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 (年下攻め☆/--)
咬傷 コウショウ + 菓子 カシ


*咬傷 啓之視点

男なんだから、貞操のひとつやふたつ、どうってことはない。
だけど、これはあんまりなんじゃないだろうか・・・。

目が覚めたら、裸でベッドにいた。
まぁ、ありきたりな展開だ。
それはいいとして、隣にいるのがやはり裸の男・・・。
何回確認しても、間違いなく男だ。
しかも、そいつは見覚えなどありすぎる男。
おまけに、何があったのか想像したくないような部位に鈍痛。
俺ってば、ついにヤラレたのか・・・。

犬にちょっとかまれたと思えば、どうってことないか。
だけど、ドーベルマンにかまれたら、痛いよな・・・。
しかし、こんな目にあっても、ここまで落ち着いてるってのも、相当感化されたもんだな俺も・・・。

あれこれ考えていると、ふいに伸びてきた腕に抱きこまれた。
「ぅわっ、何だよ!?」
「おはよ。早いね、ひろちゃん」
「ひろちゃんは止せ。つーか、この状況は何だよ! ふざけんなよオメー!」
「ふざけてないって。好きなんだよぅ。
 ひろちゃんだって、昨日はあんなによがってたじゃん?」
「ば・・っかヤロ、最低だオメー!」

俺を「ひろちゃん」などというふざけた呼び方で呼ぶこいつは、暁という17歳の高校生だ。
おまけに、俺の勤務先の予備校の生徒でもあり・・・。
かわいい顔して、やることは最低の奴だという、ちょっと嫌な奴だ。
だいたい、俺がこんな目にあってるのも、こいつが変なクスリを嗅がせやがったからだ。
よがってなんか・・・ちくしょー、思い出したくねぇ!!
こいつが予備校に来て半年、来る日も来る日も付きまとわれ告られ、挙句にこれだ。
なんちゅう半年だったんだ・・まったくいいことナシだ。

「なぁ、信じてよ。俺マジで好きなんだって」
「ふざけんな」
いつものように、間髪入れずに冷たく言うと、本当に哀しそうな顔になって、俺は少し後悔したが、そんなものは一瞬だった。
「昨日、あれだけ伝えたのにな。体で。まだ足りなかった?」
ニヤニヤしながら言うこいつに、後悔など瞬く間に消える。
「知らねぇよ、バァカ!」
「えぇ? 昨日のひろちゃんはスナオだったのになぁー・・・。
 マジでかわいくオネダリまでしてくれたりしたのにさー」
昨日の記憶が断片的に戻ってきて、顔が熱くなる。もちろんこいつの頭は遠慮なくはたく。
「オメーが使ったクスリのせいだろっ」
「・・そぉ?」
上目にニンマリ笑うこいつに、嫌な予感がする・・・。
「じゃぁ、何も使ってない今は?」
予感は外れず、言いながら背骨に沿って指が滑らされる。
「やめろよ・・っ」
「なんで。背中、好きダロ?」
とめる気配もなく、続けられるいたずらな指。
「・・っぁ」
「それに、痛いのも、好きだよな?」
笑いを含んだこいつの声の後、耳に歯が立てられる。
「ばか、やめろっ・・あぁ・・」
「やめないよ。ちゃんと教え込むからね? 俺が、どれだけアンタを好きか」

オマエはアホかー!! という切実な俺の叫びは、心の中だけに響き、結局その日は、ずっとベッドに縫い付けられることとなった。
くそっ、やっぱり、ドーベルマンは、痛いじゃねぇか・・。



*菓子 暁視点

「嫌だ」
「・・・ひろちゃん、俺まだ何も言ってないんだけど」
「だめだ。嫌だ。無理だ。寄るな。帰れ」
「おーい・・・」

最近のひろちゃんは、冷たい。
そして、とんでもなく警戒心が強い。
やっぱり、この間ほぼ無理やりセックスに持ち込んだのが失敗だったらしい。
だけど、あれに関しては、俺にだって言い訳させて欲しい。

だって、半年だ。
半年も、ひろちゃんを想って、超健全生活を送ってきたのだ。
俺の横で無防備に笑うんだから、暴走したって仕方ないだろ?

しかしまぁ、ずっとこのままっていうのは確かに困る。
そろそろ、機嫌を直してもらおうか。
ひろちゃんの弱点は知っている。無類の甘いもの好きなのはリサーチ済みである。
「ひろちゃんが行きたがってたケーキ屋の、予約チケットがあるんだけど」
その一言だけで、ひろちゃんは案の定飛びついてくる。
「えっ!? マジで!? ・・・あ、ぅ・・・。い、いいよ、そんなの・・・」
ぷっ、かわいすぎ。
一生懸命ガマンしてるこのさまなんか、小動物みたいだ。
「いいの? ほんとに?
 1日限定5個のケーキのチケットだよ?」
「ぅー・・・」
迷ってる迷ってる。あと一押しだな、なんてほくそえむ俺には気づきもしない。
「男ひとりで行くの嫌だって言ってたし、俺ついていってあげてもいいんだけどなぁ」
多分、これで落ちるだろう。
「・・・・・・何もしないなら、行く」
ひろちゃんは、なめてるアメを口の中でもごもごさせながら言う。
しかし、たっぷり考えた後の、このセリフ。傷ついちゃうなぁ俺・・・。
「わかったよ。何もしないからさ。行こうな。約束」
「・・・ん」
うまく乗せられたことに気づいたのか、少し口を尖らせている。
175はある体で、どっから見ても男だが、こういうちょっとしたしぐさが、すげぇかわいい。
あぁ、ダメだ。キスしたい。
「ひろちゃん」
腕をつかんで、顔を覗き込む。
「な、なんだ・・・」
「キスさして」
言ってすぐ、リアクションを待たずにキスをする。
「なっ・・・ん、んんん―――っっ!!」
抵抗もムシして、続けると、だんだんとひろちゃんもおとなしくなっていく。
快楽には弱くて忠実なタイプなんだな。
ひろちゃんをじっくりタンノウして、ひろちゃんの口の中からアメを奪ったところでキスは終わった。

「おっ、おまえ最低だっ! 何もしないってぇっ・・・」
顔を真っ赤にして、息をきらせて、ケンカ腰になったって、迫力ない。
「何もしないのは、ケーキ屋行くときダロ?」
しれっと言ってみると、赤い顔がさらに赤くなる。
「行かねぇっ!」
「約束したのに?」
「ぐぅ・・・」

ふふん、俺の勝ちだね。
ちょっとオバカで、律儀なひろちゃん。
だから、俺なんかに付け込まれちゃうんだけどさ、そこがいいんだよな。
かわいい、かわいい、俺の好きな人。
俺にとっては、どんな甘い菓子よりも、甘い。
「処女作です(笑)。字数上二話でひとつ。」
...2004/4/14(水) [No.103]
新橋 未森
No. Pass
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