雨だ。 真っ暗な闇にいきなり振り出す雨。 こんな日はどうしても思い出してしまう。 匠と出会った夜もこんな雨の日だったな。
俺はあの日どうかしていた。もちろん正気でなくなってしまったのには訳がある。 理由は簡単、ふられたのだ。 ずっと俺の傍にいてくれると約束したのに、俺以外は愛せないと言っていたのに、真咲は急に俺の前から姿を消した。書きおきには『秋のこと好きだったけど、俺には重すぎた』と書いてあった。 重いってなんだ。人を愛するということはそういうことじゃないのか。やれと言われれば何でも命令を聞いたのに。恥ずかしい台詞も屈辱的な格好も、真咲の前だからできたのに… とにかく俺はあの日どうかしていた。誰かに抱いてもらいたかった。真咲に埋めて貰いたい穴が熱くなるのを押さえられなかったんだ。そこから真咲へのどうしようもない思いがあふれ出す前に、楔を打ち込んで欲しかった。 「おい」 ふいに声を掛けられた。ここは俺たちみたいな野郎共が集まる場所だ。声を掛けられるということが意味しているのはひとつだ。 俺は振り向いてそいつの顔を眺めた。真咲には叶わないが、端整な顔立ちをしている。しかしどこか野性的な匂いもし、挑発するような目が妙に色っぽい。 「雨にまぎれて泣いてるのか?」 「……?」 俺は頬に手をやった。泣いている?そうか、俺は泣いているのか。そうだな、泣いて当然か。雨に降られて気づかなかったな。 「俺は泣いているのか」 声にならない声だった。そいつに言ったわけでもなく、言葉にしようと思ったわけでもない。 ふと頬に温かいものを感じて顔を上げる。 「きれいな顔が台無しだぞ」 そいつは俺の両頬を大きな手で包んで、柔らかいキスをした。 「おまえ名前は?」 「…秋。春夏秋冬のあき…」 「秋か。俺は匠だ。雨なんかに頼ってないで、俺を頼れ。」 そしてさっきとは違った激しいキス。口内を隅々まで匠の舌が侵入してくる。俺はとにかく早く抱いて欲しくて、匠の舌先を一生懸命追いかけた。
それからは二人とも無言のままホテルへ向かい、ベッドへ直行した。言葉なんて要らなかった。 「あっ…いい…ッ」 「秋、すごい。もうこんなに汁が出てる」 「ぃや…んんぅ…」 匠は俺の中心を必要以上に扱く。でもイキそうになる手前で手を緩め、また強めそれの繰り返しで、果てしない波が押し寄せてくる。 「ん…はぁ…っ、ぁ、あ……」 こんな快感を初めて知った気がする。もっと快感が欲しくて、匠の手の動きに合わせて腰を思わず振ってしまう。すると匠が意地悪い目をして、手を離す。 「やだぁ…、もっと…もっとぉ…っ……」 俺はとにかく犯して欲しくて、匠の胸の突起に唇を押し当てる。そして円を描くように舌を這わせて、突起をついばむ。 「…犯して…お…ねがい…」 そしてそのまま舌を這わせて匠のペニスを頬張った。それは思ったよりも硬くて大きく、熱かった。そこにぶら下がる双玉も唾液でいっぱいになり、頭の部分の小さな穴を舌で刺激する。指を絡めて匠のペニスがひと時も離れないようにまとわりつかせる。 「う…ぅ、あ…き……」 匠はひどく苦しそうなうめき声をあげて、俺を離しヒクつく蕾に指を這わせる。 「…はっ…」 思わず腰がはねた。そこはすでに俺のガマン汁が伝いぬれぬれになってるだろう。でも匠は更にぬめりが欲しいのか、蕾を舐め始めた。 ぴちゃ、ぴちゃ…わざと立てた生々しい音が、耳を刺激する。その音を聞いただけで、俺は下半身が熱くて仕方なくなる。 「ぅん、いい…っ!…っ……ぃ…あんっ…!」 匠の指が挿入してくる。そしてこんなにもいろんな角度が作れるのかと思うほど、彼の指はあちこちに曲がり刺激を重ねる。 「んやっ…あぁ!…おかし…く…なりそ……っ」 「まだ1本だぜ。もっと大きいので犯して欲しいだろ?」 そして指をぐりぐりと動かし、俺が一番感じるところを探し当てた。 「ひゃっ…ぁ、ぁ…そこ、いい…っ……ッ…」 「あんまりかわいい声で鳴かないでくれ。俺がおかしくなりそうだ…」 匠は指を抜き、そのまま自分のものを勢いよく沈める。 「ああっ!!……あつっ…い…ぃ……!!」 俺の唾液のついたペニスと匠の指のおかげで痛さを感じずに、快感だけが沸きあがる。そして俺は硬くて赤黒く腫れ上がっている自分のペニスを同時に扱く。 「ぅ…あき…秋の中ぬるぬるしてきつくてたまんねえ…音聞こえる?」 ぐちゅぐちゅと俺の後ろが音をたてている。そして手の中では俺の熱いものがくちゅくちゅと擦れて、しびれが全身にまわる。 「い…ぃやぁ……あ、出ちゃうぅ……っ!」 その瞬間、匠が俺の手を乱暴に引き離し根元だけをぎゅっと握って、また意地悪そうな目を向ける。 「ぁんッ…いやぁ!…もう…イキそうなの、にぃ…ん、ふぅ……っ…」 「ダメだ。もっと鳴け」 俺は早く昇りつめたくて、後ろに力を入れる。きゅっとしまって、匠のものがもっと近くに感じられる。他にははまらないパズルのピースのように、ぴったりと壁を押し付ける。 「ん…秋…すごい…ッ……」 途端に匠の動きが早くなる。そして奥へ奥へとずんずん侵入してくる。まるで彼のペニスは限界をしらないみたいに、大きく腫れ上がってくる。 「あ…あ…ッ…あ…ん!…っ…」 動きに合わせて俺も思わず腰を動かす。頭のてっぺんから足の先まで、電気のような快感が押し寄せる。匠は俺の根元を握っていた手を離し、扱き始めた。 「そ…そん…な…っ…あ、ぁん!…ぃやぁ!……っ!」 「あ…き、秋…!も、我慢できね…っ」 「んん…ッ!…ぁ、あぁぁぁああ……ッ…ッ!…」 ほとんど二人同時に果てた。俺の中には匠の放出したものがどくどくと注ぎ込まれる。 「秋、おまえ最高…」 俺は朦朧とした頭で満面の笑顔を見た。 「…真咲……?」 一瞬そう見えてしまった。真咲が俺に笑いかけてくれたのだと。 「秋、おまえなぁ。愛し合った直後に他の男の名前呼ぶなよ…」 その声に今までの快感から解き放たれ、現実に帰る。 あ、そうだ。こいつ、匠… 「ごめん…」 「いいさ、俺が忘れさせてやる。おまえの体からそいつのしみをとってやるよ」 今度は挑戦的な目。そして唇に触れるだけの優しいキスをくれる。 「いつか、俺だけのものにしてみせる…」
あれからもう2年。隣で寝息を立てている匠。 外は雨。あの日のような雨。 俺、もうとっくにお前のものになってるよ。 愛してるよ、匠。
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