「声くらい出せば・・・?兄さん」
両手を押さえつけられて身動きのとれないままに、朗(アキラ)は慶人(ヨシヒト)を見上げる。
シャツを捲られ、直接肌を弄られる。
胸の飾りを掠められ、びくりと身体が震える。朗はぎゅっと目を閉じ漏れそうになる声を抑える。
感じることすら嫌だと思うのに、快感を教えられた身体は気持ちに反して情欲を浮き上がらせる。
慶人はそんな朗を気にした様子もなく刺激を与え続ける。ぐにぐにと飾りを扱きながら、噛み締められた唇を緩ませるかのように口付けを落とす。
閉じられた歯列を舌でノックするが、さらにその扉は硬く閉じるばかり。
中へ入り込むことを諦め、形良く並ぶ歯を一本ずつ確かめるように舐めていく。
ぎゅっと指に力をこめられ、思わず朗はひゅっと息を呑む。
その隙を逃さず、慶人の肉厚な舌が朗の口腔へと滑り込む。
「・・・んぅっ」
奥へ逃げる舌を捕まえられ、吸い上げられると鼻にかかった息が漏れてしまう。首を振って逃れようとするが、敵わない。
さんざん貪られ、肩で呼吸をするころにやっと解放される。
「兄さんの唇、真っ赤だ・・・。口紅でも塗ってるみたいだな」
ククと慶人は笑いを漏らしながら、唇を胸へと降ろす。指で弄られ、ぷくりと腫れたそこを音を立てるように啜られ、熱が腰へと集まってしまう。
熱をもった膨らみはジーンズ越しでも明らかなほどだ。
「ほら、兄さんのココは気持ちいいって言ってるよ?兄さんが声をださなくても、身体は正直だ」
だから、隠しても無駄だと慶人は言った。
一ヶ月前、慶人は突然のように朗を押し倒した。最初は冗談だと思っていた朗も、あられもないところに舌を這わせられ、泣き叫んでも行為を続けた慶人に恐怖を覚えた。
兄弟となって四年、それなりに仲良くやってきたつもりだった。
慶人はまだ中学3年になったばかりで、高校3年の朗からすればまだまだ子供だと思っていただけに、男の面を表されショックだったのだ。
しかも、女性を辱めるかのように自室で強姦された。
朗には、慶人がなぜそんなことをしたのか想像もつかないし、理解したいとも思わなかった。
そして、その行為は一回きりでは終わらなかった。
痛みで動けなかった翌日以外、ほぼ毎日のように夜中、朗の部屋へ潜り込んできては犯すだけ犯して去っていく。
初めは、かなりの抵抗を見せた朗だったが慶人の気持ちも見えず、ただはけ口となるためなのだったら反応を返すのも無駄だと思い心を閉ざした。
それでも、普段の生活では慶人はいつも通りで、ぎくしゃくしていたのは、朗のほうだった。
「なあ、兄さん・・・気持ちいいんだろ?俺にこうされて、すぐにイっちまうもんな」
バカにしたように朗へと言葉を吐くが、朗は全ての五感を閉ざしたいと願うように、慶人へ返事は一切しない。
慶人が苛ついた様子で、朗の下肢を露わにし熱をもった欲望をぎゅっと握り締める。
痛みで顔を歪める朗を楽しげに見下ろすと、これ見よがしに昂りへと舌を這わせた。
「こんな濡れ濡れにしときながら無視すんなよ。・・・俺にされて、いいんだろ?」
ぴちゃぴちゃと唾液を塗りこめられ、先を弄られると蜜がどんどん溢れてくる。
慶人はそれを美味しそうにじゅると舐めとる。
「ああ、兄さんのはいつ飲んでも美味しいよ・・・。こっちも、舐めてあげないとね」
下肢を大きく持ち上げられ、後孔の蕾を朗の精液で濡れた指で解される。
昨日も攻められたソコは、きゅっと締まっているものの、入り込む指を従順に受け入れる。
「・・・っ」
何度されても慣れない感覚に、思わず指を締め付けてしまう。慶人はそれさえもいいというのか、締め付けに逆らうように指を大きく回す。
くちくちと漏れる音が恥ずかしく、全身が火照るのがわかった。
「そんな今更恥らわないでよ。毎日やってるんだから・・・」
入れられる屈辱と、それを快感と感じる体が恥ずかしくて慣れることなどないと朗は思う。
「これだけ緩んだら、俺のもすぐ入るだろ?
しっかり締めて、楽しませてよ・・・兄さん」
朗が落ち着く間もなく、慶人の大きなものが埋め込まれる。ぎちぎちと音がしそうなくらいにキツイそこにピリとした痛みが走る。
「・・・っ、凄いな。あれだけやっても抜群の締めだよ。ちょっと切れたみたいだな」
粘膜に傷をつけられたというのに、それさえも朗が悪いと言う風に訴える慶人。
切れたソコからの出血なのか、なんなのか滑りが徐々によくなり慶人の抜き差しはどんどん激しくなる。
朗を壊したいという思いを込めるように、朗の腰ががたがたになるまで毎回犯す。
慶人の欲望を朗の中へと吐き出し、それがあふれ出て、もう入るところがなくなるころやっと解放される。
これだけされたら、即妊娠だなと思い朗はクツリと笑みをこぼす。
「兄さん、笑ってられるなんて余裕だね・・・。今日は声、出させてあげようか」
うつ伏せにさせられていた体を、大腿に両手を入れられてぐっと持ち上げられる。
更に深く穿たれ、いいところを抉られる。それだけで前からは白濁が漏れ出たが慶人は許してくれない。
イったばかりの敏感な身体をさらに抱きかかえると入れたまま立位をとられる。
身長差のため、慶人抱かれているとはいえ、朗はつま先しか床についていない。
支えは、慶人の欲望だけとなり、壁に手をつかされてそのままがんがんと突かれ始める。
今までにない深さで慶人を感じ、出したくもない声が自然漏れた。
「ひぁぁあっ!」
「ほら、これでも気持ちいいって言わないのか?兄さん、イキっぱなしだよ」
ぐぷぐぷと音をさせる結合部から、朗の分泌液すらが溢れる。
「兄さん、わかる?ここから女みたいに液がでてるんだぜ」
互いの白濁と透明の粘液がまじったものを指で掬いべちょりと朗の顔へと塗りこめる。
律動の激しさで慶人の袋が朗の臀部へとあたり乾いた音が激しく鳴る。
「・・・っあ、あ、・・・よしひ、と・・・ゆるしてぇ・・・」
「兄さん、兄さん・・・朗っ」
抜き差しと円運動を繰り返され、快感が苦痛になるころ、やっと慶人は達し解放された。
足も腰もがくがくで、ベッドの住人とならざるを得ない朗は、珍しくもいる慶人を見る。
「なあ、慶人・・・。もう、こんなの止めよう」
いくら血の繋がりがなくても、兄弟だし男同士なのだ。
「お前好みの女の子も紹介してやるし、僕なんかに構ってる必要ないだろ?」
小さな子を諭すように話しかけるが慶人の反応は薄い。
「なあ・・・」
「俺は、止める気はない」
「慶人・・・」
朗は、慶人の変貌ぶりに全く思いつく理由がなかった。
女の子を襲う前でよかったとは思うが、このまま自分を差し出していけるものでもない。
「・・・俺は、あんただから抱きたいんだ。朗だから・・・」
「・・・慶人?」
「俺は、兄さんが・・・朗が好きなんだよ」
「は?」
突然の告白に朗は口をぱかりと開けてしまう。
「だって、僕たち兄弟・・・」
「わかってる!でも、初めて会ったときから。こんなのおかしいって思って女とも散々付き合ったけどヤル時に浮かぶのはあんたの顔なんだ」
中学でそんなにヤルもんなのか、と妙なところで朗はびっくりしてしまう。
「俺がイける時はアンタのやらしいとこ想像した時だけだし、夜中に忍び込んでキスしたこともあった」
固まる朗を逃がさないように、ぎゅっと抱きしめると押し殺したような声が朗の耳に届いた。
「兄さんが・・・朗が好きなんだ」
朗は、慶人が可哀想になった。
よく聞けば、慶人の暴発は朗が大学進学を地方にするため家を出なくてはならないということがきっかけだったらしいのだが。
自分の何処に惚れたのかはわからないが、ここまで切羽詰った弟を見捨てていくのも忍びない。
朗とて、慶人が可愛いのだ。
一時的な熱病のようなものだろうとは思ったが、慶人の熱が醒めるまで付き合ってやるのも兄の義務だろうと思う。
好きだと繰り返し、今にも泣きそうになっている弟の背を朗は優しくなでた。
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