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 (天才×天然 年下攻 ラブコメ 高校生 /--)
恋愛ゲーム 「好き」 


俺、立花春樹と彼、宮本タムラの関係は微妙だ。
俺達はたぶん両想いだ。
けれどお互いに決して「好き」とは言わない。
これはゲームみたいなものなんだ。どっちが先に「好き」だって言わせるか。
そして意地っ張りな俺達は毎日の攻防を繰り返している。




「1枚2枚3枚・・・・・」
俺はタムラの所属する科学部の部室である理科室で椅子に座りわざとらしく数を数えている。
「あなたは皿屋敷のマネでもしてるんですか?」
「皿屋敷?何それ?」
俺に向かってタムラは敬語で話す。一応俺の方が1学年上だからだ。
「播州姫路が舞台の『播州皿屋敷』江戸番町が舞台の『番町皿屋敷』が有名ですが例のお菊さんという
皿を数える幽霊の話ですよ」
「ああ、あれか。って違うよ!俺が数えてるのは手紙。ラブレターの数。今日は3枚だったんだよ」
俺はタムラを妬かせようとわざわざ目の前で数えていた。
「・・・・手紙は普通一通二通と数えるでしょう?」
「そうだったかな?」
正直俺はあんまり頭が良くない。そして逆にタムラは天才として有名な人物だったりする。

「ふふーん。どうだ今日は3通だったんだぞ。妬けるだろう?」
俺はタムラの前に手紙をかざしてそう言った。
「男から手紙もらって嬉しいんですか?どうせ全部振るくせに喜んでも仕方ないでしょう。
手間が増えたと嘆く方が普通ですよ」
タムラはかわいくない事を言う。実際そうなのだけど・・・。
俺のこのモテぶりにも動揺しないタムラに俺は更に妬かせようと頑張ってみる。

「今回はわかんないよ。俺振らないかも。俺付き合っちゃうかもしんないよ?」
その言葉にタムラはニヤリと笑う。
「先日襲われて僕に助けられたのはどこの誰でしたっけ?やさしく親切な僕が助けてさしあげたので
あなた無事でいられたんですよ?」
俺はその言葉に一瞬つまる。
「う、な、なんだよ。恩着せがましい言い方だな。俺がゴーカンされたら悲しむのはタムラだろう?」
「え、何で僕が悲しむんですか?」
タムラのそのポーカーフェイスがムカつく。俺はちょっとキレた。
「何だよ!タムラなんか本当は俺にベタ惚れのくせに!」
「ははは。またご冗談を」
チキショウ!タムラは絶対に折れない気だ。
だからって俺だって「好き」なんて正直に言ってやらないんだからな!




俺はトボトボと手紙の一通にあった待ち合わせ場所に向かって歩いた。
うちは男子校で、俺は女みたいな美形だったのでよく告白された。
でも俺はそんなヤツラに興味なんかないんだ。
俺はただ一人。生意気で性格の悪いタムラの事が何故か好きだったから。

出会いは偶然だった。
男に追いかけられて逃げ込んだ理科室にタムラが居たんだ。
追われて逃げる俺を助けるでもなくただ傍観していたタムラに俺は拝んで助けてもたった。
それからは遊びに行くとたまにやさしかったりしてこいつ天邪鬼なだけなんだなと思ったんだ。
俺とほとんど身長も変わらず(あいつのが3センチ高い)華奢なんだけど顔はぜんぜん
格好よくはないタムラ。
そんなタムラが気になって気になって好きで好きで仕方ないんだ・・・・・・・・。

「春樹君・・・・?」

考えながら歩いていたら俺はつい待ち合わせた人物の前を素通りしていた。
あわてて数歩戻る。
「あ、ごめんなさい。考え事してたら通りすぎちゃった」

告白場所である裏庭で向き合ったその人はやけに体格が良かった。
空手部とか柔道部とかとにかく格闘系の体格だ。
俺はなんとなく嫌な予感がする。

「春樹君。君の事がずっと好きだったんだ。付き合ってほしい」
「ごめんなさい。他に好きな人がいます」

2秒位で終わった。
「じゃあ・・・」
そう言って俺が立ち去ろうとすると肩をつかまれた。
「そんなつれないコト言うなよ・・・・・・・俺ずっと好きだったんだぜ・・・」
そう言うと俺は両腕を押さえられてしまった。逃げようと暴れるが強い力で
押さえられてしまって逃げられない。
そして彼はどんどん俺に顔を近づけてくる。
「やっぱ近くでみてもかわいいね。キス位させてよ」
「や・・・・・・・・・」
なんて事言いやがる。そう思うが押さえ込まれて逃げられない。
体格差がありすぎる。こんなヤツにキスなんかされたくないのに。
でもどんどん顔が近づいてくる・・・・・・・・・・。
その時。

「ちょっと待って下さい!」

見ると白衣なんか着たタムラが立っている。
タムラが助けに来てくれた?俺は嬉しくて顔がニヤけた。けれど・・・
「何だよ、お前。この俺様の邪魔をしようっていうのか?」
この空手家(推定)はタムラにすごんで見せる。体格差はやはりデカイ。
とてもタムラはこいつにケンカで勝てるようには見えない。
それともタムラはめっぽうケンカに強いとかそんな奇跡はあるだろうか?

「いえ、僕はあなたの為に言ってるんですよ!その立花さんは
新種悪性ヒトシニガタウイルスに感染しています!!」

はい?俺は頭が白くなった。タムラがゆっくりと俺達に近づいてくる。
「その人とキスするなんてもっての他です。この病気は唾液や精液で感染します。
現代医学では完治不可能の新型ウイルスです。今すぐ離れた方がいいです!」

その言葉に空手部(推定)が俺の腕を放す。
すると何故か半透明のゴム手袋をはめたタムラが俺を掴む。
「ダメじゃないですか。他人に触れたら感染するんですよ!」
何故かタムラは俺を怒る。

「あなたも早く逃げた方が良いですよ。この人の唾液が付着する前に」
そう言うとタムラはマスクをつけた。そのタムラの不気味な姿に空手家(推定)は慌てて
ダッシュで逃げ出した。
その後ろ姿を俺達は呆然と見送った。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺は黙ってタムラを見つめた。もしかしてこれって助けてくれたのかな?
「新型ウイルスって何?」
俺が聞くとマスクとゴム手袋を取りながらタムラは答える。
「だってあんな強そうな人殴りかかったって返り討ちにされるだけじゃないですか」
それってやっぱ助けてくれたんだ。
「ふーーん」
俺はニコニコ笑顔になってしまう。
「ありがとうな。タムラ」
そう言うとタムラは少し照れたような顔をした。俺はやっぱりこいつが好きだ。言わないけどね。


「タムラお前、やっぱり何だかんだ言って俺の事好きだろう?」
俺は聞いてみた。
「・・・・ありえないですね。あなたの方でしょう?僕に惚れてるのは」
俺達は顔をつき合わせて睨みあう。

「もう、素直に負けを認めろよ!俺が心配だったって他のヤツにキスさせたくなかったって言ってみろよ!」
その言葉にタムラもキレる。
「貴方こそ僕にキスされたいって言ってみたらどうなんですか?!」

その言葉に俺は固まった。
タムラにキスされたいか?俺は考える。されたいに決まってる。
「・・・・じゃあしてよ。してもいいよ。俺・・・されたい・・・・・・・・」

その俺の言葉にタムラも固まった。
暫く考えるような顔をする。そして・・・・・・・・・・・・

「じゃ、目を閉じて下さい」

言われて俺は目を閉じた。ドキドキした。期待と緊張で体がフワフワした。
そして俺の唇にタムラの唇が触れた。
長いキスではなかった。チュってされただけのキスだった。
なんか舐められたって感触だけが唇に残った。
目を開けると赤い顔したタムラが見える。愛しくて胸がつまった。

「・・・・・タムラ・・・・俺・・・・その・・」
好きだって言ってしまおうと思った。だが。

「ほらしましたよ。でも僕別に貴方を好きでしたんじゃありませんからね」
その言葉はまたえらくムカついた。

「俺だって。お前の事なんか好きじゃないんだからな。本当だからな!」
「僕だってそうですよ。好きじゃありませんから!」





結局その後はいつもの俺達だった。
けど、俺は忘れないよ。嬉しかったよ。タムラとの初めてのキスが出来て。

そして近いうちに必ず「好き」だって言わせてやるんだから。
俺はそう心に誓った・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。









「サイトで連載中の「恋愛ゲーム」とは別設定のお話です。」
...2004/11/17(水) [No.146]
RIYO
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