ロミオとジュリエットの話は悲しい。 僕はそう思った。 どうして二人は結ばれなかったの? 親が敵同士というだけで結ばれなかったロミオとジュリエット。 可哀想・・・・。 でも現代では有り得ないと僕は思った。 親が敵同士とか、何、その偶然。有り得なくねぇ?
だから僕は自分がそんな恋をすると思ってなかった・・・・。
※
僕はその日図書館に行った。帰りに、「1290番地」の前を通ってきた。 そして溜息をつく。 「龍我組本部って書かれてる・・・・。」 表札を見て僕は頭を抱えた。 (・・・・マジかよ。マジ有り得ないよ。何この現代版ロミジュリ。いや、確かに自由恋愛の時代だよ?けど、ヤーさんのせがれと裁判官の息子ってのはねぇ・・・・・。幾ら何でもまずいよ)
「龍我組」の門の前でしばらく考えてた僕は、突然人に話しかけられた。 「生徒会長じゃないっスか?」 「君は・・・・?」 現れたのは僕が全然知らない人だった。でも顔を見ると僕とそう、年齢が変わらないような気がした。 「オレっすよ。同じ学校の、三年生の、劉騎さんの子分っす!」 そう彼がふかぶかとおじぎをした。 そこで僕はそう言えばこんな顔が三年に有ったなぁ、と思った。 「ああ、君?君は劉騎さんの友達かな?・・・出来れば聞きたいことがあるんだけど・・・」 「えっ・・・・?別に良いですけど。何か聞きたいんですか?」 「ここってさ、」 僕は「龍我組」の門を指差した。 「もしかして劉騎さんのお家かな?」 「そうですけど。」 僕の視界が一気に真っ白になる。
嘘・・・。本当にカよ・・・・。
「会長どうかしたんですか?顔色が悪いですけど・・・・。」 「そぉ・・・?ねぇ、今のマジ?冗談とかじゃなくて?」 僕は声を振り絞って聞いた。 「やだなぁ。嘘じゃないですよ。だって嘘なんか吐いたら劉騎さんに殺されるし、例えオレと会長が恋のライバルだとしても、やっぱフェアーじゃなくっちゃね。」 彼はパチンとウインクした。可愛くないし、なんか今聞き捨てなら無いようなこと言ったし、どうか夢なら覚めて・・・。 「だって僕らの学校って偏差値高いんだよ。悪いけど不良の人が来れないような学校のような気がするんだけど・・・。」 「それなら心配ないですよ。ああ見えても劉騎さん頭は良いですから。入試では会長の次席でしたそうですよ。」 「でもヤーさんのせがれがよくあの学校入れたね。あの学校は家系を調べるのに・・・。」 「それも大丈夫。世の中金の力でなんとでもなりますから。」 「でも・・・・」
僕はもう声が出なかった。 やっぱり僕らはロミジュリ。 結ばれない運命なの? ううん。 そんなことにはさせない。 僕は必ず君と結ばれてやるから!
僕は再び「龍我組」の門を見上げて、そう誓った。
でもこの日は疲れたので、彼に会わず、家に帰ることにした。
※
「ボス、生徒会長が門の所まで来てましたよ。」 「マジで!!??」 俺は部屋に入ってきた子分に対し、来た早々大きな声を出した。 「家に入ってきたのか会長は!?」 「いえ、すぐに帰りましたけど・・・。」 「そうか・・・・。」 俺は肩を落とした。 アレから生徒会室を覗こうと思っても、流石に窓を割ってしまったばかりだし、かと言ってマンモス校のあの学校で逢える訳じゃない・・・。 だから休日に逢えると思ったのに・・・・・! 「うわっ、ボス泣きそうですよ」 「泣いてなんかねーよ」 とは言っても心の中ではすごく泣きそうだった。
心が痛い。 好きな人に逢いたい。 ずっとずっと見ていたい・・・。 これこそが初めての恋なんだ。
(・・・恋って本当に苦しいんだなぁ) 恋する気持ちが分かった。 苦しくて、切なくて、でも、必ず実らせたい。 何を捨てても手に入れたい。
「ボス、聞いてます?」 「えっ、何?」
奴の声に俺は我に帰った。 「生徒会長、ボスに興味を持ってたようですよ。」 「ほんとか!?」
一気に心に花が咲く。 歓喜の花。
「ええ。だってオレにボスのこと聞いてたし。わざわざここまで来たようですからねぇ。」 「・・・・・やった!!」
俺は飛び上がって喜んだ。
「やっほぅー!イエーイ!最高ー♪」 俺は有頂天になった。いや、マジこうゆう時って幸せだから。
「でもボス知ってますか?」 「何が?」 「生徒会長って裁判長の息子なんですよ。で、ボスはいずれこの組を継ぐ人。まるで現代版ロミジュリっすね。ははは。」
笑い事じゃねぇんだよ。くそ野郎。マジ洒落になんねぇって。
頭が良くない俺でも意味はわかる。 本当に笑い事じゃないんだって。
「嘘っていってよおおおおお!!!!」
俺の絶叫は、家中の組のものすら脅かした。
いいよ。 ちょっと位恋愛にはスリルが有って良いんじゃない? でもちょっとスリル有り過ぎかな。 うん。
でも必ず、俺は会長ものにして見せる! だってこんなに人を好きになったんだから!!
自分の生まれをちょっと憎みながら、俺はまた青空に深い誓いをした。
|