大学から帰ってきたら、俺の家から見知らぬ女の子が飛び出してきた。 「――おっと」 狭い廊下ですれ違う。 泣いてた、あの子。俺の顔ちらって見て、走って逃げていった。
理由はわかってるけど――。 「先輩」 部屋に入って中にいるだろう人物に声をかける。 「おかえり、高屋」 リビングで、先輩はテレビを見てた。何事もなかったかのように。
2LDKの部屋に、俺と先輩は住んでいる。 正しくは俺の部屋、だ。 そこに先輩が転がりこんできたのは一週間前。 「小火だして追い出された」 って言ってたけど、本当は女と喧嘩して追い出されたんだよ。 それで新しい部屋が見つかるまで俺のウチに居候してるんだ。
「先輩――あの子泣いてましたよ」 「そうか?」 先輩――小澤裕貴は、フった女にとても冷たい。落とすまではあれやこれやとマメに動くくせに。 「ここ借りてるの俺なんですから、俺が泣かしてるって思われたら、ちょっと困るんですけど」 大家から親に伝わったりしたら、仕送りを切られるかもしれない。バイト代だけで過ごせるほど、東京は大学生に甘くないのだ。 「ああ。今度は玄関の前で大げさに喧嘩するようにするわ。俺だってわかるようにな」 「先輩……」 「なあ、今日の飯、なに?」 俺は持ってるスーパーの袋から材料を出して「中華丼」 「やったぁ。だから、高屋って大好き!」 そう言って無邪気に笑う。 自分で武器だと言う、そこらの女よりも可愛い顔。細い身体。長いまつげで縁取られたその目で、俺を優しく見るのは――止めて欲しい。 「――すぐ作りますから、お菓子食べないでくださいよ」 「はぁい!」 先輩はまたテレビに視線を戻した。 その後姿。 俺の視線感じませんか? 何時だって、俺は先輩を脱がして視姦してるんですよ。とくに、女の匂いがすると、俺はあんたを傷つけたいって残酷な気分になる。 知らないでしょう? 知ろうとしませんものね。 それでいいんです。 だから、こうして一緒にいられるんだ――。
「小澤先輩、まだ居んのかよ」 サークルの友達、安ちゃんは先輩を良く思っていない。て言うか、よく思ってる人のほうが少ない。 あれだけ女遊びしてればしょうがないだろう。本人もそれは自覚済みだ。 「ああ」 「本当に家、探す気あんのか?」 終わった授業のプリントをまとめてファイルに挟みつつ、安ちゃんは嫌悪感を隠さず言う。 「――たぶん、ない」 「だろ? お前、甘やかしすぎなんだよ、あの人を」 「でも、家ないんだし……なかなか見つからないものかもしれないだろ? 変な時期だから」 いや、他に理由はあるけども。 「ばーか。さりげに、お前が家を見つけてきて勧めればいいんだよ!」 「あー」 なるほどね。 誘導して追い出すわけか――。 「じゃあな」 と、片手を上げて、安ちゃんは忙しくバイトに向かった。
俺はまっすぐ家に向かわずに、本屋で住宅情報誌をみつくろう。 一人暮らしにちょうど良いものが特集されている一冊を買って帰った。 「ただいま」 「おかえり」 先輩は、大抵家に居る。 それでケイタイで呼び出されると出て行く。女のもとに。 「今日の夕飯は?」 「外で食べませんか?」 「えー……」 「おごりますから」 先輩はさっそく立ち上がった。
近所のファミレスで、2000円のセットを食べる。2人で4000円。結構な出費だ。 「悪いなあ、家に住まわせてもらってるだけじゃなくて、夕飯まで」 先輩は、肉が食べれて嬉しそうだ。可愛い猫みたいな顔して、食欲は豹かライオンなんだから。 「そのことなんですけど、先輩」 俺は買ってきた本の折ってるページを見せた。「ここなんか、良いんじゃないかなって」 8畳の部屋で家賃は6万。学校にも近いし、駅もまあまあ。 「――なに、これ」 「だから、先輩の……」 不機嫌になってる。口に肉を運ぶ手が止まって、俺を睨む。 「この飯、さよならってことだったんだ?」 「いや、そういうわけじゃ……」 「わかった」 先輩は、ぱくぱくとすごいスピードで全て平らげ、呆然としてる俺の分まで食べてしまう。あの身体の何処に入るのだろうと不思議に思うくらい食べて、勝手に一人で出て行こうとする。 「まってください!」 レジで急いで金を払い、走って追いかける。 先輩は俺が声をかけても、振り返ってくれない。
無言で家に着いた。 「先輩」 「……ああ、出てくから安心しろ」 先輩は、荷物をスポーツバッグにつめる。そのバッグ、俺のなんだけどいつのまにか先輩の物になってた。 「じゃあな」 「こ、こんな時間にどこにいくんですか!」 「どこでもいいだろ!」 玄関で押し問答。 出て行こうとする先輩を、俺は必死で引き止める。 確かに、出ていって欲しい。でも、出ていって欲しくない。 この気持ちをどう説明すれば良いんだ。 「離せよ!」 「いやです」 「出てってほしいんだろ!」 「それは……」 思わず手を離す。迷ってるんだ。 先輩はよれてしまった服をなおしつつ、 「今日は、泊まらせてもらう――でも明日には出て行く。それで終わりだ」 「ああ……はい」 先輩は、リビングに戻りバッグを下ろした。 「先輩、あの――」 「口利きたくない」 完全につむじを曲げられてしまった。 こうなったら、もとに戻るまで時間がかかるのは経験上知ってる。 一緒の部屋にいるのは辛い。俺は風呂に入ることにした。
シャワーを浴びる。頭からかぶって――目を瞑って考えるのはもちろん先輩のこと。 大学に入って3日目。あの人に初めて会った。 俺より10センチは低い身長。でも、いつも傍には女の子がいた。 サークルの勧誘で、俺は彼の笑顔に釣られて入った。 そこはスキーのサークルと言っていたものの、ただ集まってしゃべるだけの仲良しグループだった。 人見知りする俺を、先輩は何かとかまってくれた。 「――直ぐ好きになっちゃったんだよな」 一緒にとった写真が1枚。 それを見ながら俺がどんな妄想してたか知ったら、先輩、どうするんだろう? いつも俺があの人のことで困ってるんだ、たまには困らせてやりたい。
そうだ、困らせてやれば良い――。
俺は身体を拭くのもそこそこに、パンツ1枚でリビングに戻った。 「先輩」 「何?」 「俺と契約しませんか?」 「契約?」 先輩の目。大きな――綺麗な目だ。 あれに、写るのが俺だけならいいのに。 「そうです。ここの家賃俺が払ってるんですよ。それに生活費も俺だ。先輩はただ寝るだけじゃないですか」 「ああ、わかった。居るなら金払えってことだな?」 バカにした顔で俺を見上げてる。 「いいえ。先輩がバイトもしてなくてろくに現金もってないの知ってますから。労働で払ってもらえればいいです」 「労働?」 「そうです。目をつぶって」 先輩は、俺を信頼してる。素直に目を瞑った。 しゃがんで、触れた。あこがれてたソコに、唇で。 先輩がはっと目を見開いた。 「――高屋?」 「セックスの相手をしてください」 「な、何言って……」 「先輩はマグロでけっこう。俺が動きますから」 微動だにしない先輩の身体をそうっと抱きしめる。細い。俺の胸にすっぽりと納まる。ゆっくり支えながら床に寝かせた。 「あ、ちょっと待っててください」 俺は、先輩にそう言ってキッチンからオリーブオイルを取ってきた。コレぐらいしか、潤滑剤になるものがない。 「高、屋……マジかよ」 「ええ、本気です。先輩、自分の価値ってわかります?」 俺は先輩の上にまたがり、オイルを指ですくう。 「価値?」 「そうです。あなたに何が出来ます? ろくに日常生活のことも出来ない。大学のテストのこと聞いても知らない。もちろんお金もない。じゃあ、あなたが俺に支払えるものって、自分しかないでしょう? あなたの価値は、身体だけだ」 思いっきり突き放して言う。 だって、そうだろ? ここで泣いて好きって訴えても、未来はないんだ。なら、いっそ。嫌われて無理矢理に奪った方がいい。 「おまえ、俺のことそんな目で――」 「先輩。あなたが、いつもセックスの匂いをさせてたんですよ――女連れ込んで、俺にあてつけてたとしか思えない」 先輩が、傷ついた顔をした。泣きそうな目。それには俺しか写ってない。俺を見てる――。 「さあ、これを塗ってあげますよ――服を脱ぐぐらい自分で出来ますね」 俺の下で、ごそごそと先輩は服を脱いだ。いさぎよく全て取る。俺の前に先輩の全裸が示された。 夢にまで見た。先輩を犯すこと。 「うつ伏せになって」 「おい」と先輩はうつぶせになる。「ここを出て行かなくていいんだな?」 「もちろん。生活費もいいですし、ご飯も作って上げますよ。洗濯も掃除もごみ捨ても俺がします。嫁さんよりも割りの良い仕事でしょ」 「――そうだな」 先輩にとっては、男とすることもたいしたことじゃないんだろうか。 俺に全てをさらけ出してる――。 「腰上げてください」 先輩は膝を曲げて、腰をつきだした。その背中のなだらかなスロープに俺は手を這わせる。ぴくっと反応があるのが嬉しい。 「足をちょっと開いて」 足が開いた。 白い双丘に俺は両手をあてがって左右に開く。「ここ、動くものなんですね」 「――んっ」 俺の息がかかって閉じたつぼみがまた一段と締まる。 「力抜いてくださいよ」 指についてるオイルを、そこに塗りつけた。 「っつ――!」 「冷たいですか? すぐに熱くなりますよ……」 マッサージするように、指を擦って動かす。ゆっくりと――次第に緩急を付けていく。 いいかな。 俺は、人差し指の先に力を入れてそこに埋めた。狭い入り口を広げるように、クチュクチュと音をさせて、左右に動かす。 「あっ……」 「痛いですか?」 先輩が首を振ってる。「じゃあ、進めますよ」 俺は指を埋める。ゆっくり、ゆっくり――。先輩が緊張してるのがわかる。 「動かしていいですか?」 指が根元まで入った。 返事はない。 「動かします」 中で、グニッと曲げた。 「ンンッ」 「大丈夫なようですね。もう1本いきますよ」 俺は一度抜いて、人差し指と中指をそろえて一気に埋めた。 「あぅっ!」 先輩の背がそる。 「痛いですか? やめましょうか?」 「い、いい! やれよ!」 「――わかりました」 やせ我慢だ。 このひと、バカだな。 止めれないところで、きっとこの人は命乞いをするのだろう。そこまで来ないと、分からないんだ。 俺は、入れたり出したりを繰り返す。 オイルを足していき、ヌチャヌチャといやらしい音をたてるようにワザと動かす。 「ん、ん」 「声出してくださいよ」 「――それも、命令かよ」 「いえ、ご自由に」 先輩は口を閉ざした。 そうなると、こっちも意地になる。 「じゃあ、もういいですね」 俺は指を抜いて、パンツをおろす。出てきたペニスはすでに準備が出来ている。それにもオイルを塗って自分で扱く。 「先輩」 「なんだ」 「見てください」 先輩が身体を起こして俺を見た。目は自然とアレに向く。先輩の顔が、さあっと青くなった。 「おまえ……」 「これを入れますよ。先輩のお尻に。言っておきますが、遠慮はしません。先輩が了解したんですからね? 俺のダッチワイフになることを」 屈辱――と目が言ってる。俺はそれに冷酷に笑って、 「いまさら逃げるのはなしですよ」 先輩の肩を床に押さえ込む。 「さ、足を上げて俺の肩に乗せてください」 怖くて目が泳いでる。でも、決して声には出さない。何処まで持つだろうか、この虚勢が。 「そうです。両足をね」 先輩の足が俺の肩に乗った。力のないペニスがだらっとして……でも、オイルが塗りこめられたアソコは俺を待っているのだ――。 俺は先を入れた。 「あぅっ!」 「力抜いて……」 グニグニと、広げるように振動させて進めるが――抵抗が強い。ただ入り口で先を動かしてるだけだ。 「ぁあっ……た、かや――」 目を瞑って、いやいやと首を振っている。 「だめですよ、先輩。きちんと仕事をこなしてください――」 「い、いや……抜けよっ――!」 先輩の顔。 先輩の声。 今、全部が俺のものだ。 「ん、う――!」 俺は先を中途半端に入れた状態で射精してしまった。濃い液が中に入らないで、あふれた。トロトロと先輩の股の間を伝ってる。 「あ……高屋……」 「せんぱ、い――」 先輩のソコが弛んだ。俺はまだ萎えてないペニスを埋め込む。 「ぁ、つ――!」 じゅぷっとした感覚で入った。そのまま俺はいくところまで腰を落とす。 「たかやっ――!」 ぎゅっと締まったところで、またぎりぎりまで抜く。 「あ、あっ!」 先輩の、悲鳴が上がる。 俺は、夢中で腰を前後させた。ジュブジュブと精液とオイルで音がする。 気持ち良い。 先輩の中は、熱い。俺の出した熱。先輩の熱。 そこからどんどん溶けていく。 「先輩っ……いいですよ、ココ、すげぇ……」 もう訳が分からない。 目を瞑って、ソコの感覚だけを感じる。 中でぐちゃぐちゃと動かして、かき混ぜる。足りない。もっと先輩をめちゃくちゃにしたい。 抜いて、 「あ、んっ」 入れて――ただ、突くことだけ。 「ふ、うっ!」 上の方を擦ると、先輩が高い声を上げる。 俺はその1点を狙って腰を振動させた。 「ぁぁぁあっ、あっ! あっ!」 すごい喘ぎ声に目を開けると、先輩が自分のペニスを弄ってる。 「先輩――もしかして、感じてる?」 「――て、ない! ぁあっ!」 先輩の顔は、いままで見たこともない表情だ。じぶんでも驚いているんじゃないだろうか。ケツで感じるなんて。 「先輩、イイんでしょ?」 俺は腰を押し付けて、イイところを刺激する。 「んぁっ!」 「いいんですか?」 「ふ、うっ! 高屋っ……」 この光景――。俺の名前を呼んで、ペニスを擦って――アソコは俺を深く飲み込んでて。 それで、感じてる。 「先輩……!」 俺の感覚が狂い始める。先輩を追い詰めることしか考えられなくて――。 「んっ! んっ! ――はぁんっ!」 なまめかしい声。 「先輩……女の子みたい……入れられて悦んで、ペニス挿されて気持ちイイなんて、変態ですね」 前にかがんで、耳元で囁く。 苦しい姿勢のはずなのに、先輩は中をきつく閉めてさらに感じている。「ぁあっ……もう」 「イかせてほしい?」 こくこくと、玩具のように頷く。 「いいですよ……」 俺は中からいったん出て、先輩を裏返す。さっきのように腰を上げさせて、後ろから突いた。 「ぁあんっ――あー……」 それだけで、先輩はイってしまった。がくりと力が抜ける。だが、アナルはきゅっと締まって、俺をまだまだ放さない。 俺は腰の動きを速めて、先輩をまた刺激する。 「や……たかや、やめ……」 「ダッチワイフになるんでしょ?」 「や、だ――家、でるから……許し、て――」 今更。 もう手放さない。 先輩を手に入れたんだ。このまま俺のものに――。 「先輩……っ!」 俺は中に注ぎ込んだ。 「ふ、う――」先輩は、我慢するように身体を丸める。そして力を抜いて、床に伸びた。 「よかったですよ、先輩」 「……」 俺は突っ伏した先輩の頭をなでる。柔らかい髪。 「これから、俺が抱きたいと言ったとき、こうしてもらいますからね」 「いやだ……出て行く」 「何言ってるんです? 今日はまだ9時。これからたっぷり今までのツケを払ってもらいます」 「今まで、の……」 「そうです」 そして、それが終わる頃には――逃げる元気なんてなくなってるだろう。 明日もこうして、逃がさない。 学校にだって、いかせるものか。 「先輩。さあ、風呂に入れてあげますよ」 俺は、力の抜けた先輩を担ぐように抱いて、風呂場に移動した。
俺に逆らわない先輩なんて、初めてだ。 俺の精液を入れられたアナルを、綺麗に洗ってやる。指で掻き出すとき、俺にしがみついてくる腕。震えてる。小さな悲鳴をあげる。 これが、あの小澤先輩か。 俺をすがるように見てる。 プライドも崩してしまったのだ。俺が。 「これだけしっかり洗っても、また汚すんですけどね」 「高屋……」 「なんです?」 「俺のこと、嫌いなのか?」 「は?」 身体を拭いてやってる手を止めて、先輩と向き合う。 「嫌いなんだろ」 「そんな」 好きだから、抱いたんだ。 抱いて、自分のものにしたかった。 「そんなに、俺に出ていって欲しかったのか」 「違います、先輩」 「出て行けばいいんだろ」 先輩は、服を着る。足元がふらふらして俺が支えると、手を振り払った。 「先輩」 「もういい」 「何処に行くって言うんですか」 先輩は今、女に振られたばかりのはずだ。 「だれか友達に」 「俺以外の誰が、あなたを居候させてくれると思います?」 いつも女がらみのトラブルを持ち込む先輩を、泊めてくれるやつなんて、俺だけだ。惚れた弱みだから。 先輩は黙った。 「ココに泊まっていいんですよ?」 「セックスで、家賃払って?」 「だって、女の子と寝てるのもそうでしょ?」 がん、と頭が揺れた。先輩に殴られたのだ。「そんな風に思ってたのか!」 「違うんですか? あの女の子達の中に、ひとりでも本気になった子がいるんですか?」 俺は殴られたところに触れてみた。全然痛くない。先輩には今俺を傷つける力は残ってないのだ――。 そんな身体で逆らったことを後悔させてやる。 壁に追い詰めた先輩の首筋に顔を埋める。お互い素っ裸だから、俺が昂ぶっているのはすぐに気づいた。 「――高屋!」 「こうするしか、ないんですよ。先輩。誰かに言いますか? 男に犯されてイっちゃったって」 言葉を発しない先輩の身体をなめ回す。身体は正直だ。俺の舌に反応して、先輩のペニスは元気を取り戻す。 「さ、ベッドに移動しましょう」 先輩の手を引いて、ベッドに連れて行く。 ベッドに2人で倒れこんだとたん、先輩から抱きついてきた。 「先輩?」 「やるなら、楽しむぜ俺は」 「――分かりました」
先輩は宣言どおり、快楽を得ようとセックスに積極的になった。 俺を仰向けに寝転がし、その上に跨って腰を落としはじめる。自分が主導権を握ろうというのだ。 俺のペニスを自分でアナルにあてて、入れようとしている。 「いい眺めですね」 俺はその腰を持って、挿入を手伝う。さきほどで、俺を受け入れることに免疫が出来たのか、ソコはオイルを塗ったモノを簡単に飲み込んだ。 「あっ――あぁぁっ」 根元まで一気に入れられて、先輩は喉をそらせて感じている。 「気持ちイイですか? 俺のチンチンは」 「――黙れ、よ……んっ」 中で動かしてやる。「ん、あぁぁっ――あぁぁ……」 腰を持たれて、結合した部分を支点に回すように動かすと、先輩は唾液を垂らして悦んだ。 「はぁっ――はぁ」 嬌声を上げ、ただ目を瞑って快楽に酔っている。そんな姿を下から見上げる日が来るなんて、俺は幸せをかみ締める。腰を浮かせて、突き上げてやった。 「あぁぁ!」 その刺激で、先輩は達してしまう。ビクッと身体を跳ねさせ、前に屈んで手でやっと姿勢を保ちながらの射精。 忘我の表情を浮かべながら、先輩は余韻を味わっている。深く吐く息が俺にかかった。 「先輩――」 俺は起き上がり、入れたまま先輩を下にして動き出す。 「あっ!」 悲鳴。悦んではいない、辛そうな声だった。「高屋っ……!」 責めるように俺の名を呼ぶのも気にしない。足を左右に思いっきり開かせ、ひたすら腰を打ち付ける。 「あっ、あっ――」 埋め込むよりも、引く時の方が先輩は感じるらしいと気づく。 だから、意地悪をして奥まで突いた姿勢でじっとしてやった。 「んっ――」 動きを促すように、腰を揺らめかせる。 目を瞑って、汗ばんだ身体を俺の下で動かすその様は――淫らだ。 「先輩」 俺は額にかかった髪をかきあげてやる。 冷たくしなければ、俺も辛くなる。でも、繋がった喜びに手は優しく動いてしまう。 好きだ。 先輩が、すごく好き。 手は髪をかきあげ、頬をたどり、喉を撫でる。全てがいとおしい。 その俺の手の愛撫に、先輩が目を開けた。 「高屋――」 鋭い目で睨まれる――と、覚悟していたのに。 先輩も、優しい瞳で俺をじっと見つめた。そして、手を伸ばし俺の頬を挟む。 「先輩――?」 俺の心をみすかされてしまったようで、少し怖い。先輩の目は俺からそれずに、訴えている。何だろう。 俺に、何を伝えたいの? 「キスもなしかよ」 つぶやいた声は、寝起きの柔らかな発音だった。 「キス……?」 「ホラ」 先輩が目を瞑って口を軽く出す。 それに吸い寄せられるように俺は口を近づけた。
触れる――。 柔らかい感触が、何かのスイッチを入れたみたいだ。
俺はペニスを抜いてベッドに寝転び、先輩と抱き合う。お互いを腕で拘束しあって、ただ口を貪る。 「ん――ふっ」 先輩が、苦しそうに喘ぐ。俺も苦しい。先輩は、舌を使って俺を追い上げるのだ。中をなめ回して、舌を絡めて――。 俺は腰を擦りつける。先輩も、アレを合わせるように腰を動かしている。擦れ合うペニスが、限界まで張り詰めると俺は急に起き上がり、先輩の中に埋めた。 「あぁぁぁっ!」 先輩は、酷く痙攣して射精した。強く吐き出すと、その後もトロトロと零している。俺が突くたびに、ピュッと飛ばして後ろを締めた。 「あ、う――」 俺も先輩の中、深くに放出する。 長い快感。 それを奥に奥にと注ぎたくて、先輩の足を持ち上げて逆立ちさせてしまう。 「先輩――俺の、中に流し込んでますよ……」 「ぁあ……ん――」 射精してから力の抜けてしまった先輩は、ただ顔を振って恥ずかしがってるだけ。抵抗もせず、俺に犯されるがままになっている。 「気持ちイイですか?」 「んっ――」 返事はない。 けど、絡めた指から伝わってくる満足感。 先輩も俺を感じてくれてる――。
快楽に弱い人だ。
身体をつなげた手ごたえも、ふっと醒めてしまう。
この人は、ただセックスを楽しんだだけ。新しい“お遊び”を知っただけ。 いや――もしかしたら、前からこんな“遊び”をやっていたのかもしれない。
そんな疑問にさいなまれながら、俺は先輩と眠りに溶け込んでいった――。
明るい日の光に気がつくと、素っ裸で昨夜の余韻が身体に残っていた。そして、ありありと思い出される、先輩とのセックス。 俺は、とうとう先輩を抱いてしまった。我慢して、我慢して――最悪の方法で手に入れたのだ。 俺の横には、先輩はもちろん寝てはいない。
出て行ったのかな。
そうだろう、普通は。これからは、きっと学校で会っても無視されるんだ。俺は、なんてバカなことを――。
「おい、何頭抱えてんだ」 キッチンの方から声がした。 俺のお気に入りのTシャツを勝手に着てる先輩が、卵を持ってコッチを見ていた。 「先輩……?」 「もう昼過ぎだぜ? いい加減起きろよ。でさ、俺は目玉焼きだけど、お前は何にする? 俺、オムレツなら作れるよ」 この状況が理解できない。 顔に疑問が表れていたのか、先輩が答えてくれた。 「――さすがに悪いと思ったから、今日から俺が朝食は作ることにしたんだ」 と言って、コンロに戻っていく。 「先輩。あの……」 俺は、その後を追って、キッチンに入る。先輩は、なれない手つきでフライパンに油を引いていた。 「向こう行ってろよ」 「俺のこと、怒ってないんですか? 俺、昨日の夜、先輩を――」 「言うなってば!」と、スネを蹴られる。全然痛くない。感覚が驚きで麻痺してしまったようだ。 「怒ってることは怒ってるさ。でもな、ああいうことさせたのは俺にも原因がある」 「え?」 「俺、確かにお前を挑発してたから」 卵をフライパンに落とした。ジュー、と焼ける音がする。「わざとお前の帰る時間見計らって、女連れ込んだりしてたし」 「どうして?」 「鈍いな、お前! 理由は1つに決まってんだろ。あんだけ俺のこと視姦しといて。こっちも期待して、待ってるのに中々手は出してこないわ、出て行けって言うわで、もしかして俺の自意識過剰だったかもって考えたりしたんだぜ? でも、昨日身体を合わせて、わかった。俺はこーいうコトには自信がある」 先輩は、妙に威張って言い張った。 「あの、意味が全く……」 「だから! こーいうことだよ!」
フライパンを持っていた手が、俺の頬に触れた。 そして、キス――。唇と唇が、触れただけの。
「お前もとっくに気づいていると思ってたけど」 「全然! だって、先輩女をとっかえひっかえしてたし、そんな素振り、1度も」 だから、散々悩んで苦しんだのに! 「バカ。ンなの、正直に言えるわけないじゃん。男の俺が、男のお前に……」 先輩らしくなく、歯切れ悪く言って俯いた。 「何です? よく聞こえません」 「だからー……!」
もう1度口が触れた。 そのキスの合間からつぶやかれたのは――俺が一番聞きたかった一言。
「好きだ」
もう、どっちの台詞だかわからない。 でも、構わないのだ。
言いたいことは2人一緒だから。
The end.
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