3月のとある日。 珍しく慎吾が用事があるから先に帰ってくれと言ってきた。 それを快諾した俺はどこか寄って帰るかな、なんて考えつつも結局一人ではつまらない気がしてまっすぐ寮に帰ることにした。
帰っても別にする事が無くて、ベッドに寝転んでうつらうつらしていたらいつの間にか本当に寝てしまったらしかった。 コトンという物音で目が覚め、躯を起こすと丁度冷蔵庫に何か入れていた慎吾と目が合った。 「あ、起こしちゃった?御免ね」 パタンとドアを閉め、慎吾が近づいてくる。 「おかえりぃ…」 まだ半分寝ぼけたまま慎吾に手を差し伸べる。 その手を取った慎吾が、ベッドに腰掛けそっと俺を抱き寄せた。 「ただいま…。ってちゃんと起きてる?」 クスクスと笑いながらそっと頬に触れられる。 「起きてる…」 ヘラリと笑んで首に手を回せば顎を捕らえられて口付けられた。 「んっ…」 何度も何度も口付けられ、それは時には羽のように軽く、時には息も出来ないほどの深い口付け。 どのキスをとっても慎吾には敵わないと思う。 気づいたら魂が抜ける感じで必死に意識を持っていかれないようにするので精一杯だから…。 「ごちそうさま…」 妖艶な笑みを浮かべて慎吾が呟く。 思わずおそまつさまと応えて失笑をかった俺に否は無いだろう。
「そういえば今日は何処に寄ってたんだよ?」 今のキスで完璧に目の覚めた俺は気になっていたことを聞いてみた。 「え?うん、ちょっと食堂では売ってないものを買いに行ってたんだ」 「ふぅん?」 わかったようなわからないような慎吾の答えに俺は取り敢えず頷いてみせる。 「…ね、翼。今日は何の日か知ってる?」 ソファに移動した後、唐突に慎吾が言う。 「何の日って…今日は3月14日だろ?んーと…ぁ、ホワイトデーだ」 「そう、大当たり♪」 正解を言い当てた俺に、慎吾が満面の笑みとともに頭を撫でてくれる。 ゃ、撫でられるのは嬉しいんだけどもなんでこんなに上機嫌なんだろう。 い…一抹の不安がよぎるようなι 「でね、バレンタインにあんなに素敵なチョコを貰った僕としてはお返しをしたいと思うんだよね」 何故だか何時も以上にニコニコと笑ったまま、慎吾が言う。 「う、うん」 半分以上気おされながらも俺が頷くと慎吾は更に笑みを深くした。 「というわけでお礼はホワイトデーらしいアイテムをつかって俺の身体で返したいと思うんだけど…良いかなぁ」 可愛らしく首を傾げながら慎吾が言う。 …んだけども。 「ちょっと待って。身体で…って、ええ?しかもアイテムって何?」 いくつか聞き捨てならない単語を聞いた気がする。 「まぁそれは見てのお楽しみってことで。さ、支度しようか」 ニッコリと笑う慎吾が恐い。 今まで何度このパターンで凄い事をやられてきたことか。
というわけで慎吾はイソイソとベッドメイキングに勤しんでいる。 といってもさっき俺が寝てたから乱れたシーツを元に戻しただけなんだけれども。 俺はなんとなく手持ち無沙汰なので取り敢えずシャツのボタンを外してみる。 慎吾はといえばいつのまにか冷蔵庫からさっき入れたものを取り出してきたりして。 「それは…?」 「んー、ホイップクリームとマシュマロだよ。ホワイトデーには欠かせないでしょ」 首を傾げる俺に笑いながら慎吾が答える。 欠かせない…のかは良くわからないけれど。 っていうかそれ以前に何に使う気ですか、って感じだよ。 「ん…」 ゆっくりと慎吾が俺をベッドに押し倒す。 慣れた重みに既に俺の心臓はスピードを上げていて。 それを感じた慎吾がクスリと笑う。 それとともに慎吾の唇がだんだんと降りてきて。 服を寛げながら胸の突起に口付ける。 「ぁ…慎吾ォ…」 俺の口から零れてくるのは鼻にかかった甘え声だけ。 恥ずかしくて耳をふさぎたくなる。 更に恥ずかしいことに気がつけば俺は全裸にされていて。 もうひとつオマケに慎吾の手にはホイップクリームが握られていた。 「し、慎吾?つかぬ事を聞くけれどもそれは何に…?」 冷や汗をたらしながら恐る恐る聞くと。 「何って…勿論こうやってだよ♪」 それはもう口で言うより遥かにわかりやすくすぐさま行動に移してくれちゃって。 にゅるんと突起に搾り出し、クリームごとペロリと口に含まれる。 何だかそれは普通に舐められるよりも感じてしまって。 俺はいつも以上に喘いでしまう。 「ん、慎吾…っ」 思わず頭まで抱え込んでしまって。 慎吾はさらにクリームの魔の手を広げてゆく。 にゅるにゅると胸、腹、挙句の果てに俺自身にまで搾り出す始末だ。 「翼の全部が甘甘だね。特に此処とか…」 クスクスと笑み慎吾の舌がクリームの後を辿る。 普通の愛撫とはまた違った感覚に気が遠くなりそうになる。 「元々甘いけど今日はクリームのお陰でさらに甘い…」 ペロペロと舐めながら手でも扱かれて俺はもうそれだけで果ててしまいそうになる。 「出して良いよ…」 丸ごと口に含まれてかりっと鈴口を甘噛みされ、俺は声をあげるまもなく白濁を放ってしまう。 コクリと飲み下す音にふと我に返る。 「ごめ、慎吾…俺だけイっちゃって…//」 身体を起こしながら言う。 「んー、良いよ?翼の、とっても美味しかったから」 ペロリと唇を舐められ、そのまま口付けられる。 でもされっぱなしって訳にもいかないよな。俺も一応チョコ貰ったんだし。 「翼…?」 慎吾の手からホイップクリームを受け取り、体勢を入れ替える。 今度は慎吾がベッドヘッドに凭れ掛ってその足の間に俺が居る状態だ。 「じっとしてて。今度は俺がするから…//」 慎吾がしたように、既に天を向いている慎吾のモノにクリームを搾り出す。 ある分だけ搾り出してクリームは脇へ。 「ん…」 カクゴを決めてそっと慎吾のモノに唇を寄せる。 俺はあんまり上手くないから慎吾にフェラチオをするのは本当に数えるくらいなんだけど。 俺から言い出したことがあまりに珍しかったらしく、慎吾は驚きを隠せないようだ。 「っ…凄くイイよ、翼…」 それでも感じてくれているのか、少し息があがっているみたいだ。 俺の頭を撫でてくれている手が、ほんの少しだけ強引に押し付ける。 「んっ…ふ…」 何時もと立場が逆になったみたいで俺は嬉しくなって更に顎を使って扱きあげる。 「…翼、そろそろ出しても良い…?」 一度口から出して裏筋を舐めていたら切羽詰ったように慎吾が聞いてきた。 頷く代わりに俺は深く口に含み、吸い上げるように愛撫する。 「…っ」 息を詰めた、微かな慎吾の喘ぎに一呼吸遅れてねっとりとした液体が喉に迸る。 コクリ、と音を立てゆっくりと全部嚥下する。 腕を引き寄せられ、その勢いに従うまま慎吾の胸に抱きつく。 何時もより少し強引でも、そのキスはやっぱり慎吾のもので。 「凄く…嬉しかった。だから俺もお返しだよ?」 ニッコリと笑み、慎吾が笑う。 笑う…まではよかったんだよ、うん。 でもその左手は何か袋を手繰り寄せていて。 しかも右手はさりげなく俺の後孔に食い込んでいる。 「っ…何…?」 よくわからないけどなんだかまたイロイロとヤバイ気がするι 「大丈夫、ちょっとマシュマロを入れるだけだから。直ぐに溶けて潤滑剤の変わりになってくれるよ♪」 …珍しくマシュマロなんてものを買ってきたと思ったらやっぱりそういう目的ですかι そして抵抗しようにも後孔にある悪戯好きな指がそうさせないし。 あっと思ったときには一つ目のマシュマロが後孔に挿入っていた。 「ん…なんかヘンな感じ…//」 触れているような、いないような。 何だか凄く頼りない。 「そんなに感覚はないでしょ?凄く柔らかいし。これなら翼が傷付くこともないしね。どうせなら上の口でも食べてみる?」 言うが早いか慎吾がマシュマロを一つ口に含んだ。 あれ、俺に食べさせてくれるんじゃないの? そう聞こうとしたらそのまま口付けられた。 舌と一緒に溶けかけたマシュマロが入ってくる。 …すっごく甘い// もともと慎吾のキスって甘い…んだけど、今はマシュマロの所為で余計に甘く感じる// 「んー、やっぱり翼の舌は甘いね♪」 上機嫌そうに慎吾が言う。 でもその間にも指がマシュマロをふたつ、みっつ…と俺の後孔に挿入してる。 「あ、良い感じに溶けてるね。ついでに少し垂れてきてるのがたまらなくソソる」 クスリと笑み淫靡な視線で慎吾が俺の太ももを見る。 つられて見ると確かに// まるで慎吾のアレが流れ出して来た時みたいな光景になっている// 「ね、そろそろ挿れても良い?」 何時もより少し上ずった慎吾の声が聞える。 それが感じてくれているからだっていうのが何だか凄く嬉しい// 「ん…このままイクよ…?」 その所為だろうか、俺も何時もより大胆になっているみたいで。 何もかも頭から吹っ飛んでしまって思わず自分から騎乗位を申し出てしまっていた// やっぱり慎吾は少し面食らっていたみたいだけど次の瞬間もの凄く嬉しそうに笑んでいて。 腰に添えられた手に促されるまま慎吾のモノの上にゆっくりと腰を下ろす。 「んっ…ふ…凄い…おおき…っ//」 挿れられる勢いのまま言葉が吐き出されていく感じで。 もう何を言ってるのかも自信がなくなってしまっていた// 「いやー、嬉しいこと言ってくれるじゃない。じゃぁ今日はたっぷりこれで啼かせてあげなくっちゃね」 そういう慎吾も何時もと少し違うシチュエーションに興奮しているらしく。 ちょっとキャラが変わっていた(笑) 「ん…ぅん…//」 頷いた途端下から激しく突き上げられる。 気づけば俺もその動きに合わせて腰を激しく動かしていて。 二人で天国への階を勢い良く駆け上がっていた。
結局イってからも体位を変え、上下を変え、それこそ搾り取るようにお互いをイかせ合っていた。 …今思い出すと凄い恥ずかしいんだけれども// そしてたっぷりと愛し合った後、気持ちよく惰眠を貪ったのであった。
ふと目が覚めてみると慎吾が満足げな笑みを浮かべて俺を見ていた。 曰く「たまにはこういうエッチも良いでしょ」だそうだ。 たしかに悪くはなかったけど…毎日は勘弁して欲しい。 っていうか明日が休みじゃなかったらどうするつもりだったんだよって感じだι
こうして俺たちのホワイトデーの夜は更けて行くのだった…。
*おしまい*
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