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 (学園もの・鬼畜攻め×でか受け(モデル)/18禁)
横恋慕



「お前―――、俺が亜貴(あき)と付き合っているの知ってんだろ?」






 亜貴―――と言われて一瞬それが誰だったか喜多見大樹(きたみ だいき)は考えた。

 亜貴が守屋亜貴(もりや あき)だと気付くのに、たっぷり30秒以上は掛かって、やっと大樹の眼の

前に居る男の事も思い出す。

 小塚桂一郎(こづか けいいちろう)―――。

 守屋亜貴と眼の前の彼が付き合っているという噂は、普段校内の噂話に殆ど耳を傾けない大樹でも

知っていた。

 守屋亜貴は校内一の“美少女”と言われて入学当時から騒がれていた。

 色白の肌に薄いピンクのプリッとした唇。クリクリの大きな瞳に小柄で華奢な身体。

 スカートでも穿けば、誰も疑う事なく女の子だと思うだろう…。

 そう―――。守屋亜貴は男で、此処は男子校なのだ。

 そして眼の前の小塚桂一郎も当然男なら、大樹も男であった。




 男子校なのに―――というか、男子校“だからこそ”なのか、守屋亜貴に告白する連中は後を絶た

なかった。

 次から次へと守屋亜貴へ告白し、ふられた男共の名前が校内にあがってくる。

 中にはふられた瞬間に逆上し、その場で亜貴を襲いそうになった奴も居た―――とか。

 そんな告白合戦に終止符を打ったのが眼の前の男―――小塚桂一郎だった。

 突然亜貴が『小塚と付き合う』と言い出し、桂一郎も『命が惜しくなきゃ、亜貴に手ぇ出すんだな』と

凄んでみせた。

 それ以後、誰も亜貴に告白しなくなった。

 皆、小塚桂一郎を恐れていた。

 彼は別格だった。

 入学してきた時から上背は190を超えており、身体もがっしりと出来上がっていた。

 高1―――15歳とは思えない、男の色気を纏っており、冴えた双眸が剣呑としていた。

 普段は余り喜怒哀楽を表に表さないが、唇の片方を微かに上げて微笑むその顔は―――酷薄以外

の何ものでもないと皆が口を揃えて言った。

 尤も喜多見大樹の方も体格では負けてはいなかった。

 何しろ彼は現在人気急上昇中の男性モデルなのだから、上背だけでなく肩幅もしっかりあり、筋肉

も程好く全身に綺麗に付いていた。

 只、大樹自信はどちらかといえば地味で大人しい、真面目な性格だ。

 モデルの仕事だって頼まれたから始めたのであって、間違っても自分からなろう等とは思わな

かっただろう。

 確かに始めてみれば楽しい事も多かった。

 メイクをされ、ヘアを整えられ、用意された衣裳を見に着ける―――。

 初めて出来上がった自分を鏡で見た時は、まるで別人かとも思った。

 変な例えだが、まるで魔法にかかったみたいな気分でカメラの前に立っていた。

 大樹の顔はどちらかといえば中性的だ。

 奥二重のアーモンド型の瞳に綺麗に鼻筋の通った高い鼻、そして少し厚みのある唇が何処か他人

を誘っているのだ。

 高い身長、広い肩幅、細い腰、綺麗に付いている筋肉―――そしてまだまだ成長期にあるであろう

高校2年―――。

 本来なら自惚れてもおかしくない容姿を持ちながら、彼には自信というものがまったく無かった。

 彼が普段道を歩いていても、誰もモデルの[ダイ]だと気付かない。

 ファンの子と擦れ違っても気付かれはしないだろう……。

 それは大樹が普段眼鏡を愛用しているだけではなく、なるべく顔を見られない様、俯いて歩く所為も

ある。

 それは決して見付かって騒がれるのが嫌だからというのではなく―――モデルをやらされる前から

の大樹の癖だ。

 彼にとって、母親そっくりの自分の顔は忌まわしいものであり、誰にも見せたくないし自分も見たくな

いのである。

 そう……特に自分の父親には―――。

 長年の習慣が大樹を縮込ませる。

 俯き、前屈みに歩く大樹にオーラ等ある筈もなく、誰も大樹に気付かないのである。

 いや、大樹の方が不思議だった。

 何故自分に何時までもモデルの仕事がくるのか。

 街中は彼のポスターで埋め尽くされているのに―――。



「亜貴を狙ってんだろ?お前―――。何時も何時も亜貴を見てるもんな。すっげぇーいやらしい目

で―――」

 桂一郎に屋上に呼び出され、詰め寄られ―――その迫力に押され下がってるうちに、フェンスと

桂一郎に挟まれてしまった。

「そ、そんな事……」

 逃げ場が無いうえに予想も付かなかった事を言われて、大樹は焦ってろくに声も言葉も出ない。

 そんな大樹に苛立ち舌打ちをした桂一郎が、大樹の胸座を掴み低い唸る様な声で話す。

「見てんだよ―――。“俺がお前を見た時には”必ず、“お前は亜貴を見てる”違うか?」

「……………………」

 低い声での恫喝は、正直大声でやられるよりも恐ろしい―――。

 ましてや相手は“あの”小塚桂一郎なのだから。

 身長の差は僅か数センチでしかないのに、大樹には大人と子供くらいの差を感じた。

 何をやっても敵わない―――そんな思いに支配され、大樹は益々縮込まる。

「……本当に―――あ、あの…………」

 言葉が続かなくて黙り込んだ大樹にイラ付いたのか、胸座を掴んでいた手に力を入れて大樹を

フェンスに叩きつける。

「―――っつ……」

 一瞬、痛さに息が止まりそうになり、俯いた大樹の顎を持ち上げ上を向かせる。

「見ていなかったのか?」

「……………………」




 大樹には―――。

 否定―――出来なかった。




 大樹が守屋亜貴を見ていたのは事実だから―――。

 大樹は守屋亜貴に憧れていた。




 いくら大樹が中性的な綺麗な顔をしているからといって、190近い彼を女に間違う者はいない。

 しかし守屋亜貴の様に女の子のフェイスに170を切る小柄な体型では、男子の制服を着ているに

もかかわらず、女の子と間違えられる事が殆どらしい。

 だが彼にその事を特別気にしている様子はない。

 寧ろ自分の見掛けを利用して生きる、そんな強かさが彼にはあった。

 校内のアイドルと言われ、美少女と言われ、それを笑って利用している守屋亜貴を―――確かに

大樹は見詰めていた。

 憧れを籠めて―――。




「隙さえあれば襲う気だった?」

 亜貴には優しい眼差しを向けている小塚桂一郎の瞳は、今は冴え切って冷え冷えしている。

「そんな事は―――」

 そんな事だけはないっ!!

 亜貴を襲うなんて―――。

 亜貴を穢すなんて―――。

 そんな事だけは絶対無い!!

 そう言おうとした大樹の科白は、最後まで続かなかった。

 またもや桂一郎に胸座を掴まれ、後ろのフェイスに思いっ切り押し付けられたからだ。

 余りの痛さに大樹は声も出ない。

「……そ…そんな…事、は、…絶対……し、しない…から……」

 それでも何とか言葉を紡いだら、桂一郎に鼻で笑われた。

「ヤリタイ盛りの男子高校生の言葉なんか当てに出来るかよ。それでなくても、お前―――女駄目

なんだろ?」

 桂一郎の言葉に―――大樹は全身が凍った感覚に囚われた。




 地味で目立たないとはいえ、綺麗な顔とプロポーションを持つ大樹は、中学時代女の子からの告白

が後を絶たなかった。

 大人しい大樹が断っても、大抵女の子が強引にデートへの約束に持ち込み、気が付けば付き合っ

てる事にされる。

 尤も、見掛けに反して引っ込み思案の大樹に愛想をつかして離れていくのも女の子達の方だった。

 ふられる瞬間、何時も安堵した。

 その事がおかしいなんて一度も思わなかった。

 例えエッチどころかキスも出来ず、女の子から手を握られただけで鳥膚の立つ自分をおかしいとは、

認めたくなかった。

 守屋亜貴に出会うまで―――。




「ふん」

 しっかり俯いてしまった大樹を見下ろし、桂一郎は莫迦にした様に鼻を鳴らすと、元々かなり緩めに

だらしなく締めていた制服のネクタイを解き、大樹の手首をフェンスに括り付け固定する。

「なっ……何―――」

 焦って顔を上げた大樹の首からもネクタイを解き、反対側の手首もフェンスに括り付けてしまった。

「何をする気なんだ!?」

 流石の大樹にも大声が出る。

 しかし桂一郎はそんな大樹を飄々と見下ろし、事も無げに言っただけだった。

「お仕置き。お前が俺の亜貴に近付かない様に」

 殴られる。そう思ってギュッと瞼を閉じた大樹の脳裏に走ったのは、モデルの仕事のスケジュール

だった。

 顔や身体に痣を作ったら当分仕事にはならないんじゃないか―――いや、顔の形が変わる程殴

られたら―――。

 事務所の人が今進めてるらしい、老舗ブランドが若い子向きに出す新ブランドのイメージモデルに

大樹を押している話も立ち消えるだろう……。

 自分の仕事が無くなる事より、事務所のメンバーがそれに今全力を注いでいるのに、自分の所為

でもしも話自体が無くなったら―――真面目な大樹にはそっちの方が辛かった。

 そんな事を考えながら強く目を瞑り、身体を硬くしていた大樹の胸元に、何か生温かくザラザラとして

濡れたものが押し付けられた。

 気持ち悪い―――。

 そう思って自分の胸元に目をやれば―――。

 桂一郎がシャツの肌蹴た大樹の胸に赤い舌をのばしていた。

「なっ、なっ―――」

 一瞬、後頭部を何かで殴られた様な感じがして、まともに思考が働かない。

 身体が益々強張り、這い回る桂一郎の舌の感触だけが気持ち悪く感じた。

 桂一郎の舌が大樹の胸の突起部分を押し潰す様に舐める―――。

 大樹の全身に鳥膚が立ち、脂汗が浮かぶ。

「や、止めろよ……。き、気持ち悪い―――」

 やっとの事で口にした大樹の言葉に、少し前屈みで突起を舐めていた桂一郎が顔を上げた。

「気持ち悪いか?ふ…ん、まあ…いいか―――。そのうち、此処を弄られただけで達っちまう様に仕

込んでやるよ」

 そう言ってさっきまで舐めていた方の反対側の突起を思いっ切り抓る。

「いっ―――」

 余りの痛さに大樹は声を詰まらせ、胸を反らした。

 眦から自然に涙が流れる。

「泣くのははぇーって」

 大樹の頬を桂一郎の舌が這った。

 一瞬ゾクッとしたのは、気持ち悪さからか―――?

 混乱している大樹の耳にカチャカチャという金属音が聞こえてきた。

 見ると桂一郎が大樹のベルトを外し、下着ごとスラックスを引き下げていた。

「なっ、何するんだ!?止めろ―――止めろよっ!!」

「ナニするんだよ。あんま耳元でギャーギャー騒ぐと握り潰すぞ!」

 そう言って桂一郎が大樹自信を、渾身の力を籠めて握り締めた。

「!―――」

 その痛みに、大樹はもはや悲鳴さえ上がらない。

 項垂れた大樹の耳元に唇を寄せ、桂一郎が囁いた。

「そうやっていい子にしてな。そうすりゃ、お前にもいい思いさせてやるよ」

 そう言って、大樹自信をやわやわと扱き始めた。

 桂一郎は何時もこんな事をしているのだろうか…?

 少しずつ熱くなる肌を持て余しながら大樹は考える。

 男を襲おうとした男が、逆に男に襲われる―――。確かにこれ程男のプライドを傷付け、立ち直れ

なくする方法はないかもしれない。

 だけど―――。

 こんな事をして、亜貴は疵付かないのか?

 いくら恋人の為とはいえ、自分以外の男を片っ端から襲っているなんて―――。

 自分の身体の中を駆け巡る熱に囚われない様、いろいろ考えを巡らせていた大樹だが段々その

余裕もなくなってくる。

 ドクドクという脈打つ音がそこら中に響いているのではないかという程の錯覚に陥るほど、下半身に

熱が溜まり重くさえ感じた。

 その次の瞬間には大樹は体内の熱を放出していた。

「はっえぇ~」

 何処か嘲りを含んだ声が、耳鳴りのする耳に届く。

「お前さぁー、まさかこの歳にもなって独りエッチもした事ないなんて言うなよ。気色悪い」

 大樹が顔を朱に染めて桂一郎を睨んだ。

「ふん、男を煽るまねだけは出来るんだ」

 言ってる意味が判らず訝しげな顔をしている大樹の右足を、足首に絡まったスラックスから引き抜き

桂一郎は自分の左肩にかけた。

「なっ、なっ、何―――」

「さっきから何、何って煩せぇーよ、お前。解してやんだよ。お仕置きだから無理矢理突っ込んでもいい

んだけどさ、それだとこっちも痛い目みるしな」

 そう言いながら桂一郎の指が信じられない処を弄った。

「嘘!?ヤダ、止め―――」

 暴れて逃れ様にも両手は万歳の形に括り縛り付けられ、右足は桂一郎の肩に乗せられ、左足には

依然脱がされた制服のスラックスが絡まっており、そのスラックスを桂一郎に踏まれていた。

 ろくに動けない状態で大樹の後ろに指が挿入される。

 じわじわと侵食してくる指に何故か排泄感が強まる。

「き…気持ち……悪い……」

「そぉ~かぁ~?」

 息も絶え絶えに訴えてる大樹に、桂一郎は嘲笑うかのように長い指を埋め込んでいく。

「こ、こんな事―――止めろよ……。守屋が…悲しむ……」

「泣いてんのはお前の方だろ?」

 何時の間にか大樹の頬を涙が伝っていた。

 生理的嫌悪感と恐れからくる涙を桂一郎は実に楽しそうに眺めていた。

 根元まで埋められていた指をゆっくりと抜き出され、また急激に挿れられる。

「いっつ―――」

 大樹は痛みと気持ち悪さから逃れ様と身体を捩ったが、胸を前に突き出すのが精一杯だった。

「何?こっちも可愛がって欲しいのか?」

 そう言って桂一郎の舌が大樹の突起部分を舐めた。

 胸と後ろを同時に可愛がられ、大樹の腹筋がビクビク震える。

 そのうち桂一郎の長い指が大樹の中のある一点を引っ掻いた。

 その瞬間、頭の中が真っ白にスパークした感じがした。

 身体が空中に投げら出され、浮遊感を感じた瞬間、凄い勢いで引き戻される―――そんな感覚に

大樹の手足は痙攣した様にピクピクと動く。

 それを少し上の目線から見下ろしていた桂一郎の瞳が残酷そうに笑っていた。

「も……許して……」

 大樹は自分が泣いているのが判った。

 嗚咽に絡まってろくに言葉が繋がらない。

 こんなでかい男が泣きじゃくる姿等気持ち悪いだけだ―――そう思いながらも、涙を止める事は出来

なかった。

「お前さぁ~……。俺みたいな男にそういう顔すんの逆効果って知ってる?」

 桂一郎の声は楽しさに弾んでる様に聞こえた。

 もう1本指が増やされ、必要以上に大樹の弱い部分を抉られる。

「やぁっ―――」

 言葉は声にならず、空気さえまともに吸えない。

 まるで死に掛けた魚の様だ―――。

 大樹がそう思った瞬間、魚は熱くて太い槍で串刺しにされた。

「あっ、ああぁーっ……」

 無意識に上がった悲鳴の為に大きく開けた口から槍が出るのではないだろうか……。大樹はそんな

錯覚に囚われながら身体を硬直させていく。

「ちっ、結構濡れて緩んでいたからイケるかと思ったけど―――やっぱ処女はキツイは」

 自分を完全に女扱いした桂一郎は、それでも侵入してくる事に手を緩めない。

 寧ろ残酷に深く身体を繋げ様とする。

 大樹は唯一動かせる首を振り、涙と涎でぐちょぐちょになった顔で懇願する。

「…許して……お、お願い……も…もう……あっ、ん……」

 桂一郎の固い先端が大樹の最も弱い部分を抉った時、大樹の中にえもいわれぬ快感が奔った。

「やぁ、あぁぁーっ―――」

 自分でも自分の身体に何が起こったのか判らない。

 只、痛みで萎えていた筈のものが緩やかに勃ち上がり、先端から何かが零れていく様な感じがす

る。

「やぁ……っ、漏れちゃ―――」

「はぁ?何?つーか、お前淫乱過ぎ―――。ったく、見た目通りイヤらしい奴だぜ」

 桂一郎の言葉に大樹の脳裏に自分とそっくりな母親の顔が甦った。

 自分と同じ、綺麗な顔を持った母は―――見知らぬ若い男と抱き合っていた。

「ち、違う―――違う―――あっ、はぁ、ん……やっ、違う―――」

「何が違うんだよ?初めてケツを犯されて前をおっ勃ててるくせによ」

 そう言うと桂一郎の手が大樹自身を握り込んでしまった。

 一番敏感な部分を擦られているのに、前は熱を放出する事を遮られてしまった。

「やっ、……それ、いやぁーっ」

 大樹の意識が朦朧となって 自分でも何を言っているのか判らない。

 瞼の裏では只管母親の背中を追い掛けたが、自分と同じ顔を持つ母親は一度も振り返る事なく、

自分と父を捨てて出て行った。

 あれからだ―――。大樹が女性を苦手とする様になったのは―――。

 自分の顔を嫌いになったのは―――。

「達かして欲しけりゃ言いな!今お前の中に居るのは誰だ?」

 言われてる事が判らない―――。

 只、無意識に唇が開いてその名を告げる。

「こ……小塚……」

「違う!桂一郎だ。言ってみな、桂一郎って」

 身体中を駆け巡る熱を解放したくて、大樹はうわ言の様に呟く。

「桂一郎……?」

「そうだ。ほら、もう1回。お前の中を犯してる奴は誰だ?」

 その言葉と同時に更に深い処を抉られる。

「やっ―――深い……。んっ……け、けぇーいち、ろぉー……あっ、んっ」

 もう…、ろくに喋れず舌足らずの言葉に、桂一郎は満足そうに目を細め、汗と涙で額や頬に引っ付

いた大樹の髪を優しく梳いてやる。

「他の奴の前でこんな風に股開くんじゃねぇぞ!!んな事してみろ、ただじゃおかねぞ、こら」

 言われてる意味を理解しているのか甚だ疑問だが、大樹は一生懸命首を縦に振る。

「誰ともしねぇな?」

 念を押す桂一郎を、

「……しない……誰とも……」

 涙目で見上げる大樹―――。

「俺だけだぞ」

「んっ、けぇー…いち……ろぉーだけ…」

 大樹がそう言った途端、熱を塞き止めていた手が離され、激しく揺さ振られ突き上げられた。

「やぁ、んっ…、あっ、あぁーっ」

「やあらしい声」

 耳朶に落とされた低くて艶の有る声にブルッと身を震わせた瞬間、後ろに力が入った様だ。

「うっ……」

 と呻き声が自分の直ぐ近くでしたなぁーと、何処か他人事の様に思った瞬間、大樹の最奥に熱き

飛沫が叩き付けられ、それと同時に意識を手放した。

 何時果てるとも知れない白濁を撒き散らかしながら―――。




















「なぁ~んだ桂一郎ぉ~、こんなとこに居たんだぁ~」

 屋上で一服していた桂一郎に、クリクリ瞳の美少女風の少年が近寄って行く。

「鬱陶しいから近寄んなよ」

 桂一郎の如何にも嫌そうな顔にも亜貴はこれといって怯む様子も無く、隣に腰掛ける。

「もぉ~、たった一人の従兄弟同士なんだからぁ~、仲良くしようぉ~よぉ~」

 亜貴の、他の連中が見たら可愛いとしか言い様のない仕草と顔をチラッと見た桂一郎は、態とらし

い溜息を吐きながら、

「俺の前ではぶるの止めろよな。気持ち悪いぜ」

 と吐き捨てる様に言った。

「はいはい、ったく、愛想もクソもねぇーよな、自分」

 コロッと態度を豹変させた亜貴に呆れながら、桂一郎は前々から言おうとしてた事を口にした。

「お前いい加減さぁ、近寄って来る男を牽制する為に俺の名前を出すの止めろよな。もう、近寄って

来る奴は居ねぇーんだろ?」

「いいじゃん、別に―――。つーか、何?俺と付き合ってんのが噂になったら困る事になる相手でも

出来た?」

 亜貴の言葉に桂一郎は暫く考えて―――ニヤッと笑った。

「いや―――寧ろいい脅し文句になった」

 御蔭で前々から手に入れたかったものが手に入った。

 あの綺麗な顔を一度泣かせてみたかった―――。

 ポケットに突っ込んでいた携帯を取り出し、昨日写した写メを見る。

 苦痛と快感に翻弄されている大樹の色っぽい姿が現れる。

 写メを見ながらニヤ付いている、桂一郎の手元を亜貴が覗き込む。

「てめぇは見んな!」

 恫喝されても亜貴は動じない。

 寧ろ心底呆れた様に、

「相変らず趣味が悪いんだから…」

 と肩を竦めるだけだ。

「人の事をとやかく言えるのか?お前に―――」

 自分を襲おうとした相手を逆に叩きのめし、相手の裸を写メに撮り、それをネタに強請っている亜貴

にだけは言われたくないと桂一郎は思う。

 どっちもどっち、血は水よりも濃い―――という言葉は彼らの頭の中に浮かばないらしい。

「あんまり虐めて泣かすと嫌われるよ?桂一郎―――。それでなくてもあんたサドなんだから……」

「ばぁ~か、虐めてなんかいねぇーよ。めぇいっぱい可愛がって啼かしてんじゃねぇか」

 桂一郎の言葉に、呆れた様に吐いた亜貴の溜息は、桂一郎が吐き出した煙と同時に青空に吸い込

まれていった。


 ―END―
「今、サイトで挑戦している、ちょっとエッチな「100題」のお題ストです。」
...2004/9/3(金) [No.123]
水紀里那
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