出逢いなんてものは何時も唐突。それは恋愛に限ったことでは無いけれど、 体外のものはそう言えると思う。 さて、僕は先日、「これこそ正に運命よ!」的な出逢いをしました。そう、 アレこそ運命・・・・。 所で僕がその運命の人と出遭ったのは、何気ない日常のことでした。
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僕はその日も生徒会室で独りで優雅にティーを飲んでいた。僕は自分で言うのは何だが超優等生。入学式では新入生代表をつとめたし、テストでは常に上位キープ。勿論僕は性格も顔もOK!(こんなこと自分で言ってるってことは相当性格が悪い?でもいいの!ばれなきゃあね!!) と言う訳で当然生徒受けも教師受けも良い訳で、去年の十二月生徒会長になった。 それからは勿論生徒会室独り占め。 誰にも文句は言わせない。 まぁちゃんと生徒会の仕事をこなしてるからなんだけどね。
そんなこって僕はこうして独りで「午後ティー」を楽しんでいる。僕が家からもって来たティーセットでこの日課は行われる。 誰にも邪魔されない独りの時間。 静かな時の流れ・・・・。 「最高ー・・・・・。」 ティーに一口くちをつける。甘いレモンティーが口の中に広がる。 至福の一時。 しかし僕はこの時、数十秒後に何が起こるかなんて想像がつかなかった。
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誰か人を好きになったのは初めてだ。 こんなに誰かが「愛しい」と思うようになるなんて・・・。 少しその人の顔を見るだけでとってもドキドキするし、姿を何時も目で追ってしまうし、やっぱりその人の血液型とか気になるし・・・・。 これが恋!? 誰かを好きになる気持ち!? この気持ちが恋なんて言うんだったら、俺は相当重症だ・・・・。
と、言う訳で俺、龍我劉騎は恋をした。ん?何?名前が読めない?ああ。確かに画数多いしね。俺は、たつがりゅうきっていうんだよ。よろしくぅ!!ピチピチ(死語か?イヤ、そうでもないと思いたい)の十七歳!早生まれだから最近十七になったばかりの高校三年生、うっひょお。 おっと、そういえば俺の恋の話だったけ?うん。確かに俺は好きな人が出来たんだ。
(回想スタート)
それは昼休みに起こった。俺はこう見えても中々の不良で、制服の指定なしのこの学校では学ランに改造ズボンといういでたちだ。なんかその日は子分達と居るのも難儀だったので、中庭に在る樹に登って弁当を食べることにした。 この樹は俺が入学した時からのお気に入りで、暇さえあれば登ってる。この樹から見る風景がまたなんとも絶景で、自分がまるでこの世てっぺんに居る錯覚を起こさせる。 親父の稼業をいずれ継ぐつもりだから、俺もいずれその稼業の頂点を目指すつもりだ。今はその心地よい高みに登る幸せを味わっていると言っても過言では無い。
弁当が半分ぐらい減ってきたところで、俺はあることに気付いた。 いつも外しか見て無いが、たまたま校舎の方を見た。どうやらそこは二階のようで、生徒会室らしき所に人影があった。 「誰だ・・・・アレ。」 俺は掛けている眼鏡を外した。この眼鏡は近眼用なので、軽く近眼程度の俺は外した方が景色をよく見ることが出来る。 「・・・・・・確かアレって生徒会長だっけ、」 かつて無いほどの秀才とこの学校内で呼ばれているかなりエリートの生徒会長・・・・。 (何してんだろ・・・・?) もっとよく見ようと目をこらす。 「ティー飲んでる。」 彼は独りでティーを飲んでいるようだった。 俺は思わず笑みを零した。実は生徒会長は生徒会に入って茶ぁ飲みたかったんじゃないの?なーんてな。
俺はしばらく生徒会長を観察することにした。なるたけ生徒会室に近い方の枝に登って、身体を前に出して・・・。 (うわー、会長なんか読んでる。って、漫画じゃん!) (それにしても肌白いなぁ・・・・。あんたは雪の精かよ) (睫毛が頬に影を作ってるぅ・・・。すごいなぁ・・・。) (本当に男か!?) 俺は毎日観察するうちにこんな事を考えるようになった。マジ重症。 どうしよう・・・・。ヤバイ。 生徒会長に触りたい! もっと見て居たい! 好きな人とか居るのかなぁ・・・。 俺なんかと話してくれるかなぁ・・・。
子分の一人に俺の今の心境を話してみた。すると奴は堂々と言った。 「それは恋ですよ!!」 「恋!?」 俺は仰天して聞き返した。 「だって今までのボスの話聞いてたらそうとしか考えられないでしょ?愛しいと思うし離れたくないとも思う・・・恋ですよぉ。」 「恋か。」 「恋です」 そうか、俺は生徒会長に恋をしているのか・・・。 「ちなみに俺もボスに恋してますよ!」 自分の気持ちが分かったら何だかすっきりした。 俺は初めて人を好きになったんだ・・・・。
俺は恋をしたことが今までないから、生徒会長にどう近づけば良いのか分からない。 (・・・・・でも生徒会長と話したいし)ピッキーん! 閃いた。 「午後ティー」にお邪魔しちゃおう!
そうと決まれば即実銭。俺は早速ロープを持ってきて樹の枝によくくくり付けた。
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がっしゃァァァァァん! 「何!!?」 突然窓ガラスが割れたので僕は驚いて立ち上がった。ガラスが辺りに散らばった。 「誰?」 窓ガラスを破ったのはどうやら宇宙人とかではなく人間のようだったので、僕は話し掛けた。 「ごっ、ごめんなさいっ!」 辺りに透き通った声が響く。 その時窓ガラスを突き破った人物が見えた。 黒い学ランが少し大きめで、それがなんとも華奢な感じに見せてて、肌は白くて、・・・でも唇は紅い。大きな目が眼鏡のフレームから今にもはみ出しそうで・・・・風に長めの黒髪が揺れてて・・・・。
(可愛い!!)
僕はこの時一目ボレした。 十八年間生きてて初めてだ。 と、気付く。僕のことより彼のこと!怪我をしているかもしれない。 「君、大丈夫!?窓破ったようだけど・・・。」 言うと彼は慌てたように手を振った。 「いえ!大丈夫ですっ!えっと、窓壊してゴメンナサイ!!」 「それは良いけどぉ・・・・」 彼が何やらモゾモゾとおもむろに紙を取り出した。 「ゴメンナサイ!請求はここにお願いします!ではっ、」 「えっ、ちょっ、ここ二階だけどぉ!・・・・」 彼はあっというまに破った窓から飛び出した。 そして僕の手には彼からのメモがある。
僕は初めて恋をした。 初めて人を好きになった。 「ふふ。」 何だろうこの嬉しい気持ち。 彼には連絡先も教えてもらったし、上手く行けばまた逢えるかもしれない。 僕はこの唐突過ぎる出逢いにちょっぴり感謝した。
「で、彼の連絡先は・・・っと、」 手元の紙を見て凍り付く。 紙に書かれていた住所は・・・・。 「1290番地 龍我組 本部」
「うそぉん!!!!!」 僕の絶叫は一階まで響き渡った。 これが彼の家の住所だとしたら、彼は、・・・・。 「もしかして、ヤーさんのせがれ・・・・・?」
マジ洒落にならないよ。 だってロミオとジュリエットじゃないんだから。 「僕、裁判官の息子だよぉ・・・・。」
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しくじった。勢いが良過ぎて窓が思いきり割れてしまった。これじゃ本当の邪魔者だよ。 でも家の住所渡せたし・・・結果オーライ! 「恋がどうか実りますように・・・・。」 俺はぬけるように青い空に祈った。
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