間・・・・・

麻酔薬の投与を停止され、久しぶりに眼を開けた尖晶は一瞬、自分は間違えてゼリーの中にでも混ざってしまったのかと思いました。周りは水に囲まれていましたが、呼吸はできるようです。驚きのあまり最大まで開かれた眼球の前を、リュウキンやデメキンたちが大きな尾ひれを揺らしながらゆらゆらと通り過ぎていきました。

そうして元アルバイト君が一体何が起こったのかを掴みきれずに狼狽していると、例の金魚博物館主任・メリッサが姿を現しました。おそらく、尖晶が意識を取り戻すまで待っていたのでしょう。彼は偉そうに腕を組んだまま満面の笑みを浮かべています。

「気がついたか尖晶。その姿はとてもかわいい・・・・・・かわいいよ」
(・・・・・・・・・)
「私は金魚が好きなんだよ。可愛らしい金魚が大好きなんだ」
(・・・・き・・・、きん・・ぎょ・・・)

ガラスを通して主任を見た尖晶は、まさしく海底からむりやり水族館に連れてこられたシーラカンスにも等しい混乱振りでした。2年間ほとんど使用されることのなかった彼の大脳新皮質が現状を理解するためには、メリッサ本人からの懇切丁寧な説明を待たねばならなかったのです。

「薬のせいで、自分の置かれている状況が良く理解できていないのだな。教えてあげよう・・・」
(・・・・・・は・・・あ?)
「お前の手足は、必要な箇所の皮膚を切除したあと、切開した部分をナイロン製の縫合糸で縫いつけたんだ!あれから2年以上経っているから、もう完全に皮膚と皮膚が癒着してしまった・・・。無理にひっぺがしたら大出血を起こして死んでしまうし、それこそ死ぬほど痛いだけだぞ!」
(・・・・・・に・・・2年?2年ってなんなんだ・・・・・・。金魚って、手術って何・・・・)

「そこで泳いでいる金魚たちのように、全身をうねらせて水中を移動するんだよ。浮力が働いているからそんなに苦じゃないとは思うけれど、慣れるまでは大変かな・・・」
(いっ・・・・・いや!アアアア!いやだ・・・!!!出してください!もとの身体に戻してください!!!おねがい・・・・)
「はは・・・・そこから出たそうな顔だね。でももう無理だ。だいたい君はもう2年前に死んだことになっているんだよ!もうあきらめてここで暮らすしかない。一匹の金魚としてな」
(誰か、誰かたすけて・・・たすけてくださいぃ!いやだ・・・こんなの嘘だ僕じゃない僕じゃない!!!うああああ!!!)

水中からとは言え、両目にレンズを嵌められているおかげで主任の顔は明確な輪郭を持って彼の視界に飛び込んできました。
これが、あの穏やかで真面目そうな主任と同一人物なのでしょうか。
大きな水槽の掃除をして疲れたあとなどは、必ずお茶とお菓子を出して労ってくれた優しい主任なのでしょうか・・・。
尖晶には現実を受け入れ、それを信じることがどうしてもできませんでした。

「食事・・・・・いや、餌と水はその管から入れてあげる。だけど排泄物は垂れ流しだ。水槽の中にトイレがあるわけないからね。お前も毎日、水槽に溜まった糞を取り除いてやっただろう・・・・」

ここから逃げ出すことはおろか、鼻と口に挿入された管のおかげでもはや声を出すことすら不可能でした。いえ、舌がないとあってはどうあっても無理なことです。プールのように広い水槽の中、彼は残りの生涯を100匹もの金魚のうちの一匹として過ごすのでしょう。

(誰か・・た・・、たすけて・・・・・こんなの・・・。家に・・・・かえりたい・・・・・)

絶望の涙は瞳から零れ落ちたその瞬間に、水槽内に満たされた水の一滴となって消えてしまいました。指先だけはなんとか動かすことが出来ましたが、腕や大腿は、背中の皮膚やもう一方の脚と接合されているため、どうすることもできない有様です。

「残りの人生、ただそうやって浮かんでいるだけじゃつまらないと思ってね。ちょっと嬉しい仕掛けをしておいたよ」

アルバイト君の細い両脚は大腿の内側部分がぴたりと密着させられ、その間に陰茎が収まった状態で縫合されていたわけですが、そこに、外からのリモートコントロールで動作する小型ローターを仕込んでおいたのです。こんなものはピアスと同じで、内部に挿入した直後こそ違和感や痛みを感じるものの、完全に治癒してしまえばもう肉体の一部となってしまうようで、尖晶自身、そんなものが入れられていることすら当初は全く気がつきませんでした。

水槽の脇にあるガラステーブルの上を見ると、そこには味気ないボタンがひとつと、『強・中・弱』のダイヤルがあるだけという地味なコントローラーが置かれています。・・・とは言っても学習雑誌のおまけについてくる理科の教材にも劣る出来具合で、単3の乾電池が2本あれば動作するであろう代物です。メリッサはそれを手に取ると、水槽の中で浮かんでいる尖晶に向けてスイッチを押しました。

(!!!?・・・な、なに・・・あっ・・・!!なにか・・・うごいて・・・・?)

すると大腿部に装着されたローターが振動を始め、縫合された陰茎に刺激を与え始めたのです。しかし、勃起することはありません。盛り上がる感覚は伝わってくるものの、大腿部にすっぽりと入れ込まれた形で癒着してしまっているため、物理的に不可能でありました。

一匹の金魚として生まれ変わった尖晶は、映画『マトリックス』のワンシーンかと思うほどにも身をよじり、股間から脳髄に伝達してくる刺激に耐えようとしています。そんな様子をガラス越しに眺めていたメリッサは、コントローラーのダイヤルを『強』の位置まで回して言いました。

「よし、スイッチが入ったみたいだな。水中でちゃんと動作するかテストできなかったから心配していたが・・・良かった」
(あっ!・・・あ・・・・・!な・・に・・・・・アッ・・・!)

水中で苦悶している尖晶の姿を、メープルシロップがとことん沁み込んだホットケーキのようにベタベタとした面持ちで観覧しているメリッサの姿は、まさしく地獄で罪人を痛めつけている悪魔の如きものでした。
酸素チューブを挿入され、声の出ない口で喘いでいる様子がますますもって陰茎の興奮を誘うのでしょう。彼は水槽の前にしゃがみこむと、手の平でコントローラーを弄びながら言いました。

「このスイッチを押すと、お前の陰部に取り付けておいたローターが振動する。どうだ・・・気持ちいいだろう」
(ひっ・・・あ・・・・!!やめ・・・止めて・・・)
「かわいい金魚・・・。私は一生結婚せずお前を養育するよ。世界に一匹しかいない、私の作り出した金魚だからな」
(・・・・・・っ、は・・・・・。やぁ・・・・・あっ・・・)

・・・・断っておきますが、これは何も人気のない田舎で起こった出来事ではありません。一歩外に出ればスーパーあり、税務署あり、ソープランドありといった、ごくありふれた香港の街角でなされた行為に過ぎないのです。

ただ、 たった12段かそこらの階段を降りたというだけなのです。

『あの階段さえ上ることができたら、元の姿に戻れるかもしれない。家に帰れるかも知れない』メリッサがこの地下室にやってくる際、彼の背後に覗く石造りの階段を水中から見る度に、尖晶はそう考えていました。

ところが金魚少年にとって、それは精神が狂わんばかりの苦痛でもあったのです。それはまさしくあと1cm指が長かったら背中の痒いところを思う存分掻きむしることができるというのと同じで、おそらくは永遠に叶わぬであろう希望を抱くことは、裏返してみれば究極の絶望に他なりません。家主の用が済んだ後、無情にも閉ざされる扉を幾度となくその視界に入れているうちに、彼は次第に考えることを放棄するようになりました。

そして・・・・・

これより1年の後、かつては人間だった朱尖晶はもはや何も考えることはなく、チューブを通して与えられる食事を飲み下しては水槽内に排泄し、陰部に伝わるローターの刺激を甘受する日々を送るようになりました。たまに手術の跡が痛むこともありましたが、『辛い』だとか『悲しい』などといった、人間らしい感情は既にありません。精神的にも肉体的にも、一匹の魚と成り果ててしまったのです。

そんな金魚君を見ていた飼い主は、香港人口700万のうち、誰一人として聞く者のない言葉を呟いたのでした・・・・・。

「新しいアルバイトも増えたことだし、もう一匹入れてみようか。なあ・・・」
「※こちらはちょっとグロ系?なのでご注意を」
...2005/12/20(火) [No.260]
サッカリン
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