24時間自動で巡回する深夜の地下鉄は人が少ない。犯罪が横行する電車に俺は毎日乗っていた。幸い工事現場で慣らした体格が事件を遠ざけているらしく、平和な通勤。 そうあの日もいつもと変わらない筈だった
俺より一つ向こうのドアから客が一人乗ってきた。 金髪の青年で、歳は二十歳そこそこか。こんな時間まで遊び歩いてる奴特有の刺々しさが目付きに現れている。ドアにもたれると、奴は携帯を耳に当てて話し始めた。注意すんのが面倒で寝ようとした俺は、もう一度奴に視線を取られた。縮こまっている奴が急に体勢を崩したからだ。 …おいおい、勘弁してくれ
「大丈夫か」 「あ、大丈夫だ!」 義理で声をかけると返事が返る。が、そんなうわずった声で言われてもな。ビクビクと体を震わせている奴を遠くから観察し、俺は一つの可能性に思い立った。 「…もう、いいだろ。バレるよっ…」 俺が席から立上がり歩いて行くと、奴は携帯へそう言って逃げようとした。 「待てよ、具合悪いんだろ?治療手伝ってやるよ」 腕を掴んで言ってやる。驚愕に歪んだ奴の顔が面白くて、含み笑いをしている俺を余所に、奴は携帯に答えていた。 「知らない、掴まった…。どうすれば、ひぁっ!」 奴が突然声をあげたのは、俺が尻に咥えていたバイブを押し込んだからだ。 スウェットジャージはよく伸びる。3cm程はみ出していたバイブを掴んでぐちゃぐちゃと突き上げてやると、奴は嬌声をあげながら手摺にすがった。この位で腰が砕けるとは、かなりの間バイブにかき回されていたようだな。 「あっ、ああっア。ん…止めろ、っ馬鹿野郎…っ!」 「でかい口叩くな変態野郎」 奴の胸倉を掴んで車体に叩き付ける。ぐっとうめいて大人しくなった奴は、それでも耳から携帯電話を離さなかった。それだけ電話の相手が絶対的な権力を持っているという事だ。 「え…そんな、帽子っ…わかりました」 驚いて携帯を見つめた後、奴は俺を上目遣いに見上げて背を向けた。片手で手摺に掴まって腰をあげた格好を取る。突き出された尻にはよく見るとジッパーで開くようになっていた。こりゃあズボンを下ろす手間なくヤれるな、いい服だ。 にやける俺の前で奴はジッパーを下げ、震えるバイブが刺さった尻が露になる。 「お願いします…俺の、だらしないケツを…バイブで突いて下さい…」 か細い声でそう言うと、奴は目を瞑った。俺がすぐにでもバイブを掴んで攻め立てるとでも思ってるんだろう。 俺が何もせず席に座ると戸惑った視線を向けてきた。
「まだ、席に座って…いや、そうじゃな…はい」 携帯の向こうに現状を報告しているんだろう、奴はぼそぼそと話した後、俺の足の間に膝まづいた。 「俺に…大好きなペニスを舐めさせて下さい」 「いいだろう」 携帯から指示が出るのか、俺と奴との会話に間がある。座席に四つん這いになって横から咥えようとするのは、俺が無理なくバイブに手が届くように配慮しての事だ。これは指示されての事だろう、向こうの奴とは気が合いそうだな。 「ふっ…んぐっ」 「ん…上手いな」 いきなりのディープスロートに俺は思わず腹に力を入れていた。ねっとりと絡み付く舌が精を搾り取るように上下する。思った以上に慣れた様子で奴は頭を動かしていた。 「んむっ、んんっ」 「舐めるだけじゃ物足りないだろ、ケツ振ってもいいぜ」 「あ、りがとうございます…ぅ」 しゃぶりながら腰を動かすと、咥えているバイブがイイ所にあたるらしい。喉がヒクリと動いて絶妙に締め付け、俺は気分良く奴の頭を撫でた。 舌を出して舐めたり、吸い上げたりと実に良く仕込まれてる。 ただあっさりイかされるのは悔しいな…
「んっ、ふアっ!」 寂しそうな尻の間で揺れるバイブに手を掛け、ギリギリまで引き抜いた後、根元までねじ込む。立て続けに突いてやると、奴は奉仕するのを忘れて喘いだ。 「おい、口が留守になってるぞ」 膝で胸を蹴りあげると慌てて咥え直す。奴の頭の動きに合わせてバイブを動かしてやると、鼻にかかった甘い声をあげてヨがる。律義に離さない携帯を通じて声は向こうにも筒抜けなはずだ。今ごろ向こうの奴は声をオカズにしてるのか?ペットを人に貸すなんざ俺にはわかんねぇ趣味だ。 だがこいつの具合は気にいった。頭を掴んで腰を叩き付けると、喉の粘膜が擦れて気持ちいい。えづいている奴に遠慮なく精液をぶちまけると、むせて零しやがった。頬を叩いて白濁に濡れるペニスを舐めさせ、奴から携帯を奪う。向こうにいるのはどんな奴なのか興味があった。 「よう、気にいったぜ。なかなか仕込まれてるじゃねぇか」 「次からは代金を頂くぞ」 聞こえて来たのは冷静な男の声。俺達の濡れ場を聞いていた筈だが、熱なんて感じられない。俺はぞくぞくするような思いが背中に走り、素姓の知れないこの二人がいたく気にいった。 これが一週間前の事だ
「はあっ、ひ…アッあ、ああ!」 「もっと腰振って締め付けろ、最近緩いんじゃないか?」 「あ…ア、もうしわけありません…」 深夜の誰もいない電車にぐちゅ、じゅぷと卑猥な音が鳴り響く。座席に膝を乗り上げ窓に手を突いた奴は、あれから一日置きに俺に犯されに来ていた。電車に乗ったら二分でセックス、最高の環境だ。奴のケツは貪欲に飲み込み離そうとしない。何度も放った物でぐちゃぐちゃになっている穴に栓をして、俺は激しく突き立てると再び中に注ぎ込んだ。 「い、やぁんんア!」 頭を振りながら奴も達し、自らの手で受け止めた。下りる駅も近い事だし服を整えているところで、奴は振り返って言った。
「待てよ…ジョアン、話がある」 「…お前に名乗った覚えはねぇぞ」 「ジョアン・マクレガー。3月1日オクラホマ生まれ、前科2犯どちらも軽い窃盗罪。だが本当にそれだけかな」 「…何の話だ」 「ビジネスさ、いや脅迫かな。とにかく渡しとくぜこれ」 本名その他を言い当てられ混乱する俺の前で、奴は棚の荷物を下ろそうと立ち上がった。途端に足を伝う精液に畜生と吐き捨てる。 「ほい。あいつは見せればわかるって言ったけど」 軽々した鞄を開けて俺は目を疑った。そして携帯の向こうにいる奴を恐れた。 鞄にごろごろと入って居たのは一見カセット、だが俺はわかる。爆弾だ。一緒に入っていた紙切れには幾つかの数字が並んでいる。俺にはわかるその意味に、俺は従うしかなかった。 「わかったと…言ってくれ」 全身から力が抜けて座り込む。爆弾を作って遊んでいたのは遠い昔だ、威力も小さくて吹き飛んだ破片で人が死ぬなんて思わなかった。建設に関わるようになるまで知識も忘れてたんだ。今の現場で爆弾を取り扱えるのは俺一人、御丁寧に俺が人を傷つけた件のと同じ作りの爆弾だ。どういう風に使うのか知らないが、建設中に仕掛けたのがバレても捜査は俺止まりだろう。 そして俺は引き受けるしかない。俺の弟が、俺が殺した人の娘を愛してる限り… 「はははは、お前もあいつの手駒になったんだな。もう逃げられないぜ、宜しくな。俺は三月うさぎだ、あんたは…さしずめハンプティダンプティか?」 にやにやと笑ううさぎは足を開いてみせる。 「続きやろうぜ、色々こんがらがった頭を発散したいだろ」 誘う笑みに俺はふらふらと覆い被さった
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