「何見てんの。」 「えっ?」 突然隣で本を読んでいた彼に話し掛けられて驚いた俺は思わず間抜けな返事を返してしまった。
「さっきからずっと僕の事見てるよね。何?何かついてる訳?」 「イヤー・・・。素敵な眼鏡掛けてるなぁってさ!ははっ」 「ふーん。」
ああ。冷たい視線が痛い。 だって仕方ないだろ? あんたのその長い睫毛とか、いつも眼鏡に隠されてる綺麗な茶色の瞳だとかその色素の薄い髪の毛だとか、ソおいうの見てたら、
(可愛い!)
(今何考えてるんだろ・・・。まさか好きな人でも!?)
(・・・・・抱きたいなぁ)
とか考えちゃってる俺は相当重症なんだから。
ま、まさしくこれが恋の病って奴?
所でここは図書館。俺は今日の授業が全て終了してこいつとここに来た。俺は特に本が好きって訳じゃあないけど、こいつが本を読むのを見るのはとても好きだ。 だってさぁ、こいつ顔はすごく良いけど、すごく意地悪だからさ、でも本読んでる時だけは何も言わないから好き。
「・・・・あのさ、」 「何。」 あいつが少し溜息をついて言う。 「もう帰る?」 「えっ!!」 「だって暇そうじゃん。本読まないんだからつまんないでしょ。もうそろそろ六時になるし、帰ろうか?」
いや、全然暇じゃないっすよ。どっちかと言うとあなたを見詰めるのに忙しい。あっ、そう言えばaikoでこんな歌詞あったな。 えーっ、まだ帰りたくないィーっ、まだ見てたぁい。
「帰ろう。さっ、準備して。」 俺に帰りの準備を促す。仕方ないからしぶしぶ頷く。
「ほら、もうこんなに暗くなってる。」 帰り道ブスっとしている俺に話しかけてきた。 確かにもう空は暗くなり始めていた。そろそろ冬なのだろう。
俺はまたこいつの横顔を盗み見た。 白い肌に、夕日を映している。 綺麗。
「まーた、何見てるのかなぁこの子は、」 「痛いって!!」 視線に気付いたのかほっぺたをつねり上げられた。 「あんまり見てませんっ!だから放せ!」 「まぁ!言うようになったわね。市ちゃんも!」 放された時には頬に痕がついていた。 やっぱりちょっと痛くて、俺はさして身長が変わらぬこいつを睨んだ。
「何が市ちゃんだ。お前は女みたいな顔しやがって。」 そこもとても良いんだけどね、と心の中で付け足す。 「あっ、もしかして怒った?ごめんねぇ、市ちゃん。」 飽くまで好戦的なこいつに俺は腹が立った。 と、。
思いついた。 「なぁ。蒼くん。」 「何いきなり。薄気味悪い笑みを浮かべて。」 薄気味悪くて悪かったな。こちとら元からなんじゃ。 「お前来週誕生日だったよな?」
そう。俺の記憶が正しければ来週はこいつの誕生日だったはずだ。 「そうだけど。何?プレゼントあげる変わりになんかもらう気?お金ならあげないよ。」
言ったな。 お金ならくれ無いんだな。 じゃ、金なんか要らない。 お前の貞操が欲しい。
俺はそんな汚いことを考えていた。 「金なんかもらうかよ。いや、只単にお前の誕生日を祝ってやろうと思っただけ。」 「ふーん。」
そんなこんなで俺は来週、蒼の誕生日を祝う約束を取り付けてその日は別れた。 蒼はじゃ僕の欲しい物頂戴よ、と言った。 良いですよ。 あげますよぉ。 失うものがおっきいかもしれないし。
※
僕には同い年の幼馴染が居る。 黒目がちの大きな瞳に、茶色い髪。 妖しく光る紅い唇・・・。 その全てが僕を誘ってうように扇情的で、僕の理性は常に限界点ギリギリだ。 いつしか僕は彼を愛してた。 隣に居るとドキドキするし、彼が僕以外の人と話してるのを見ると嫉妬だってする。
とにかく僕は彼依存症なのだ。 何をするにも彼が一緒じゃなければ嫌だ。 彼と違うクラスなんかになるのならば、学校にも行きたくないし。(幸い僕達が通ってる学校は成績順にクラス分けをするので僕が成績を落とさない限り彼と一緒のクラスではある。ラッキィ!)
そんなこんなで僕はずっと彼に恋してる。
そんな彼は僕が本読んでるときにはものすごく凝視する。 これこそ穴があくほど見詰めるって程。 僕の顔になにかついてるのかな? それとも僕に惚れちゃった?
なーんて悠長なこと言ってられ無いくらい見詰められてるのに気付いて僕はとうとう言う事にした。
「何見てんの。」 「えっ?」 やっぱり見ていることに気付かれてるとは欠片も想ってないみたいね。 驚いた顔してる。
「さっきからずっと僕の事見てるよね。何?何か付いてる訳?」 「イヤ・・・。素敵な眼鏡だなって。ははっ、」 「ふーん。」
その割には目が泳いでますけどお。 素敵な眼鏡って、それ僕が鼻眼鏡掛けた時と同じ反応じゃない?
僕は彼に嘘つかれた事に腹が立ったので、そのまま帰ることにした。
二人での帰り道、また彼が凝視してるのに気付く。 またかよ。なんか付いてんのかよ。
「まーた。何見てんのかなぁ。この子は、」 僕は彼のほっぺたをつねり上げる。
相変わらずもちみたいだなぁ。
「痛いって!」 彼が顔を真赤にして叫んだので僕はビックリした。
「あんまり見てません!だから放せってば!!」 「まぁ!言うようになったわね。市ちゃんも!」 僕はいいかげん手を放す事にした。 手を放して後悔する。 アチャー、やっぱり痕残ったか。
市が僕を睨む。
ヤメロ。そんなことしても誘ってるようにしか思えないから。
「何が市ちゃんだ。自分は女みたいな顔しやがって。」
そうか?僕はそんな顔してないけど。 もちろん君に比べたら、の話だけど。
「あっ、もしかして怒った?ごめんねぇ、市ちゃん。」
この一言で彼が怒ったのが分かった。 初めてではない僕はドンと構えていた。
と、。
「なあ、蒼くん。」 彼が僕の事を呼ぶ。 いきなり呼ばないでヨ。僕の心臓の音止められなくなっちゃうじゃない。
「何、いきなり。薄気味悪い顔して。」
そんな事無いよ。ぜんぜん君可愛いからね。 嘘。今のは言葉のあや。 赦してちょんまげ。
「お前来週誕生日だったよな?」
嬉しい。 覚えててくれたんだ・・・。 僕はとにかく感激した。
「そうだけど。何?プレゼントあげる代わりになんかもらう気?お金ならあげないよ。」
やばい。今怖いくらいにたにたしてる。やばい嬉しすぎ。
「金なんてもらうかよ。イヤ、只単にお前の誕生日祝ってあげようと思って。」
「ふーん。」
「来週俺の家に来て。その時に祝うから。」
そう言われた。 それって何? 僕を誘ってる訳?
僕は考えた。 もしかしてこれはチャンス? 神様が僕のための。 ならば有難う、神様。あなたを信じてる訳じゃないけど。
「じゃ、僕の欲しい物、何でもくれる?」 僕はそう聞いた。 そう。 僕にだって欲しい物があるし。
君の貞操が欲しい。
「分かった、何でもやるよ。俺の家に来週の土曜日、一時半にこいよ。」
やりぃ。
僕はこの日これで別れた。
僕はヤバイくらい本当にうれしかった。 でも心と身体は恐ろしいくらい彼の肉体の事しか考えてないんだよな。
※
俺はその日着々と部屋の片付けをしていた。 蒼が家に来るのが午後一時半。家の人は全部追い出したし(だって蒼の色っぽい声を他の人に聞かせるのは勿体無いし)ちゃんとゴムも買った。この日の為にその手の本も買った。勉強したんだ。ジェルもあるし。初めての時が汚い部屋だったら蒼も嫌がるだろうし、だから俺は部屋を綺麗にしてる。
思えば長い道のりだった。
俺は昔から蒼の事が好きだった。 あの綺麗な瞳。 美しい髪の毛。 陶器のような肌。 今日それが手に入る。
本当はあきらめようと思った。 だってこんな気持ち気持ち悪いだけだから。 でも、俺があいつよりちょっと早い誕生日迎えた時に、あいつは言ってくれたんだ。 「僕は好きで君の隣に居るんだから。嫌だったらずっと一緒になんて居ないよ。」 俺はそれがあいつの精一杯の告白だと思ってしまった。 だから今日もし嫌だったら、すっぱりあきらめるけど・・・。 やっぱり俺のことは友達として好きだったのかっ、てね。
一時三十七分にチャイムが鳴ったので、俺は急いで玄関のドアを開けた。
「十七歳おめでとう。」 「ありがと。」 俺はまず始めにそう言った。 「さ、入って。」 俺は蒼を促す。お邪魔します、と言って蒼は中にあがった。
部屋に入って俺は何だか緊張し始めた。
ああ。今から俺がこいつのこの体抱くのか・・・。折れちゃいそうだけど。 何から切り出そう・・・。
そう俺が四苦八苦してる時に沈黙を破ったのは蒼だった。 「ねぇ、僕のプレゼントは?」 その言葉にハッとして俺は小さな箱を渡した。 そして今、お返しをくれと言おうとした。 と、。 「これ僕が欲しがったものじゃないけど。」
思わず頭が白くなる。 そう言えばそんなこと言ったけ。 ちょ、何が欲しかったの!?
「僕が欲しかったのこれじゃないんだけどぉ。」 「じゃ、何が欲しかった訳?」 俺は思いきって聞いてみた。 「うーん、それはぁ・・・。」 上目遣いに俺を見る。 ヤメロ。そんな目で俺を見るんじゃねぇ。 襲うぞこら。
マジ俺が鼻血もんなのに、こいつはとことん俺を焦らしてそっと俺の耳で囁いた。
何、何?何なの? 今何言っても俺は止まれないよ。
「市の貞操が欲しい」
俺は凍り付いた。
「えぇええええええ!!!」 あら、やだ、この子ったら本当何を言ってるのかしら。 冗談はこれぐらいにしなさいよ。 本当に。 市原悦子で御座います。
俺のフリーズが解けた時に蒼は俺の身体をしっかりと押さえ付けてた。 「逃げちゃだめだよ。今日は僕の誕生日なんだから。くれるんでしょう?」 「えっ!嘘はだめだぜ、蒼!!」 こいつの腕の中で必死に俺はもがく。 「嘘じゃないもん」 綺麗な顔をちっとも崩さずに涼しい顔で言う。 「ずっと好きだったもん。今日だってそのつもりだったんでしょう?本当は僕が何したいか分かってて誘ったんでしょうが。観念してよね。」 「そのつもりはあったけども!」
それは飽くまで俺がタチであって、ネコ予定じゃないんだってば! しかしその悲鳴は届かず、俺はどんどん服が脱がされてく。
「あーっ!変態!!服を脱がすな!」 「だから、観念してってば。あっ、こんなとこにジェルが。やっぱり分かっててくれたんだ。大丈夫なるたけ優しくするよ。」 「そんな問題じゃない!!あっ・・・、」 背骨を指でなぞられて思わず声が出てしまった。 「・・・・うわぁすごい。市、今すごい色っぽい顔してる・・・。」 次々に弱いポイントを攻められて、俺はすぐに快楽に陥落した。
「酷い、酷い、酷い、」 「はいはい、僕が攻めすぎたのは分かったから、そんな引け腰で睨まないでヨ。」 「なんだと!?お前が悪いんだろうが!!」 「だからそれは僕がやりすぎたって言ってるじゃん。ごめんってば。」 「じゃ、次は俺がイれる」 「それは無理。」 「うわぁ、初めて見た時はこんな人だとは思わなかった。」 「どんな人だと思ったのさ。」 「小学生にして「モディリアーニ」何て言う画集見てた。生意気なガキ。」 「よかったね。あってたじゃん。」
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