「玲央~っ。また振られちまったよ~っ。」
そんな言葉を言いながら松本家の玲央(れお)の部屋へと一人の少年が入ってくる。
「十夜・・またか~これで何度目だよ。」
この二人は家が隣同士で幼い頃からずっと一緒だった幼稚園も、小学校も、中学校も、 そして・・今の高校も一緒。いわば幼馴染だ。
「まったくっ、俺の何がいけないって言うんだっ。」
「・・早くやりたがるからだよ。」
「うっ・・」
十夜は女好きで中学の一年の頃から性にも興味を示し出し、気に入った相手が出来ると、 すぐに告白し、OKされたり、振られたりを繰り返している。 十夜の外見は背が176cm、痩せ型で顔も綺麗な顔をしている。 実際はモテてモテてしょうがないのだろうが・・。 普段からエロい話を連発するや、態度はでかいは、うるさいはで、女性とからは、 「顔はいいんだけどね・・」みたいな事もあるようで・・・。
「俺って・・そんなに不細工かな。」
「嫌、そんな事はないと思うよ。」
「玲央~~~っ。」
がばっと抱きつかれる。 その背中をポンポンとなだめるように叩きながら「性格が問題なんだよ」と心の内だけで言った。
「やりたがるのがいけないんだって。」
「ううっ・・だってよぉ・・彼女になったらそれするのが当たり前じゃんか。」
「だからって付き合ってすぐ、それも初デートとかは良くないって言っただろう。 ・・・今回もそうやって振られたんだろう。」
「げっ・・何故分かるんだっ・・・。」
「わかるって・・・」
抱きついた身体を離し、お茶を下へと行って持って来ると、十夜はAV鑑賞をしていた。 これもいつもお約束な事で・・。
「ふぅ・・また借りてきたのか。」
「おうっ。」
まだ高校一年なのに18歳ぐらいの外見をいい事にレンタルしまくっている。 玲央にはまだそんなに性への興味がなかったので、十夜のこの行動は少々呆れ気味だ。 それでも長い付き合いの中で慣れてしまった部分はあるが。 というか呆れるだけで、別にこんな事で十夜を軽蔑したり、決別したりするつもりは更々ない。
こういう時は自分のベットに寝転がり、眠ったり本を読んだりするのがお決まりのパターンの玲央。 今日もベットへと寝転がって開いたカーテンから外の青空を眺めていた。
あんっ、あんっ、と背後から聞こえる女性の喘ぎ声。 それを聞くのももう慣れっこ。 そして、それに興奮し、自慰をする十夜にも慣れっこだ。
別に男同士だから包み隠す事もないし、銭湯に行って一緒に風呂に入った事もある。 十夜の性格はもう充分百も承知で少しずつその喘ぎが気にならなくなってきた頃・・・。
「なぁ、玲央。」
「・・・・ん?」
十夜が突然声をかけた。 こんな事は初めてだった。ビデオを見ている時は見終わるまで無言だったからだ。
「何だか空しくなってきた。」
「はっ?それを思ったら終わりじゃん。」
声をかけてきた方に振り返ると自分が寝ているベットへと肘をつけて自分を見る十夜が居た。
「って、まだビデオかけてるじゃん。しかも一番盛り上がってる所なのに。」
「ん・・まぁ・・そうなんだけどな・・。」
今日は自慰もしてない様子だった。
「よいしょっと。」
「十夜?」
玲央が寝むるベットへと自分も身を沈める。 布団をかけないまま、ベットの上で向かい合う。
「なぁ・・玲央、ちょっとだけ、擬似体験させてもらっていい?」
「はぁっ?な、何言ってんだよっ。」
「俺、マジ興味あってさ、だから・・ちょっとだけ・・な・・いいだろ?」
何を言い出すんだこいつはと思った。 疑似体験?同性同士で、胸は大きくないし、同じものもついているし、 何よりそんな事を言い出すまでこいつは性に興味があるのか。
「何だよっ・・疑似体験って・・僕は女じゃないから胸だって・・。」
「大きくはないけどあるじゃん。」
「そ、りゃあ、あるけどっ・・。」
「ちょっとだけ・・な?・・ちょっとだけ。」
とか言いながら玲央のTシャツの上から乳首を撫でる。
「っ・・ちょっ・・・とう・・やっ・・・。」
初めて人に触れられる感触に、身体がびくっとする。 そしてきつく瞳を閉じた。
「うわ・・男でも固くなったりするんだな・・。」
ちょっとだけ拒むように両手を押さえるが、そんな事はお構いなしに、十夜は撫でるのを続けていく。
「・・・っ・・。」
跳ね返してもいい筈なのに、十夜が毎度振られているという事もあって、玲央には、 抵抗しようか、我慢しようか心の中で葛藤していた。 これくらいなら・・まだ我慢出来る・・かもしれないと・・。
「玲央・・感じるか?」
覆いかぶさった十夜から低い声で問われる。
「そ、そんなの・・・わからなっ・・。」
瞳を細めた十夜の顔はこれまで見る事がなかった顔だった。 そして玲央が思っていると同様に、十夜もそう思っていた。
硬くなった両胸の小さな頂を摘まれる。
「あっ・・。」
思わず声が出てしまう。
「玲央・・・。」
それに興奮したのか、Tシャツを捲くり上げ、直に乳首に触れ、摘んだ。
「やっ・・めっ・・っ・・」
ベットの中でもがく玲央。頬を高揚させて、瞳を瞑り眉を潜めている。 それが堪らなくて・・・。
「何だか・・お前の声色っぽい・・。」
「馬鹿っ・・もうっ・・止めろってっ・・。」
ビデオから聞こえる喘ぎ声で消されていると思っていた自分の声は、 間近に居る十夜には充分聞こえていた。 それがとても恥ずかしくて、同性に幼馴染にこんな事されて感じている自分が恥ずかしくて・・
「もう・・充分だろっ・・疑似体験っ・・」
「駄目・・まだ口でしてみてない。」
「なっ・・・。」
赤面し、上半身を起す胸に十夜の顔が埋まる。体格差もあり、覆い被されると身動きも出来ない。 生暖かい舌の感触が胸へと・・・
「はぁっ・・・ぁっ・・・。」
押し殺した声を出した。
「いいのか?・・じゃあもっと・・。」
ペチャペチャと舐める音。いつの間にかビデオも終わっており、部屋にはその音だけが木霊していた。 まるで赤ん坊のように、十夜は玲央の乳首を嘗め回し、吸いついた。
「・・っ・・はっ・・・。」
羞恥もあり、声を殺すのに必死だ。 起き上がった事で十夜がしているのが嫌でも目に入ってしまう。
「とう・・やっ・・・。」
腰を捕まれて身動き出来ないので、両手に自由が利く。 その掴んでいる相手の髪をグシャっと掴んでいた。
「れおっ・・・っ・・。」
切羽詰った声と共に再びベットへと身体が沈められる。
「俺・・興奮しまくってる・・今っ・・・。」
顔を近づけ、額を合わされた。 そして興奮しまくっているという自分のモノへと玲央の右手を掴み触れさせる。
「・・・ほ・・ん・・とだ・・。」
「お前は?」
「え・・・。」
誘われた腕が離れると玲央の下半身へと右手が伸びる。
「あっ・・・っ・・」
「・・お前も・・一緒じゃん・・。」
「ちがっ・・・」
まさか自分もこんなに十夜との事で興奮しているなんて思わなかった。 でも、身体は正直に反応を示していたのだった。
「なぁ・・お互いやりあおうぜ・・。」
「十夜・・お前・・今日、変だよ・・。」
「嫌いになるか?」
「・・なる筈ないけど・・。」
先に手を動かしたのは十夜だった。 ズボンのチャックを外し、下着を太ももまで下げ、露になったものを扱いてく。
「あっ・・とうやっ・・・」
「気持いいだろ・・・?お前だって他人にこんな事されるの初めてだろ?」
初体験もまだな二人だ。お互いが他人にその部分を触れられるというのも初めてのこと。
「ほら・・俺のも・・して。」
ズボンを脱ぎ、再び玲央の右手にそれを握らせる。 ちょっとだけ、上下にと手を玲央が動かすと・・
「あ・・気持いい・・っ・・・。」
間近で感じる十夜が見える。
「玲央・・もっと・・・扱いてよ・・。」
「・・うん・・。」
二人共、いや十夜はともかく玲央も平常心ではなくなってしまっていた。 言われる通りに、十夜のものを扱いていく。 そして十夜も玲央のモノを激しく扱いていった。
「あっ・・はっ・・ああっ・・・」
さっきまで押し殺していた声が大きくなってしまう。 それは胸よりも全然感じる部分を刺激されているからの正直な反応で・・・
「玲央・・・もっと聞かせて・・俺に・・お前のその色っぽい声・・っ」
「十夜っ・・・あっ・・・。」
間近で卑猥に囁く低い声と薄く開いた瞳に、誘惑され、玲央も激しく十夜を刺激していく。
「・・・っ・・はぁっ・・いいぜっ・・すごくっ・・」
「感じてる・・?」
「ああ・・っ・・・いいっ・・」
「僕もっ・・・十・・夜っ・・・。」
互いに先走り液が漏れ出す、それによって滑りやすくなり、一層快楽は増していく。 そして二人の息も荒くなり熱くなり、身体も火照っていく。
「はぁっ!!ああっ・・ああっ・・とうっ・・やっ・・ああっ・・」
ビクビクと身体が鳴り出す。声も一段と大きさを増した。 潤んだ瞳で顔を上げる玲央。達しが近いのだ。 それでも十夜を扱く事は忘れずにいた。
「れ・・おっ・・・・・っ」
上がった玲央の顔に顔を近づけ・・・唇を近づけた。 その頬に空いている手をつけて、達しが近いのを告げることにする。
「もうっ・・僕っ・・・」
「っ・・俺もっ・・・。」
頭が真っ白になりそうな最中、唇に温かさを感じた。
「んっ・・・十夜っ・・・んんっ・・」
初めてされたキスに驚く事も出来ないまま、僕も、キスをした当人も達してしまっていた。
昼間から、こんな事を、付き合ってもいないのに、同性でもあるのに、 何だか知らないうちに互いに手淫して達しあう事をしてしまった。
それに・・うろおぼえだけど、十夜にキスされた気がする。
男と女のように終わった後の余韻を楽しむようにベットに寝転がる二人。 互いに天井を向いてしばらく沈黙が続いた。
「玲央。」
シーツが掠れる音がして、十夜が玲央の方へと横を向く。
「ん?」
それにあわせ、玲央もそちらに向いた。
「なんか・・すげぇ・・よかった。」
「な・・何言ってんだよ・・。よかったじゃん、疑似体験出来て。」
それを聞いた十夜はちょっぴり考え込み、その後、玲央の肩を抱いて引き寄せる。
「・・・あのさ。」
「ん?」
抱きしめられた腕の中で上を向くと唇が重なった。
「十・・」
「ファーストキス。」
「え・・。」
「俺のファーストキスはお前になっちゃったな。」
「それは・・僕もだよ。」
会話をして離れた唇をもう一度重ねた。軽く触れ合うのを何度も何度も、 まるで幼い子供が母親が父親にするかのようなキスを。
「これも・・疑似体験になったんじゃない?」
「・・いや、これは正真正銘のファーストキスだよ。」
「十夜・・・・。」
疑似体験と正真正銘のファーストキス。 何が擬似でなにが正銘なのかわからなくなってしまったけれど・・。
これからも十夜と、幼馴染みという関係を気づいていきたい。
疑似体験・・か・・・。 確かに女の子とは違う身体だったけど・・玲央はとても魅力的だった・・。
これから・・玲央と、幼馴染という関係を気づきながら・・また・・こういう事もしたいな・・・・。
-終-
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